表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
3/84

クレーム処理担当の朝は早い

レジスタンスの大躍進によって東京を管轄する都庁軍は大混乱に陥る。

その混乱を収拾するために仮面の暗黒卿、ユーベルトートが動き出すのだった。

クレーム処理担当の朝は早い。

「はい、お電話かわりました、担当のユーベルトートと申します。ご用件は御徒町地区の残存兵力の件で

間違いございませんでしょうか。はい、そうなんです、すでに防衛ラインは足立区まで撤退しております。

はい、救援部隊ですか?真に申し訳ございません、特約事項の契約書1375条にありますように、

戦線後退命令を無視して現場にとどまった場合は救援義務対象外となっております。はい、そのような

命令は届いていないと、こちらからは出しましたよ、はい、はい、そうれですか、それは申し訳ございません。

そちらの無線が壊れていたんでしょうね。この場合、特約事項、第1293条の第三項にですね……」

「ぐえっ」

と短い叫び声が受話器からもれた。ツー、ツー、ツー。電話は不通になる。

「お電話ありがとうございました」

ユーベルトートは受話器越しに深々と頭をさげた。

こげ茶色の鋼鉄のマスクに鎧にマント姿。クレーム処理係は恨みを買うことも多く、その匿名性ゆえに

マスクをかぶり、声も変声機によって変えられていた。

また電話が鳴る。

「はい、お電話変わりました、ユーベルトートでございます。はい、はい、レジスタンスは秋葉原、神田を制圧した

勢いに乗り、東京に進軍し、霞ヶ関を攻撃する動きがあると、はい、お台場から進軍した別働隊が新橋を制圧したんですね。敵の精鋭前田部隊、山口部隊ですか。構成は前田旅団が前田連隊と佐脇連隊、山口師団が山口大高連隊、山口鳴海連隊、山口ヒルダ連隊ですね、はい、承りました、はい、お怒りごもっともです、はいはい、仰るとおりですね、

真にもうしわけございません、仰るとおりです、さっそく現地の急行し、クレーム対応をさせていただきたいと思いますはい、了解しました。はい、お電話ありがとうございました」

またユーベルトートは深々と頭をさげた。そして携帯電話を取り出す。

「それでは現地対応にむかいます、突撃工兵の浅井さん、総務部に行って山吹色のお菓子2ケース調達してきてください。

お手数おかけしてすみませんね、精鋭部隊ですか、いえ、けっこうです、親衛隊は神楽坂に向かわせてください。そちらに敵部隊は居ないんですね、はい、分かりますよ、はい、それでも全軍を神楽坂に向かわせてください。はい、責任ですね、

今すぐ私の押印した命令書をファックスで送信しますので、その命令書が到」着した時点で進軍を開始してください。

失敗した場合は全ての責任は私がかぶります。減俸ですか?貴方が減法処分を受けた場合は、私が自腹で補填します。

わかりましたね、はい、ありがとうございます。信頼していますよ、ご心労お察しします。それではよろしくお願いします」

ユーベルトートは東京都庁を出ると二足歩行の装甲車に乗り、配下の突撃工兵部隊とともに新橋に向かった。

密偵の報告によると、前田部隊長は平成後期出身、山口部隊隊長のヒルダも現地人、配下の山口大高、山口鳴海は、

平成後期時代、親戚の子供であるヒルダをつれてフェリーに乗って海外に逃亡しようとしたが、フェリーが内々にいる

時に機雷にふれて轟沈し、大高と鳴海はヒルダをつれて救命ボートに乗って命を存えたという情報が入手されている。

ヒルダはその恩を忘れず大高、鳴海親子を信頼しているが、一番若輩のヒルダに師団長を任せた際童に対して

山口親子は不満をもっているとのことであった。

ユーベルトートは隠密裏に山口親子と接触することにした。

山口親子と面会すると、ユーベルトートは声を震わせて号泣した。

「私の家族は全員、方月祭童のレジスタンスに虐殺されました。私も赤ん坊の時、祭童に顔にヤキゴテを

当てられ、マスクをかけて生活する日々、あの虐待を受けてから20年間、生きた心地がしませんでした。

あの方月祭童という奴は私たち新宿市民を50万人も虐殺し、私たちを50年間も弾圧してきました。私たちは

ただ、平和に暮らしたいだけなんです。みなさんが武器を捨て、仲良くしてくださるなら、私たちは過去の

恨みを捨て、平和に手に手を取り合って暮らすことができるんです。私たちは戦いたくないんです。平和が

好きなんです」

ユーベルトートの言葉を聴いた山口親子は目を真っ赤に泣き腫らし、何ども頷くと、強くユーベルトートの手を握った。

「わかりました。この地獄のような世界をみんなで力を合わせて平和な社会に導き増そう。争いなんてしなくていいんだ。人類は話し合えば分かるってみんなに証明してみせます」

