関東騒乱
祭童軍の混乱をついて姉に無断で秋葉原に攻め込んだ武田繁子
真田信子は秋葉原の町に立っていた。
兵士の死体が散乱している。
「いったいこれはどうしたことだ……」
「姉上!」
晴れやかな笑顔で妹の真田繁子が駆け寄ってくる。
「やりました!これで松平武士に一泡ふかせてやることができました!」
「どうしたというのだこれは」
「どうもこうも、北条と手を組み、秋葉原を襲撃する計画を立て、先に私が下北沢を攻め、私の軍を討伐するために出てきた滝川益子の軍と交戦。その間に北条軍が蒲田に侵攻。大井町を占領したあと、東京、神田、御茶ノ水をへて秋葉原を陥落させました。対戦した佐久間や河尻は討ち死にしました」
「こんな事をしてただで済むと思うてか、祭童軍の関東の領地を全て奪ったのだぞ」
「方月祭童は米軍に拘束されアメリカに移送されました。すでに日本にはいません。このまま松平武士の領地を攻め取りましょう!」
「ならぬ!」
「なぜでございますか、我らが師、ユーベルトート様の仇ですぞ!」
「松平武士の同行はまだ定かならず。もし、赤坂見附大虐殺の汚名を着せられ米軍に拘束されているならよし。もし開放されているのであれば、すぐに松平軍は反撃してくるぞ。その時なんとする」
「死ぬまで戦います!」
「お前はそれでよい。しかし、中野の民はどうする。戦いに巻き込むわけにはいかぬ」
「されど、松平はユーベルトート様の仇!」
「ユーベルトートはもういない!今は生きることを考えろ!」
「ならば私は勝手にさせていただく。私と敵対するなら私を殺してください!」
「そこまで言うならお前が私を殺してゆけ!」
「どうして姉が殺せましょう!私を殺してください」
「どうして妹が殺せようか、ここまで謀略をめぐらせ、中野の支配権を得ようとしているのも、お前や家族が大事だからだ。家族を守るために私は戦っている。それなのに、なぜ、お前はその場の感情だけで動く!なぜ、みなのことをかんがえぬのだ!」
「私の命はユーベルトート様に預けました」
「そんな誓い、武田に雇われている時の便宜上のことだ!お前はいつまで夢見がちなことをいっておるのだ!」
そこに伝令が駆けつける。
「松平軍が動き始めました!祭童軍は木下良太が引き継ぎ、松平とともに東京に向かっている模様です。それだけではございませぬ。木下軍は星条旗をかざして進軍している模様!」
「何!アメリカか!まずい、これは皆殺しにされる!繁子、ここはひとまず撤退する!」
「何をおおせか!それではユーベルトート様の仇が!」
「米軍相手で勝てるつもりか!仇を討つ前に皆殺しにされるわ!皆殺しにされては仇もとれまい。お前の狙いは松平武士であろうが!」
「くっ……」
真田繁子は唇をかんだ。
「帰るぞ!
「はい……」
真田信子と繁子は秋葉原から撤退した。
松平軍が木下軍と同盟を結び、星条旗をかざして進軍しているとの報を聞いた北条軍も撤退し、蒲田から秋葉原にかけての祭童軍の直轄地であった場所は松平武士の手に落ちた。こうして武士は池袋だけではなく、秋葉原も手に入れたのだ。
ちなみに、松平、木下軍が星条旗をかざしたのは米軍の許可を得てのものではない。
木下軍の軍師、黒ちゃんが進言し、北条と反乱軍を動揺させるために米軍の旗をかかげで進軍したのであった。
松平武士の逆襲がはじまった。




