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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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朝比奈みるく

宮崎軍配下の朝比奈みるくが東京都庁を奪還するために進軍する。

「おい、もうちょい右、そう、ちょうど新宿都庁の都知事室がある方に砲等を向けてな」

 藤林長門が細かく指示をだして新宿中央公園の石垣の上の雑木林の中にリニア報を設置している。

「おい、てめえ、何やってんだ。敵はあっちから来るだろ、何都庁に向けてんだよ、反対だろうがよ」

 苛立ちながら前田犬が声を荒げる。

「いや、これでいい」

 長門が言い返す。

「なんだてめえは、この貧相乳娘が」

「だまれ、デカ乳女」

「なんだてめえ、やんのか」

「……」

 藤林長門は前田犬を凝視しながら小指を舐める。ツバをいっぱいつけた指を鼻に入れる。鼻くそをほじる。

「まあ落ち着け、この鼻くそは私からのおごりだ」

「いらねえよ」

 前田犬がそういうと、長門はその鼻くそをピンとはじいた。

「うわっ、ばっちいな!」

 前田犬はそれを素早く避けた。

「……」

 藤林長門は無言で前田犬を凝視する。

「なんだてめえ、気持悪いな」

「とにかく、この砲台は動かさないように」

 それだけ言って長門は去っていった。


 しばらくして遠方からほら貝がなりひびく。宮崎軍が都庁を狙って進軍してきたのだ。

 公園に侵入してきた宮崎軍の戦闘を走っているのは朝比奈みるくだった。

「わはははは、ワン公、ひさしいなあ」

「ついに決着をつけるときが来たようだなチビ助」

 朝比奈みるくの姿を見て前田犬は薄ら笑いを浮かべた。

「いくぞ!」

「来いや!」

 朝比奈みるくが前田犬に走りよる。スライディングをかけるが前田犬は上に飛ぶ。

「とぶかよ」

 朝比奈犬が上に向かって垂直に蹴りを繰り出すが、前田犬は空中で拳をブウンと振って軌道を変えてよける。

 避けざま、上にあがってきた朝比奈みるくをつかもうとするがその腕に朝比奈みるくが足をかけて腕ひしぎ十地固めをかけようとするが、その腕ごと前田犬は地面にたたきつける。公園に敷き詰めれてたレンガが砕け飛ぶ。

 朝比奈みるくは前田犬の腕が地面に到達する前に素早く飛びのいていた。

「それでなくちゃな」

 前田犬が半笑いで朝比奈みるくを見る。

「いくぜえ~いくぜえ~」

 朝比奈みるくが腕をぶんぶん振り回す。

「こいや!」

 前田犬が仁王立ちになる。

「おう!」

 言うが早いか朝比奈みるくは前田犬に飛び寄って前田犬の腹を殴りつける。前田犬は都庁前まで吹き飛ばされ、信号機の鉄骨にぶち当たる。信号機の鉄骨はひしゃげて曲がったが前田犬は軽やかに飛び起きてすぐさま朝比奈みるくに飛び寄り、両手を広げて棒立ちしている朝比奈みるくの腹に拳をぶち込む。

 朝比奈みるくは吹っ飛んで、公園の向かいに立っている白くて縦細のタイルが張られているビルにブチ当たって止まった。

「ぎゃはははは!愉快!愉快!」

 ビルに出来た穴から這い出してきた朝比奈みるくは前田犬の処まで走ってゆく。

 拳を繰り出す。犬がよける。あしばらいする。ショートステップして避ける。前田犬がローキックを出すが朝比奈みるくは小さく後ろにさがって前に出てストレートパンチを三つ打つ。前田犬は斜め後ろに下がりながらそれをよける。

 朝比奈みるくはローキックを打ってくる。それを前田犬はよけて、カウンターで回し蹴りをするが朝比奈みるくはよける。軸足に組み付こうとするが、前田犬が大きく後ろに飛びのく。

 「ワン公びびってるー、へい!へい!へい!」

 朝比奈みるくが挑発する。その間髪入れず前だいぬが前に突進する。繰り出す拳に朝比奈みるくがカウンターの拳を出す、と見せかけて、前田犬の首に組み付く。

「ぐへっ、やばっ」

 前田犬はそのまま体を後ろにのけぞらせて朝比奈みるくを地面にたたきつける。しかし、朝比奈みるくは足を前田犬の首にかけて離れない。

「ぐそっ」

 前田犬は朝比奈をガンガン拳で叩くが朝比奈は体を前田犬の後方にそらしているので、全力で殴れない。

「前田様!」

 松平の兵らが前田に駆け寄ろうとする。銃剣で朝比奈みるくを突こうとするが、かえって取り上げられて突き殺される。

「ぐがああああー!」

 叫びながら前田犬は何ども、何ども地面に自分の体を朝比奈みるくごとたたきつける。朝比奈みるくは笑っている。

 その時である。

「都庁への砲撃開始!」

 都庁側で藤林長門の声が響く。

 朝比奈みるくは目を見張って前田犬から離れ、声の方向に飛び去った。

「撃て!」

 藤林長門の号令とともに、リニア砲はシュッ!と風を切る音とともに発車される。

 ドシュッ

 鈍い音がした。

 朝比奈みるくが砲の前に回りこんで、自分の体で砲弾を受け止め、体をねじって砲の軌道をかえた。

 朝比奈みるくのあばら骨が飛び散る。

 ベチャ

 音がして朝比奈みるくは地面に落ちる。

「あさひなあああああー!」

 前田犬は朝比奈みるくに走り寄る。

「おまえ!なんで俺との勝負を放棄した!なんで、あんなクソビルを守ろうとした!」

「へへへ……」

 朝比奈みるくの口から血がながれる。

「人間にはよ、思い出の中でしか生きられない人間もいるってことよ……」

「なんだよそれ!俺との勝負よりも、あんな都庁のビルが大事なのか!答えろ!俺は納得いかん、俺とお前の神聖な勝負が、命をかけた戦いの結末が、こんなものであっていいわけがない!断じてない!」

「ふっ……未練だぜ……」

 朝比奈みるくは微笑みながら息絶えた。

『朝比奈あああああああー」

 前田犬は大声で叫んだ。

朝比奈みるくにとって東京都庁は大切な思い出の場所だった。

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