「ありがとうございます。ありがとうございます、これで、平和な社会が訪れます」

ユーベルトートは何ども頭をさげ、涙声に息をつまらせた。

山口親子との面会を済ませたユーベルトートは新橋を部下にまかせて神楽坂に急行する。

「みなさん、私のわがままにつきあわせてしまって申し訳ございません」

歩行装甲車に乗っている間もユーベルトートは何ども頭をさげた。

同行している兵士たちは和んで笑顔を見せた。

その間、ユーベルトートな頭をさげながらも、せわしなく携帯電話の操作を続けている。

その作業が終ると電話をかける。

「はい、大アジア連邦海上火災の生命保険担当の方ですね。はい、今回の金額で確実にご家族に

死亡保険が入るのですね、はい、お子様の学資保険も私が全額即金で支払いました。はい、ご確認いただけましたね。

はい、それでは、よろしくお願いします」」

そこに無線連絡がはいる。

「隊長、千代田区方面軍から通信があり、敵精鋭部隊の奇襲攻撃を受け撤退しながら現在九段坂で交戦中、

至急援軍求むとの事です」

分かりました。私が直接お話します。

ユーベルトートは無線の受話器をとる。

「はい、お電話変わりました、責任者のユーベルトートでございます。はい、はい、はい、そうですか、

それはごもっともでございます。はい、はい、左様ですか、援軍は送りません。はい、死ねと仰るかですって?

はい、その場に踏みとどまって全滅するまで戦ってください。はい、はい、ご心中お察しします。

あなたのご家族に振り込まれるように死亡生命保険をかけておきました。貴方が亡くなってもご家族の生活は

保障されます。は?はい?何ですか?仰ってる意味がよく分からないのですが?はい……。部下全員の家族の保障ですか?それは私個人では対処いたしかねます。はい、それが保障されないと、レジスタンスに降伏すると。はい、

分かりました」

ユーベルトートは一端無線を切って都庁に電話をする。

「はい、都庁総務部ですか、はい、今回特別措置として、私の命令で千代田区方面軍に玉砕命令を出しました。

上官命令の発布ですので、死亡者全員に対して労災認定をしてください。ユーベルトートからの要請です。

そちらの一存ではできないと、はい、そうですか、そこをなんとか、関係ないと仰る。そうですか、

お前、命令に従わなければオタの暗黒面をつかってお前とお前の家族を皆殺しにするぞ!はい、

いう事をきくと、口だけではなく、押捺した書類をメール送信してください。早くしろ!はい、受け取りました。

このたびは、無理なお願いを聞いてくださり、心より感謝いたします」

ユーベルトートは携帯電話に向かって深々と頭をさげた。

そして改めて千代田区方面軍に無線連絡を入れる。

「ただいま、そちらに労災認定の書類を転送しました。ご覧いただけましたか?はい、九段坂に踏みとどまって

徹底抗戦すると、はい、かしこまりました。職務お疲れ様です」

携帯電話を切るとユーベルトートは九段坂の方向に向かって最敬礼をした。

ユーベルトートは部隊を半分に分けて半数は神楽坂へ、残りの半数は九段坂への援軍として差し向けた。

九段坂への援軍は恐らく間に合わない、援軍に向かおうとして敵の大軍に遭遇し、慌てて撤退するふりをして

神楽坂に誘導するよう命令を出した。命令を出したあと、別働隊部隊長が時間を気にする中、ユーベルトートは別働隊全員の隊員と握手をした。

神楽坂に到着したユーベルトートは新宿方面軍の精鋭部隊を神楽坂にある銀行の廃墟の裏にある駐車場郡の中に配置した。この地域はビルの密集地帯で、機甲部隊が隠れる場所はないが、裏通りに回れば、地元の人間しか

