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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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大阪攻略戦

敵の精鋭部隊との対戦

 伊賀に壊滅的打撃を与えると近隣諸国から織田とよしみを通じるため、多くの諸侯の使者が織田信長の下を訪れた。

 その数があまりに多いため、松平武士もその使者との対応の任にあたった。正式な県の使者であるか、祭童に会わせる価値があるか見極めるためだ。

 しかし、しょっぱなから変な奴に当たった。

「クロちゃんです!」

 子供だった。オレンジ色の服を着てベレー帽をかぶっている。明らかにおかしい。それでも、対処せずに門前払いすることはできない。ものすごい強い勢力の使者である可能性もある。

「あの正式なお名前を教えてくださいませんでしょうか」

「黒ちゃんだよ!」

 そのちっこい女の子はそういいながらピョンピョンはねた。

「あのね、お譲ちゃん、祭童様は忙しいから誰でも会わせるって訳にはいかないんだよ」

「そうなの!そうなの?!」

 女の子はピョンピョン跳ねる。

「じゃあ、急ぎの用じゃなかったら帰ってくれるかなあ」

「分かった!帰るね!」

 女の子は帰りかける。

「待ちなさい」

 どすの利いた女の子の声が聞こえた。眉間に深いシワをよせた、これまたちっこい女の子が片手で幼児の手をひっぱりながらやってきた。

「あの、あなたは?」

「ケン!ケーン!」

 幼児が叫んだ。

「私は櫛橋よ、そしてこっちが長ちゃん」

「はあ、それで、何のご用件でしょうか」

「兵庫県の交渉官を粗末にあつかっていいのかしら?」

 女の子の言葉に武士は慌てて名望を見る。

「あ、あの荒木氏からの使者ですか?」

「そんなわけないじゃない、別所に決まっているでしょ」

 武士はもう一度名簿を見る。

「あー」

 兵庫県は面倒な事になっていた。

 東は荒木、西は別所、北は山名などの勢力が占有しており、分裂状態にあった。

「祭童にあわせなさい」

 女の子は凄みのある声で言った。

 別所の使者であれば祭童に会わせるしかない。武士は祭童とアポイントをとってこの三人の子供を祭童に会わせることにした。

 祭童はこの三人の子供に偏見を持つことなく、にこやかに迎え入れた。

「よう来てくれたの、して私に何の用だ」

「西兵庫の別所氏は祭童家と同盟を結びたく思っております」

「ほう、それは結構。して、別所殿はどのような政治をしておられるのか」

「お前バカなの?そんなの公共投資で道路つくるとともに技術開発で生産性向上して国力を増進してるにきまってるんじゃん。きゃはは」

 小ばかにしたように黒ちゃんが言ったので周囲の空気が凍りつく。

「な、何を失礼な事を言ってるんだ!」

 武士は慌ててたしなめつつ、恐る恐る祭童の顔を見る。祭童は笑っていた。

「ははは、その通り、良い政治をしているな。バカは公共投資反対とか税金の無駄遣いするなとか言うものだが、民間が金を使わぬから不景気になっているのであって、その景気を浮揚するためには当然、国が税金を使って消費行動をとらねばならない」

「そうだよ、むかし、『デフレとは貨幣現象です』なんて底抜けにバカな事いった無能政治家がいたけど、いくら金の札束を刷って金の量を増やしても、誰も使わなかったらデフレは解消しないよ。でも、誰も使わないからデフレであって、そんな時だから政府が無理やり箱物を建設して景気を刺激しなきゃいけないんだよ。それを税金の無駄遣いとかいって、悦に入ってるバカが多すぎるから、こんなに国が無茶苦茶になったんだよ!」

