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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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わずか1%の富裕層

木下は北条討伐に向かう

 武士と和解が成立したあと、木下良太は地域に点在する小勢力の各個撃破をはじめた。北関東に勢力を有する宮崎氏に圧力をかけ、当主である宮崎謙信が国外退去することを条件として木下氏との同盟が成立した。木下は宮崎氏に格段の尊敬の念を抱いているようで、極めて丁重に宮崎謙信を扱った。このため、合戦にいたることなく謙信は養子の宮崎景勝に政権を譲り渡し、自分は引退して海外に退去した。

 南関東に勢力を有する北条氏も木下氏との対等な同盟を望んだが、木下氏は領土の明け渡しと木下氏の支配の受け入れを要求した。傭兵として生きろと勧告したのである。これに対して北条氏は反発し、木下氏の返答要請を無視した。

 このため、木下氏は北条氏に対するデマゴーグを流した。北条氏は近隣諸国に侵入し病院を襲い、赤ん坊を床にたたきつけて殺したという嘘の情報を流し、欧米のマスコミはそれを嬉々として世界に配信した。

 北条氏は慌てて否定会見を開いたが、欧米メディアはそれをすべて無視した。

 それだけではなく、北条氏は大量破壊兵器を保有しているという誤報を流すメディアすらあった。木下氏はこの報道に便乗し、大量破壊兵器排除を目的としたピースキープオペレーション(平和維持活動)と称して北条氏を侵略した。

 北条氏は何ども和解の使者を送り、木下氏に謝罪したが、謝罪すればするほど、北条氏は自らの罪を認めたのだと欧米では理解され、北条氏を討伐すべきという世論が海外でも巻き起こった。

 木下氏は日本全国に号令をかけ、日本国中から軍隊を集めて北条氏が篭城する小田原城を包囲した。

 そこで木下良太は諸勢力を招いて宴会を催した。

 武士もそこに招かれており、良太に挨拶にいく。

「おお、久しぶりだね武士君、元気にしてたかね」

「お久しぶりです、木下先輩」

 そういうと木下良太は眉をひそめる。

「あ?先輩と言ったかね、これからは木下様と呼べ、もしくは木下殿下だ」

「恐れ入ります木下殿下」

 武士は深々と頭をさげた。

「あれれ~、この人が良ちゃんと同じ世界から来た人なの~?」

 素っ頓狂な女の子の声がした。

 武士が顔をあげると、そこには頭に猫耳をつけて黒と白のメイド服を着た12,3歳くらいの女の子がいた。

「おお、茶々丸くんか、よう来たね~」

「良ちゃ~ん!」

 女の子はひどく良太になついているようで、トコトコと歩いていって良太に抱きついた。

「こちらのお方は……」

「ああ、ボクのイイナズケの茶々丸くんだ!」

 良太は胸を張っていった。

 正直、武士には理解できなかった。武士の住んでいた世界ではまだ中学生くらいに見える女の子だ。

 そこに、15歳くらいのちょっと目つきの鋭いメイド服を着た女の子が走りよる。

石田成子いしだなりこただいま参上しました」

「おお、成子君か、どうしたい」

「小田原城の枝城、滝山城に北条方の女子供が逃げ込み、立てこもっております。いかがいたしましょう」

「あれ?枝城は全部殲滅しろって命令書出してるよね?」

「はい、しかし、女子供が多数逃げ込んでおりまして……」

「命令どおりにするように」

「は、はい……」

 成子は目を伏せて素早くその場を立ち去った。

 滝山城を包囲している軍勢は、木下良太からのにべもない返答に動揺し、良太の怒りを買うことを恐れて

滝山城を無理攻めした。結果、篭城していた女たちは子供を抱いて城壁から飛び降りるもの、近くの滝つぼに身を投げるものが続出し、辺りは女子供の死体で埋め尽くされた。その光景があまりにも悲惨であったためか、攻め方の兵士がひそかにそれを携帯電話で写真を取り、ネットにアップした。

 北条の悲惨な現状を世界に訴える意図があったのだろう。

 しかし、欧米人の反応は冷淡だった。

「北条は加害者なんだから死ぬのが当然」「北条が死んでよかった」「北条のバカどもが大量に死んだことを楽しいと感じたければパールハーバーで死んだアメリカ人の数をネットでしらべてみるといい」などの冗談が掲載された掲示板に乱立した。日本人は加害者なので、何をしてもいい、徹底的に追い込むべきというのが欧米人のスタンスであろうようであった。