把握していない駐車場がいくつかある。ユーベルトート自身はそこから少し後方にある寺院の裏手に二足歩行の指揮装甲車を隠した。

しばらくすると、ユーベルトートの部下の二足歩行の装甲車がけたたましい音を立てて早稲田通りを駆け上がっていく

音がきこえた。あちこち被弾しているようで、機械の駆動音がおかしい。その後ろから大量の二足歩行装甲車と

軍勢の叫び声と足音が聞こえてくる。

「シャー!」

ユーベルトートが声をかけると精鋭部隊が駐車場から飛び出し、早稲田通りになだれ込んだ。神楽坂は極めて細い

通りである、方月祭童の軍は見事に分断された。ユーベルトートも自ら先頭に立って突撃する。

方月軍は三つに分断され、大勝である祭童は孤立した。

ユーベルトートはオタの暗黒エネルギーを凝縮してソード化できるオタサーベルを振りかざして祭童に迫る。

「祭童様お逃げください、ここは私が!」

カトリーヌが日本刀でユーベルトートに切りつける。

「貧乳はどいてろ」ユーベルトートがつぶやきながら手をかざすとカトリーヌは吹き飛んだ。

「なんの、これしき!」それでもカトリーヌは立ち上がり、ユーベルトートに切りかかる。

ユーベルトートはカトリーヌに向けて再び手をかざす。

「いい年して隠れて恋愛漫画とか描いて気持わるっ」

「ぐはっ」

カトリーヌは血を吐いて倒れた。

「カトリーヌ!」

祭童はカトリーヌに駆け寄り、カトリーヌを担ぎ上げる。

「私は……いいから……早く逃げて……」

口から血を垂らしながらカトリーヌがつぶやく。

「そんなわけにいくか、仲間だろうが!」

祭童が叫ぶ。

祭童に向けてユーベルトートはオタソードを振り上げる。

祭童は目をつぶる。

「相手はこっちなんだよ!」

ブウンと唸りながらユーベルトートにオタソードが振り下ろされる。

ユーベルトートはそれをすんでのところでかわす。

「我らオタクレーマー七人衆、俺たちが来たからには勝手はさせないぜ!」

「気をつけてください、こいつらはたった7人で千代田区方面軍を、うがっ」

ユーベルトートの部下がオタソードで切り伏せられる。

ユーベルトートは祭童から離れ部下に駆け寄る。

「相手はこっちだって言ってんだよ!」

七人衆の一人がユーベルトートに切りつける。

「いい年してヒーローゴッコですか」

ユーベルトートがつぶやいて手をかざすと相手は吹っ飛ばされた。

「くそっ、それがどうした、俺は本当のヒーローなんだ!」

その者に対してユーベルトートは手をかざす。

「知ってますか、あなたの事を兄貴分と慕っていた従兄弟のボウヤ、今年大学を卒業して就職したんですって。

その従兄弟のボウヤにあなたのお母さんが何ども頭をさげて、あなたの就職先を探してくれるようお願いしてましたよ」

ユーベルトートは呪いの呪文をとなえる。

「や、やめろー!」バウン!

七人衆の一人の頭がふっとぶ。

「ば、馬鹿な、サイバーエレクトリックヒーローがやられた!」

祭童軍に動揺がはしる。

「心配するな、奴は我ら七人衆でも祭弱、ここはこのゴットタン・バイアスくんにまかせろ!祭童様ははやく、カトリーヌさんを連れてにげて!」

「わかった、すまん!」

祭童はカトリーヌを担いで撤退した。

それをユーベルトートは追おうとする。その前にバイアスくんが立ちはだかる。

バイアスくんはユーベルトートの手をかざす。

「お前らは若者が悪いとかゆとりとか言うけど、そんな若者を作ってきたのは全部大人じゃないか!全部この

腐った社会は大人が作ってきたもんじゃないか!」

「お前が馬鹿なのは、お前の親の教育が悪いだけだし、まず、親殺してからで直して来い、あ、ニートだから

親殺したら餓死するか」

「ぐはっ」

バイアスくんは血を吐いて絶命した。

「このクズめ、どこまで人を傷つければ気が済むんだ、これ以上俺を怒らせるなよ、くっ、俺の右手が、右手に封印した魔物がうずきだしてきたぜ、この明乗陰烈斬の怒りが頂点に達したとき、このフィールドは地獄と化す!」

「厨二秒ゴッコが許されるのは中学生までですよ」

「怒らせろ!もっと俺を怒らせろ!」

明乗院にはユーベルトートの言葉はきかなかった。

明乗員の右手が暗黒化し、巨大な爪が伸びてくる。それはドンドン肥大化していった。

「死ねえ、暗黒バイアシカルギガントハンマー!」

「その右手で妹さんのパンツ盗んで嗅いでたんですか」

「ぐはっ!」

明乗員の右手が吹き飛ぶ。

「やめろ…やめろー!」

「おかげでそれ以降、妹とお父さんは口聞いてくれないんですって?でもお母さんは優しいですよね、

ヒキコモリのあなたに毎日ご飯もってきて、冷めるから早く食べてね、なんて置手紙して、いいお母さんじゃないですか」

「やめろ!やめろ!やめろー!」バウン!

明乗員の頭は吹き飛んだ。

「くそっ、こいつにオタの暗黒面は通用しない、四人一斉にオタソードで切りかかれば倒せるはずだ、いくぞ!ジェットストリームオタック!」

「おう!」

残ったオタク七人衆の四人はユーベルトートに向かってオタソードを振りかざし、突進した。

「うおおおおおおー!」突進してくる一人目が袈裟懸けにオタソードで切り倒す。その切り裂かれた体を

はらいのけながらユーベルトートは前に進む。突きを繰り出してくる相手に対して高くジャンプしてその方に

足を乗せた。

「お、俺を踏み台にしたー!」見上げる一人、上から切りかかるもう一人。ユーベルトートはそれを胴切りにする。

「もらったー!」もう一人がジャンプしてユーベルトートに向け、オタソードを振り下ろす。

それをすんでのところで避けると、そのソードは下にいたオタクの仲間を切り裂いた。

「しまった!」叫ぶオタクが振り返るとところを脳天からユーベルトートのオタソードが叩き割る。

辺りの脳髄が飛び散った。

「た、たった一人で無敵のオタク七人衆を倒しただとっ!」

恐れをなした方月軍は総崩れになって逃げ出したのだった。

それを追撃する都庁軍。

ユーベルトートはただその場に立ち尽くし、自分たちが殺した者たちにむかって、一人ひとり、手を合わせるのだった。



某有名スペースオペラの映画を見てきて大いに影響をうけました。今回の章は、

自分だったら仮面の暗黒卿をこんな感じのキャラクターにするという

イメージレスポンスに近い内容です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