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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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決戦前夜

ついに、都庁軍と祭童軍の最終決戦がはじまる!

藤林は武士から入手した情報を元に秋葉原に武黒衆を送り込み、男性向け同人誌が女性蔑視であるという運動を

起こさせようとしたが、彼女たちは意外に男性向け同人誌に対して寛容であり、撹乱は失敗した。

 いくら藤林が意図的に芝居でいいから秋葉原で騒ぎを起こせと指令しても動かなかった。

 藤林は次に、秋葉原をあきらめ、一般の駅に張り出してあるポスターのうち、女性の絵があるポスターをピックアップし、公共の場所にあるポスターに女性の絵がかいたポスターを張り出しているのは女性蔑視であり、人権侵害であるという騒ぎを起こさせた。そして欧米のジャーナリストに金を渡してこれを盛んにバッシングさせた。

 これは成功し、祭童軍のイメージを低下させることができたようだ。

 祭童軍は言論の自由を保障しており、都庁軍に比べればアンチプロパガンダは容易であった。祭童たちの収益の柱である秋葉原を攻撃したり誹謗中傷する言論であっても容認していたからだ。これら藤林の策謀が軌道に乗り始めたとき、突然、都知事からそれらの密偵部隊への撤収命令が出た。

 藤林はそれに抗議したが都知事は受け入れず、藤林を都知事室への出入り禁止にした。元々都知事は藤林を嫌っており、ユーベルトートの強い推薦で用いていただけに、ユーベルトートが都庁で権限を失えば藤林の地位も失速することは必然であった。代わりに都庁に入ったのは服部平蔵や駄目新蔵、小鶴井らだった。駄目新蔵は外務担当に任命され、積極的に外交をこなした。そして、アメリカに対して祭童軍を殲滅したあとに上野、神田、秋葉原をアメリカに割譲することを条件として最新鋭の戦車を10両売ってもらうことに成功した。また、中国に浅草、下屋を韓国に千住、吉原を割譲して領土をさしだすかわりに、都庁軍への支持を表明するという合意を取り付けた。これまで中国、韓国は一貫して日本を非難する立場であったが、駄目外相の活躍により、一転して都庁軍の支持を表明した。これは外交上の輝ける大成功であるとして、都庁軍内部の保守派はもろ手をあげて駄目外相を賛美し、保守系メディアもこぞって、駄目外相の成果を褒め称えた。

 この駄目外相の輝かしい外交的勝利に気分を良くした阿保神やる夫都知事はこの機に乗じて一気に祭童軍を攻め潰す決意をした。そして、今まで公共事業を削減して溜め込んだ金でアメリカの傭兵コンサルタント会社と提携し、大量の傭兵を雇い入れた。この傭兵軍団の数と最新鋭の数はユーベルトートや朝比奈みるくの私兵の数を圧倒定期に凌駕する数であり、都知事は完全に、これら巨大軍隊を用意した駄目新蔵や服部平蔵を心より信頼するようになった。

 これで、都知事が祭童軍を殲滅すれば、東京都の南半分は外国の領土となることが決定的となった。

 ユーベルトート、朝比奈みるく、松平武士、藤林長門らにはそれらに反対する権利もないし、都庁の政治に口出しする権限もなかった。

 祭童軍との決戦を控え、松平武士、ユーベルトート、朝比奈みるくはら都庁に呼び出された。

 朝比奈はまだ自分の置かれた立場を理解していないようで、目を輝かせてご機嫌で都庁に来た。

「ねえねえ、やる夫っち、久しぶりにババヌキしようよー、ユーベルトートったらポーカーフェイスだから超表情がよめなくて、スリルがあんだよー」

「ちょっと朝比奈さん、これから軍事会議なんですからそんなヒマないでしょ」

 慌てて武士がさえぎる。

「何言ってんだよー、やる夫だってトランプ好きなんだよ!昔はユーベルトートと三人で一緒にやったもん!やる夫っちすごくたのしそうだったもん!」

 朝比奈はまた昔の事を言っている。しかし、もうそんな時代ではないのだ。朝比奈の目の前にいるのは東京都知事阿保神やる夫である。昔の朝比奈が知っているやる夫ではない。実際、朝比奈の発言を聞きながら都知事は不機嫌そうに顔を背けていた。