「その通りだ!そなたほとの者が西兵庫にはいるのか、喜んで同盟に応じよう!」

「ラッキー!同盟のしるしに、ここの二人を人質に差し出すよ!」

 くろちゃんはピョンピョンはねながら言った。

「ちょ、あんた!何いってんのよ!」

 櫛橋はクロちゃんの胸倉をつかむ。

「ぎゃー!」

 叫びながらクロちゃんは足をバタバタさせる。

 祭童が無言のまま周囲の兵に目配せする。

「さ、まいりましょう」

 祭童軍の兵士たちが櫛橋と長ちゃんの手をとって引っ張っていった。

「クロ!あんた、おぼえてなさいよー!」

 櫛橋が大声で怒鳴る。

「ブイ!」

 クロちゃんはうれしそうに指でブイサインを作った。


祭童軍は進軍途中で迎合する同盟軍を編入しながらどんどん大きくなっていった。その数は10万にものぼり、大阪の鬼神の会の軍勢の数を凌駕するほどの大軍となっていた。しかも、祭童軍は今回の戦いで最新鋭兵器をもっていていた。都庁軍から接収したヘリコプター部隊だ。バルカン砲を装備しており、地上軍に対してはほぼ無敵だ。

 今回の戦いはまず、負けることのない戦いであった。

 先鋒は明智光子の軍勢が勤めた。威圧するように空からバタバタとヘリコプター部隊が追随する。

 祭童軍のあまりの多さに、大阪の軍隊はほとんど抵抗もせずに逃げ去り、明智光子の軍は大川沿いに大阪の中心部まで入り込んだ。天満橋まで来ると、間近に大阪鬼神の会が篭る労働センター後地の廃墟が迫る。

 この巨大ビルを改造し、要塞化していた。

 明智光子はこのビルを手に入れようと大阪鬼神の会側に降伏を申し入れたが対応に出てきた女がチャラかった。

「はあーい、ごめんねー、今取り込み中だから降伏は受け入れられないの。正々堂々と戦って死んでね」

 そう言って茶髪に褐色の肌の少女はウインクをした。チェックの巳にスカートに学校の制服らしきブレザー。

 ネクタイはだらっとたるんで結んでおり、ブラウスがはだけて張りのよい胸の上部が露出している。

「何をふざけたことを、降伏するのはお前らだ!降伏しないと皆殺しだぞ!」

 明智光子は拡声器をつかって、大声で叫んだ。

「あ、そうなんだー、皆殺しにされたいんだー、Mなんだね君、名前は何ってえの?」

「今から死にゆく奴に教える名はない!この負け犬どもが!」

「えー?犬って?私犬じゃないよー三本脚のからす、雑賀さいかのマゴッチってしらないのー?だっさーい、じゃ、死ね!」

 マゴッチが言うが早いか労働センターの残骸の窓が次々に割れる。

「ん?なんだ?」

バシュッ!

 何かが噴射される音とともに窓から何本ものミサイルが発車される。

「地対空ミサイル!バカな!アメリカめ!」

 明智光子が叫ぶ。

ドドーン!

 大きな地響きとともに次々とヘリコプターが炎上して墜落していく。

「虎の子のヘリコプターがあああああー!」

ドドドドドドド!

 雑賀軍は機関銃を連射してくる。

「バカな!」

 明智光子が叫ぶ。それは当然で、物資不足の日本では祭童軍でさえ、足軽は弓矢や槍、刀で武装して戦っている。祭童軍でさえ、全軍の保有するライフル弾は数百発。機関銃など撃ったら保有する全弾を一瞬にして消費してしまう。

 光子の周囲の祭童軍の兵士が次々と倒れてゆく。

「おのれ、もはやこれまで!」

 明智光子は割腹しようとする。そこに祭童が馬にのって駆け寄ってきた。

「乗れ!」

「ああ、祭童様!」

 明智光子は祭童の馬の後ろに乗る。際童はきびすを返して素早く撤退する。

バシュッ!

 狙撃兵が撃った弾丸が祭童の足をかすめる。

「うぐっ!」

 祭童は足から血を流しながら撤退していった。

 雑賀軍の大攻勢によって、祭童軍の先発隊は壊滅的被害を受けた。

 常に弱い側に武器援助し、弱い側が強くなってくると、今度は反対勢力に武器を供与し、国を荒廃させ、難民を激増させる。そして、その難民をタダ同然の安い賃金で雇い、大資本家だけが儲かる仕組みである。

 そのためには、常に、弱い側に武器を供与しなけばならない。そんな事は祭童側としても想定できたはずだが、東京の都庁軍との戦いでアメリカから支援を受けていた際童は完全にアメリカを信用しきっていたのだ。


姿を表す敵の最精鋭部隊雜賀衆

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