大阪へ
ついに茶々丸との直接対決はじまる。
茶々丸との停戦交渉においては、茶々丸側に片桐元子という折衝役が存在した。彼女は今回の合戦を石田成子の独断であると断罪し、すべての罪は石田成子にあり、茶々丸は何もしらされていなかったと強弁した。
この策に対して武士は本多正子に相談した。本田正子はその片桐の発言を逆手にとり、石田成子の軍隊が行軍中、市民に対して残虐行為を行ったと主張し、欧米の特派員に多額のワイロを渡して茶々丸を糾弾させた。連日、インターネットでは、茶々丸を糾弾する動画があげられ、欧米の報道記者が深刻な表情で茶々丸を非難した。この情報戦に茶々丸は神経を衰亡させてしまったようだ。どうにかこの状況からのがれたいと思ってか何ども片桐に武士に謝罪して許してもらえるよう、頼んだが、片桐は頑としてそれを拒否した。謝罪すれば国が滅びると茶々丸に何ども言い聞かせた。
しかし、茶々丸はついに耐え切れなくなって、自分に仕えている侍女を密使として武士のもとによこした。
これは好機である。
武士は、この密使の侍女を大歓迎し、豪勢な食事でもてなし、欧米の最高級のファッションブランド品をおしげもなく買い与えた。そして、世界平和がいかに大事か、悪い事をしたら素直に謝罪すれば世界の尊敬を得られると、切々と訴えた。
侍女は満足して帰り、その事を茶々丸に伝えた。武士がとても暖かく侍女を迎えたとの話しを聞いた茶々丸は片桐元子に激怒し追放した。そして、茶々丸は石田成子軍が地域住民に対して残虐行為を行ったと嘘の謝罪を行い、アメリカの介在のもと、今後二度と、この石田成子残虐事件の事にはお互いふれないよう、外交調印され、10億 円が国家賠償金として武士に支払われることとなった。
しかし、こてに対して、実際に石田軍に従軍した兵士たちが、事実無根であるとして抗議の声をあげた。それに対して武士はこれは協定違反であるとして、今後、石田軍へ非難をしないという取り決めを破棄した。
結果として、茶々丸が残虐行為を認めて賠償金を支払ったという事実だけが残り、伊賀衆を通じて、世界中に茶々丸の残虐行為が喧伝される結果となった。
無実の誹謗中傷に神経を衰亡させた茶々丸は、自暴自棄になって松平武士に宣戦布告することとなった。
これに対して、松平武士は茶々丸の侵略戦争であるとして激しく茶々丸を非難し、茶々丸討伐軍を編成した。
本多正子が欧米のジャーナリストたちに多額のワイロを渡しているため、国際社会は誰も茶々丸に同情をよせることはなかった。むしろ、茶々丸をファシストであると非難し、一族皆殺しにすべきだと新聞紙面やテレビで盛んにまくしたてた。
馬車に乗って東京から大阪に向かう道すがら、松平武士は物思いにふけっていた。
「武士様」
本多正子が武士の顔を覗き込む。
「なんだ」
「最近の荒々しい発言、粗暴なお振る舞い。もしや、世人に武士様が嫌われるようにしむけて、山口ヒルダに政権をお譲りになられるおつもりか」
「別に、自分が生きていればそんな必要もないだろう。しかし、阿保神やる夫をみてみろ。明智を、木下を。結局、国がまとまって内乱が終息しようとすると、アメリカに殺されてまた内戦が長引く。それがアメリカのバランス戦略というやつだ。そのため、中東では治安が乱れ、殺し合いがいつまでも終らず、難民が世界中にあふれかえっている。ボクが政権をとるということは、すぐにボクも殺されるということだ。」
「それは、正確なご発言ではありません。正確にはアメリカではありません。アメリカのたった1%の金持ちの利益のために、戦争はいつでも終らせることができるのに、意図的に戦争は長引かされているのです。このたった1%の金持ちから金をもらって大統領になっている人間が辞任し、アメリカ国民の利益だけを考える人間が大統領になれば、アメリカはもう無益な殺戮を繰り返さないでしょう。日本も日本人もあまりにも長い間いたぶり地獄のような非難と侮辱をうけつづけました。もう、それも終るでしょう」
「終ればいいけどね」
「終ればではありません。私たち市民の手で、国民の手で、腐敗しきった金権政治化を国政から排除するのです。すべては、そのための犠牲です。茶々丸を倒さなければならないのも、彼女を傀儡として国を操っているのが、彼女の諮問機関、民間議員たちだからです。この民間議員は選挙を経ずして国政を操り、国をデフレに向かわせて、多くの日本人を殺しました。たった1%の腐りきった大金持ちとは、まさにこの人たちです。それを排除するのです」
本多正子はまっすぐと武士の顔を見た。
「そうだね、これは国民の手に政治を取り戻すための戦いだ。すでに茶々丸は謝罪してしまったために、権威を失墜し、世界から見捨てられる存在となった。彼女の政権を潰すことはたやすいことさ。すぐに終らせて、国民の手日本をとりもどそう」
武士は本多正子に微笑みかけた。
憂う武士の心。




