動乱
武士は祭童から呼びよせられ京都に向かう
木下良太が軍を編成して京都に集合し、出立したあと、祭童は武士を京都に呼び出した。京都の経済人との会合に武士を出席させるためだ。
武士は取り急ぎ、少数の部下とともに京都に赴いたが、京都にはヤスケ・クルーグマンとともにスーツを着たインテリ風の黒人が百人ほど整列していた。
「これは……ヤスケさんの部下の兵士たちですか?」
「いえいえ」
ヤスケは苦笑した。
「この者たちは、全員日本で教育を受けて、弁護士資格を取得しているのだ」
武士の後ろから声をかけたのは祭童だった。
「弁護士ですか?」
「うむ、アメリカで訴訟を起こす。アメリカでは白人の大資本家が東洋人に金を貸して、その金で黒人やヒスパニックのファッション業界を支配させている。黒人やヒスパニックの店舗には物を下ろさず、その東洋人のカルテルに入っている東洋人にだけ品物を卸す。生産工場も白人から金を借りている東洋人のカルテルに所属している企業からしか買わない。
黒人やヒスパニックが経営者の企業からは買わず、排除して潰す。結果、黒人やヒスパニックはいつまでも貧しく、苦しい生活を強いられている。もし、事件が発覚しても悪いのは東洋人。白人は関係ないことにされる。それは西海岸における、黒人用ウイッグの話しだが、東海岸、特にニューヨークでは、もっと状況は深刻だ。それら白人の大資本家に操られた東洋人のカルテルはネイルサロンを支配しており、東洋人が白人から金を借りてネイルサロンを経営し、黒人やヒスパニックを奴隷として使役している」
「現在でもアメリカでは奴隷制度が続いているのですか?そんな話聞いたことがありません」
「ネットで、ニューヨーク、ネイルサロン、不法行為で検索してみろ。山ほど出て来るよ。しかし、みんなアメリカの1%の大金持ちの支配者が怖くて何もいえないのだ。その奴隷労働をこの百人の弁護士弾で告発するのだ!」
「そんな事をしたら、際童様、殺されますよ。日本には地位協定があり、アメリカ人は日本人を殺しても基地に逃げ込めば、日本の法ではさばけません」
「だから、アメリカで、アメリカ国籍の黒人を使って、告発するのだ」
「それは、法的には合法ですが、アメリカの1%の富裕層を敵に回してただですむとは思えません。おやめください!
武士は祭童を必死に止めた。
「すでにサイはなげられた。もう後戻りはできないのだよ。明日には関西空港から彼ら百人の黒人弁護団がアメリカに旅立つ。アメリカには散々な目にあわされてきたが、こちらは合法的に、正面から正々堂々とアメリカを叩きのめしてやる」
武士は、武士の横に控えていた本多正子を見る。
「おい、正子、なんとか言ってさしあげろ。お前は謀略の専門家だろう」
「大変結構だと思います。軍事力で抵抗するなら皆殺しにされますが、合法的にやるぶんには何の問題もありません」
平然とした顔で正子は言った。
「本当かよ……」
武士は首をかしげた。
「まあ、そういうことだ、武士、お前は一足先に関西空港に行っておいてくれ。そちらでこの子たちの見送りパーティを行うのだ」
祭童はにこやかに黒人の若き弁護士たちに視線をやって微笑んだ。
弁護士たちも微笑みを返す。
武士の心の中から一抹の不安が消えなかった。
その日、武士は京都に宿泊しようとしたが、本多正子がどうしても許さなかった。次の日のパーティーに遅れてはいけないと言って、馬で先に出発することを強行に進めた。
武士は正子の行動を不審に思いながらも、高槻まで来て、そこで宿泊することにした。
その夜の深夜、ホテルのベットで寝ている武を正子がゆりうごかす。
「え?何なの?まだ深夜じゃないか、何考えてるんだよ、こんな時間に」
「今すぐこの場所を離れます。このまま東へ向かい、伊賀に入ります。この日のために、伊賀衆を洗脳し、松平家に対して、伊賀衆にはたっぷり贖罪意識を植え付けておきました。犬のように殿のために働くでしょう」
「何を言っているのかわからないよ」
「伊賀衆の報告によりば、戦地に向かうはずの明智光子がきびすをかえし、京都に進行中とのこと、我々もすぐに逃げなければ、戦火に巻き込まれます」
「何!どうしてそんな、それに明智の装備では祭童に勝てないでしょう」
「伊賀衆の報告によれば、アメリカのスパイが明智光子に接触し、祭童は外国勢力の手先であると吹き込んで、大量の武器を供与したようです」
「またか!」
「さあ、逃げましょう!」
「逃げるわけにいくか!ボクがこの世界に迷い込んだとき、祭童はボクを助けてくれたんだ。今度はボクが助ける番だ!」
「明智は最新鋭の武器を大量に持っています。勝てません!」
「勝てるか、勝てないかじゃないんだ!たとえ勝てないとしても、自分たちの祖国を、自分たちの仲間を守って戦わなきゃいけないんだ!勝つか負けるかじゃない!」
武士は寝巻きのままホテルを出ようとする。
「お待ちください!いかせません!」
「お前だけ逃げろ!ボクはいく!」
「ならば私も行きます!」
「お前は勝てぬ戦はしないのではないのか!」
「主を捨ててどうして逃げることができましょうか!」
「ならば、一緒に来い!」
「ええい、わかりました!本当にあなたはバカです!」
本多正子は武士に続いた。
武士たちが武装を整えてホテルの外に出ると、本多勝が馬に乗って先に武装して待っていた。
「おい、正子、おそいぞ!」
「だまれ、頭空っぽ女が!」
「何だと!戦場では我に利あり、お前はだまってついてこい!」
そう言うが早いか勝は馬で走り出した。
「あーあ、バカばっか」
正子は肩をすくめたあと馬にのった。
武士も馬に乗る。
武士たちは京都への道を急いだ。
発生する動乱の中に飛び込んでいく武士