 武士が朝比奈をなだめると都知事はやっと口を開いた。

「今回、君たちに集まってもらったのはほかでもない。君たちには我が軍の前衛部隊として、一番抵抗が激しいであろう東京駅と神田駅を攻撃、占領してもらう。東京駅はシンボル的存在で、前の駄目新蔵戦でも一番の激戦地となった。神田は秋葉原に入る最終防衛線であり、強力な部隊が配置されているだろう。君たちが敵の精鋭をひきつけている間に我々都庁軍本隊は本郷通りから直接秋葉原を急襲する」

「はあ?何言ってんの?今までずっとみるくちゃんとユーベルトートが本隊だったじゃん。やる夫っち狙って狙撃してきた奴は全部、ユーベルトートがやっつけたじゃん。私とユーベルトートがいないとあぶないよ!いままでずっと三人一緒だったじゃん、なんではなれんの?何ではなれんの?」

 朝比奈は何の疑問のなく聞いてくる。

「もう、おまえらはいらないんだよ、俺は戦車に乗るからよ、狙撃しても戦車が弾はねかえすからいらないの、おまえら」

「でも、戦車はバズーカとかでうごかなくなるでしょ!」

「バズーカで足回りやられることはあっても、最新式だから一発で中にいる人間が殺されることはねえんだよ。他の戦車にのりかえればいいっぺ。それに、バズーカやパンツァーファーストなんて、ファーストストライクだけで、自分の居場所を把握されたらい他の戦車や戦闘ヘリに場所把握されて瞬殺されるから、第二撃はねえっぺよ」

「でも、一緒にいたいよ!」

「うるせえ!言うとこをきけ」

「えー」

「命令だ」

 醒めた声で都知事は言った。

「そのかわり、勝ったら一緒にトランプ3ゲームやってよ!ボウズめくりでもいいよ!」

「戦いに勝ったら、各国に日本の領土を譲渡する式典に参加するから、そんな時間はない」

「なんだよそれ、みるくちゃんと、その外国の知らない人とどっちが大事なんだよ!」

「お前らなんてもういらないんだよ」

「うぐっ」

 朝比奈は唇をかんだ。

「分かったら、さっさと配置につけ!」

 朝比奈は無言で早足で都庁室を出た。ユーベルトートも無言で部屋を出た。武士も無言で一礼して部屋を出たが、警備の小柄の兵隊が武士に近寄ってきた。

「ちょっと待ってください」

「何ですか?」

「ランダムチェっキングです、身体検査をさせてもらいます」

「どうぞ」

 その小柄で目深に帽子をかぶった女性の警備兵は武士に近づく。そして耳元で小声で囁いた。

「スキを見て逃げろ」

 武士は目を見張った。さきほどと声が違う。これは藤林長門の声だった。

「はい、チェック終わりました」

 そういって警備兵は足早に去っていった。

 武士には意味が分からなかった。

 朝比奈軍二千五百人、ユーベルトート軍三百人。

 都庁軍四万人である。それに対して、消耗しきった祭童軍、わずかに二千。

 長年の消耗戦で、朝比奈軍二千五百人とユーベルトート軍三百人では均衡がとれており、お互い手出しはできなかった。しかし、今は傭兵部隊が四万人もいる。都庁軍の圧勝は間違いなかった。武黒衆は五百人はいたが、統率がとれず、戦争中に内紛を起こしたりするので、危険で使えなかった。しかし、武士が池袋管理官となって、やっと統率する軍隊として動くようになったばかりだった。

 もし、都庁軍が勝っているのに、武士の軍が戦線を離脱したら四万の傭兵部隊が武士の五百に襲い掛かることになる。そんな事は絶対に無理だ。

 武士は素直に命令どおり、東京駅を朝比奈とともに攻めることにした。

 

松平武士は東京駅攻略戦に向かう。

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