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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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急転直下

結局、暴走する前田犬は誰にも止められなかった。

都庁軍の大軍が本郷通りを南下していた。秋葉原近くの神社の敷地の間近まで迫っている。文京区は都庁軍の占有地域であり、この地域に侵攻してもレジスタンスとの協約違反にはならない。

 レジスタンス側は秋葉原に軍の主力を集結させた。その中には前田旅団もあった。前田、佐脇嬢、の連隊に加え、現在、前田犬の連隊が整備されつつあった。これが完成すると前田旅団は前田師団となる。

 松平武士が秋葉原の中央通りにヒルダやカトリーヌをつれて駐屯しているとそれを見つけた前田犬がやってきた。

「おう、松平の先生、このまえは世話になったなあ」

「ああ、どうもこんにちわ」

 そこに祭童の弟、捨阿弥がやってくる。とたんに前田犬の表情が険しくなる。

「てめえ、私のパンツ帰せよ」

 いきなり前田犬が捨阿弥に食って掛かる。

「はあ?何言ってんだお前、出所早々」

「元々はお前が私のパンツ盗んだおを追っかけて私がお前の連隊駐屯地に押しかけて衛兵とバトルになったのがこの前の騒動のきっかけじゃねえか」

「そんな事言ってると、またつかまっちゃうよん」

「ごまかすんじゃねえ、私はそういう悪い事しててとぼける奴が大嫌いだ」

「あーいいのかなーせっかく出所してきて、そんな事いっちゃって、また刑務所に逆戻りだよ~」

「殺すぞ?」

「やれるもんならやって……」

 バシュ!

 破裂するような事がして周囲に血が飛び散った。前田犬が祭童の弟、捨阿弥の頭を拳でカチ割ったのだ。

「ああああああああー!!!!!!」

 武士が大声で叫んだ。

「何やってんだよ、お前!」

 前田犬は素早く走り去った。

「姉貴ーっ!」

 佐脇嬢が叫ぶ。

「何やってんだよ、敵がせまってるんだぞ、どいつもこいつも、自分の都合だけで全体の事考えないでばらばらに動きやだって!なにしてんだよ!」

 武士が大声で叫んだ。

 「なんだ、なんだ」

「捨阿弥様がやられたー!敵襲か!」

 兵士たちがあつまってきて騒ぐ。

「ちがう!敵襲ではない!前田犬が殺したんだ!私闘だ!戦闘をはじめるな、みな静まれ!」

 武士が大声で叫んだ。

 そこに祭童が走りこんでくる。

「どうした、捨阿弥がやられただと?狙撃手か?!」

「ちがいます、前田犬が言い争って殺したんです」

「あの犬があああああ!!!」

 祭童が怒りを露わにして怒鳴った。しかしすぐに落ち着きを取り戻す。

「この機に乗じて敵が攻めてくるやもしれん。警戒を怠るな!」

 そこに伝令が馬で走りこんでくる。

「吉原に敵襲!特殊部隊が方面軍駐屯地を奇襲して方月広様を捕縛ほばくしました」

「何だと!兄弟そろいもそろって!」

 祭童が歯を食いしばった。

 祭童は急ぎ、馬にのって台東区に向かった。敵と交戦した部隊から情報を聞くと、相手方はかなり訓練された特殊部隊であり、マシンガンで完全武装していたので、太刀打ちできなかったそうだ。いかな都庁軍でもそれだけ豊富なマシンガンで完全武装するほど、銃を入手できるとは思えなかった。都庁軍と友好関係にあるアメリカ軍も都庁軍には極力銃を渡さず、ガソリンも渡さず、レジスタンスとの均衡をとって意図的に戦争を長引かせている傾向があった。

 だからそれだけ完全武装した軍隊は都庁軍ではない可能性が強い。そうすると、その特殊部隊はアメリカの軍隊である可能性が強いが、しかし、そうだと断定することはできない。下手に断定すると相手から攻める口実を与えてしまう。

 メディアの報道によると、レジスタンスを襲ったのは私的なテロ組織であるとのことだった。そんなわけがない。私的なテロリスト組織がそんな大量の銃器を入手することは不可能だ。祭童軍でさえ、アサルトライフルは三十丁くらいしかもっていない。しかも先の戦いで弾丸のほとんどを消費してしまった状態だ。

 報道の続報によると、テロリストは金で都庁軍に方月広を売却し、都庁軍はレジスタンスに対して、赤坂見付大虐殺の謝罪と、賠償として台東区を割譲するなら方月広を返還すると通達していたが、祭童はこれを拒否し、東京に来ている外国特派員を集めて記者会見を開き、都庁軍はテロシストと取引をしている。テロリストに資金提供していると訴えたが、それを国外に報道するメディアはどこもなかった。

 メディアは常に都庁軍の言い分だけを報道していた。

 どうしても謝罪を拒否する祭童に対して、都庁軍は妥協策をあらわしてきた。

 松平武士を都庁軍に引き渡すなら方月広を返還してもいいと打診してきたのだ。

 これには、レジスタンス側の大多数が賛成したが、祭童はこれを拒否するといった。

 武士はそれがすごく嬉しかった、しかし、このままでは祭童がレジスタンスの中で孤立してしまう。

 武士は、祭童に申し出て、自らと都庁軍に引き渡される道を選んだ。

「すまぬ」

 祭童は武士に対して深々と頭を下げた。


 レジスタンスと都庁軍の交渉は成立し、捕虜交換条約により、方月広はレジスタンスに渡され、松平武士は都庁軍に引き渡された。


悲劇から急転直下の展開へ

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