 武士はただ、下流まで川の流れの中に数本の赤い筋として流れてくる血の塊を橋の上から見て手を合わせることしかできなかった。

 

 滝山城の虐殺の写真をネットで見た小田原城に篭城する北条氏は意気消沈し、木下良太に前面降伏を申し入れた。

 北条の上層部は処刑され、軍閥としての北条氏は滅びた。

 北条氏はこれまで軍事力に頼り、情報戦をおろそかにしてきた。そのツケを最終的に払わされることとなった。

 北条氏が滅んだあと、小田原城の査察が行われたが大量破壊兵器は出てこなかった。北条氏による残虐行為の証拠もない。それでも、エンターテイメントが終ってしまった後の事は、世界中の人々にとってどうでもいい事であり誰も興味を抱かなかった。

 滝山城における女子供の大量虐殺はまさに人権侵害であったが、その事を問題にする人々は世界に誰もいなかった。

 

 北条を滅ぼしてしまうと、日本はほぼ木下良太の支配下におかれた。

 これで、日本にも平和が訪れると思われた。しかし、木下良太には案件があった。

 松平武士との戦い、北条との戦いで手側を上げた配下に対して褒美としての領土を与えなければならない。しかし、日本国中良太の支配化となってしまった現状においては配給すべき領土がない。

 どんどん勢力をのばしているうちは敵から土地を奪って配下に分配していた。しかし、それができなくなってしまうと、とたんに配給が止まってしまう。

 木下良太は、欧米人と同じ手法をとろうとした。

 タイやミャンマーの奥地に住んでいるカレン族など少数民族がタイやミャンマーから人権侵害を受けているとして、木下良太は激しく非難を開始したのだ。そして、平和維持の名目で、これら少数民族の居住地域に軍隊を派遣した。

 ドイツが中東でやったように、民間の労働警備員という名目の実質的には国の最精鋭特殊部隊である。そして、メコン川流域の少数民族に軍事訓練をほどこし、カレン族の国家建設を煽った。これには、国内に少数民族問題をかかえる中国が反発し、アメリカに手をまわあして木下良太を非難させた。

 木下良太は憤慨した。いつも、少数民族の人権侵害だといってアメリカが軍隊を派遣したとこは、誰もそれを非難しないからだ。それと同じことを木下良太はやろうとした。しかし、それは欧米のマスコミから侵略戦争の烙印を押されたのだ。

 木下良太は、誤解があるとして、アメリカに事態の釈明をするため、航空機でアメリカに旅たった。

 武士は、そのニュースを池袋にある管理官室の椅子にもたれて、テレビで見ていた。

 次のニュースはアメリカの大統領選挙だ。ドンキー党のラビット・エレキ候補の人気は熱狂的であり、アメリカ国民の強力な支持を得て、スーパーチューズデイで大勝してドンキー党の大統領候補に選出された。

 対抗するエレファン党ではミッキー・ポーカー候補が勝利した。

「よしよし、計画通りだ。これでどちらが大統領になってもアメリカの1%の金持ちのための政治は終る。日本の関税自主権も守られる」デフレ促進策も回避できる」

 武士はリラックスして管理間室の椅子にゆっくりと体重をかけた。

 勝利に歓喜したラビットエレキは民衆の歓喜の声に包まれ、自動車で祝勝会場に向かった。オープンカーの上から手を振るエレキ。横には婦人が乗っている。武士はそれをテレビの衛星放送で見ていた。

パーン!

乾いた音がした。

 ラビット・エレキの頭がふっとび、脳みそが車のボンネットの上に飛び散った。

 錯乱した婦人はボンネットの上に跳び乗り、その飛び散った脳みそをかき集めていた。

 その光景がテレビの衛星放送で配信されている。

「えーっ!」

 あまりの事に武士は椅子から転がり落ちそうになった。

「どうした、何が起こった!」

 武士はテレビを食い入るように見た。ニュース速報のテロップがテレビ画面上に流れた。

「遅いよ、早く情報を!」

 テレビの画面の上側に字幕がながれる。

「本日未明、日本を飛び立った首相専用ジェット機がテロリストの仕掛けた爆弾により爆破され、木下良太総理が行方不明。生存は絶望的と見られています」

そんなテロップがながれた。

「な、なにーーーーーーっ!」

 武士は思わず怒鳴った。

「だめだ……結局、わずか1%の富裕層が世界を支配しているんだ。その現状はかわなない。これからも、ずっと、ずっと、貧しい庶民は踏みにじられ続けるだけなのか……」

 武士はワナワナと体を震わせながらつぶやいた。

何もかも闇の中

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