確執
あっけない武田軍の壊滅
新宿陥落と同時期、武田本隊は千葉に撤退していた。しかし、武田氏が父祖の地と頼りにする幕張では、県議会でオタク討伐令が出ており、武田氏は夜陰にまぎれたオタク狩りに襲われ、散々消耗することになる。この弱体化を見た
武田家家臣の小山田氏は武田勝也を襲撃して殺し、その首を方月祭童に差し出したのだった。
名門武田氏のあっけない最後であった。
秋葉原本部で小山田氏と面会した信長は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「で、あるか」
祭童は不機嫌に小山田氏の話しを聞いた。
「……」
「……」
報告を終えても小山田氏は平伏してうごかない。
「帰らないのか」
「……あの……武田勝也を討ち取った褒美はどのようなものがいただけるのでしょうか……」
「褒美か、そうか褒美がほしいか」
方月祭童は刀を取る。
「あの、いや、刀なんかより、土地とか金とかのほうがいいのですが」
方月祭童は刀を鞘から抜き、斜めに小山田氏を切り倒した。
「ぎゃっ!」
短い声をあげて小山田氏は倒れた。
「主君を裏切るような奴は方月軍にはいらぬ」
祭童は吐き捨てるように言った。
そのあと、秋葉原で武田氏討伐の祝宴が開かれ、祭童、木下良太、明智光子、ヤスケ・クルーグマンなどがまねかれた。
その中でも明智光子はうかれており、大いにはしゃいでいた。
「いやー売国奴の武田が滅びてよかった。これで、武田から得た技術は国外輸出禁止にするのでしょう、ねえ祭童様」
「うむ」
祭童は短くこたえた。
「景気も上向きだし、これで、武田の脅威も無くなったことだし、嫌な外国人をつかわなくていいわけですよね、早くヤスケ・クルーグマンのような黒人を追放したいものですよね、ねえ祭童様」
「ん?」
祭童の表情が険しくなった。
「どうなされました」
明智光子はきょとんとしている。
「今、何と言った」
「天下を統一したさいには、外国人は全て追放するのでしょ。日本は日本人のための国ですよ」
「そのような事するわけがない、武士とは魂の事だ、魂が武士であれば、肌の色の違いで差別していいわけがない。無論、経済において手柄第一のポールクルーグマンは武士として大名になってもらう」
祭童の言葉を聴いて明智光子は口をあんぐりとあける。
「何を言っておられるのですか……日本に外国人を住まわせるだけでも問題なのに、侍にし、大名にするですと!武士は本来、源平藤橘の血筋の者でなければならぬもの。普通の日本人ではないのですよ!それを黒人を侍にするなどももってのほかです!侍の名誉が傷つきます」
「何を言うか!」
祭童は明智光子の髪の毛をつかんで、何ども明智の頭を壁にぶつける。
「あやまれ!ヤスケにあやまれ!」
「誰が黒人などに謝るか!」
「この外道が!我が祭童軍に差別主義者などいらぬ!」
「おやめください!」
慌てて武士と良太が信長を止めに入る。
「私は間違っていない!」
明智光子は額から血を流しながらどなった。
「私はいいのです、もう……」
ヤスケ・クルーグマンがつぶやく。
「よくない!これはそなた一人の問題ではない!黒人全体の問題だ!」
方月祭童が怒鳴る。
ヤスケは視線を下に向けた。
「ペッ」
血の混じったツバを床に吐き捨て、明智光子はその場を退席した。
そこに伝令が走りこんでくる。
「大変です!毛麗軍が、本来日本の領土である中国地方を中国の植民地にするための外交団を結成し、飛行機で中国に旅立ったそうです」
「なんだと!日本の領土を外国の植民地にしてなるものか!我らはこれより中国地方の毛麗軍を打つ!」
祭童は拳をふりあげた。
「この国土防衛線の先鋒を務めたい者はおるか!」
「おそれながら!」
木下良太が進み出る。
「うむ!よう言った。そなたに毛麗討伐軍を預ける。思う存分暴れてくるがよいわ」
「はっ」
木下良太は一礼する。
祭童は武士を見る。
「武士、武田は討たれたとはいえ、まだその残党が関東にはうごめいている。出来れば説得して仲間にせよ、無理であれば討伐してもいいが、できるだけ血は流したくない」
「はっ、かしこまりました。では今すぐ!」
武士はその場を離れた。その後ろから山口ヒルダが追いかける。その武士の前に一人の女が立ちふさがる。
金髪のロング、透き通った水色の目、通った鼻筋にウエスタンブーツ、かーボーイハットをかぶりシルバーのリボルバーの二丁拳銃を腰にさげた美少女だった。
「お待ちください、武士様」
「ん?君は?」
「この方はかつて都庁軍の精鋭部隊を率いていたLEE・ナオトラ様でありますのんた」
山口ヒルダが武士の耳元でささやいた。
「あ、ああそうか、うちの軍に編入されたんだね。それで何だい?」
「武田の残党ども、蒲田の同人誌即売会などで何度か会っており、面識があります。私に残党説得の役目、お任せいただけないでしょうか」
「そうか、やってくれるか、なにとぞお願いする」
武士は頭を深々と下げた。
「心得ました!」
そういうと、いいLEEは立ち去った。
少しずつ食い違っていく思い




