神宮外苑の戦い
山が動いた!
宮崎謙信から送られてきた使者が持っていた書状を読んで武田勝也はワナワナと震えた。そこには宮崎謙信の直筆で勝也への換言が書かれていた。
「武田だけでは方月軍に勝てないから、宮崎謙信の力を貸してやろう」
宮崎謙信独特のぶっきらぼうな書き方であった。しかし、その気性を知る者からすれば宮崎が自ら人に手を貸そうと言い出すなど異例中の異例のことであった。
それほど、武田の小僧に目をかけているということでもあった。しかし、武田勝也はそれを侮辱と受け取った。
「このクソがあっ!」
いいざま、使者を切り捨てて書状を破り捨てた。武田晴子も生前、宮崎謙信に頭をさげて、頼るよう言っていた。だれもかれも、自分の事を子ども扱いして、一人前に見ないことが武田勝也にとっては耐えられなかった。
「俺が一人で何でもできることを見せてやる!」
吐き出すように勝也は言った。そういわねばならぬところが精神的に幼いことの露呈であった。
そこに渋谷区からの伝令が走りこんでくる。
「渋谷区の放送局を保有している奥平氏が祭童軍に寝返り、放送局を占拠しました!」
「なんだと!あのゴミ拾いのユーベルトートとかいう腰抜けは何をしている!」
「はっ!すぐさま放送局を包囲しておりますゆえ、勝也様がお出ましになるほどのことではないと」
「ゴミ拾い風情が、俺を子供扱いしおって!全軍出撃!我ら武田の精鋭の力を思い知らせてやるわ!」
中野区を出立した武田軍はすぐさま放送局前まで到着し、放送局を包囲した。
「これは勝也様、わざわざお出ましいただきませずとも、我らで攻略いたしますものを」
武田勝也がやってくると、ユーベルトートがあわてて出迎えた。
「だまれ!貴様のような腰抜けに任せておけるか!」
武田勝也はユーベルトートを足蹴にした。ユーベルトートは蹴り飛ばされたあと、抵抗もせずにその場に平伏した。
「勝也様、敵の密偵を捕らえてまいりました!」
「でかじたぞ!すぐ検分する」
捕らえたられたのは、松平武士配下の鳥居強子であった。強子は随分怯えている様子で、命乞いをした。
「どうか命ばかりはお助けください、命を助けてくださるなら何でもいたします」
「ほう、そうか、ならば、祭童軍の援軍は来ないと奥平軍に伝えよ。奥平軍はすぐに降伏するよう、伝えるのだ」
「はい、わかりました。ですから命ばかりはおたすけを」
鳥居強子は後ろ手に縄で縛られ、放送局の前までつれてこられた。武田の兵が拡声器をもって、鳥居の前に近づける。
鳥居は、一度、大きく深呼吸をして大声で叫んだ。
「ただいま祭童軍は青山まで進軍してきております!奥平軍の皆さん、決してあきらめないでください、援軍は来ます!」
「おのれい!」
激昂した武田勝也は鳥居強子を切り伏せ、そのあと、何ども刀で刺した。
「今すぐ腰抜け祭童軍を討つ!全軍進撃せよ!」
「お待ちください、わざわざ自軍の場所を知らせるとはワナに違いありません。行ってはなりません。派遣するならこのユーベルトートの軍を派遣してください」
「黙れ、腰抜け!お前の軍は来なくてもいい。一生ごみ拾いでもしてろ!」
武田勝也はユーベルトートに罵声をあびせた。
「お待ちください、ユーベルトート殿の進言に理があります」
武田勝也の前に真田信子が立ちはだかる。勝也は信子の髪の毛をわしづかみにする。
「このゴミが、いつも俺の邪魔ばかりしやがって、お前も来るな!そこでプルプル震えて我らの雄姿を見物しておれ!」
勝也は信子と突き飛ばした。
「よし、進軍!」
武田軍は青山に向けて進軍した。
武田軍が外苑西通りに差し掛かった時である。
「むっ!」
武田勝也は殺気を感じて手からオタソードを出し、振った。
ジュッ
白煙があがり鉛が溶ける。それから少し遅れて、ターン!という銃声が聞こえてきた。
祭童軍の狙撃兵が勝也を狙ったのだ。
「おのれ、姑息な!どこからだ!」
「神宮の球状のスタンドの上からです!」
部下が報告する。
「おのれ、どこまでも腰抜けで卑怯なヤツラめ、我らオタソードの軍団であいつらを壊滅させてやる!目標は神宮の球場跡地!全軍突撃せよ!」
「うおーっ!」
武田軍が一斉に突撃する。
タン!タン!タン!
祭童軍は単発的に銃を撃ってくる。
「ははははは!オタソードの前には銃など通用せん!祭童軍敗れたり!皆殺しにしてくれるわ!!!!」
武田勝也は高笑いしながら突進する。
パリバリバリッ
球場が間近に迫ったとき、武田軍の将兵は何かを踏みつける。それと同時に武田軍が手にしていたオタソードが全部消えうせた。そこの敷き詰められていたのは対オタク偏光グラスであった。台湾企業が大量生産した廉価版を敷き詰めていたのだ。
「ひるむな!どうせ相手は通常兵器しかもっておらぬわ!通常兵器では我らの超高度セラミック鎧は貫けぬ!」
と、その時、祭童軍はシルバーに光る棒のようなものを沢山、球場のスタンド上にならべはじめた。
「ん?」
ヒュン!
風を切る音がした。
「ぐはっ!」
武田の将が倒れた。
「何だ!」
「ぐはっ!」
「ぐわっ!」
次々に武田の将兵が倒れていく。
「あぶない!」
武田の将兵が武田勝也の周囲に集まる。
「ぐあっ」
「あぐっ」
次々に将兵が倒れていく。歴戦の勇者が。
「何だ!何があったのだ!」
「電磁砲です!ヤツラ、卑怯にも浅井の開発したレールガンを使っているのです!」
「おのれ!卑怯者め!」
「あぶない!お逃げください!ぐはっ!」
勝也を守って何人の武田の将兵が倒れていく。
「おのれい!撤退だ!」
武田軍は撤退を開始したが、勝也を守るために勝也の周りに密集し、格好の的となって次々に殺されていった。
武田軍は、この神宮外苑の戦いでその精鋭部隊の大半を失うこととなった。
祭童の次の手は?




