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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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痛恨の一撃

ついにレジスタンスで内紛が始まる。

レジスタンス正規軍が戦闘準備を始めているという情報を甲賀長門が祭童に報告してきた。敵軍の先鋒は元祭童軍の方月勝配下の軍であった。祭童も軍備を整え、腰に日本刀と脇差をさす。

「武士、お前も刀をさせ」

 祭童が武士にすすめた。

「自分はオタソードが出せるので結構です」

「ならば脇差だけはさせ」

「いやですよ、脇差は切腹するための刀でしょ。そんな縁起の悪い」

「よいか、武士道は死ぬことと見つけたりという言葉がある」

「それ、意味わかりません。死んだらおわりじゃないですか」

「この死はただの死ではない、無為の死だ」

「益々意味がわかりません。無駄死にしろということですか」

「ちがう。無為の死とは己が今までやってきたことがすべて無駄になったとしても義のために死なねばならぬということだ。死とはただ、己の命を絶つことではない。小さいことでは、疲れた会社帰り、電車の椅子に座っていると年老いたお婆さんが前にくる。その時、立っておばあさんに席を譲れるかどうかだ。それは義ではあるが、自分は疲れて損をして辛い思いをしなければならなくなる。また、いままでずっと選挙で応援してきた人が政界で大出世して、自分も選対本部でかなりの地位を占めるようになった。やっと長年の努力が実った。その時、その政治家が売国行為を働いたとき、それを告発できるか。何十年も努力しつづけ、落選しつづけた小説の新人賞。それをとってやっと本が出版できた。しかし、社会悪を目の前で目撃し、それを告発しなければならない。告発したら圧力がかかり、もう二度と本は書けないかもしれない。それでも、告発ができるか?人は、ただ、一度きり命を捨てるものではない。小さなことから大きなことまで、自らの命や利益を切り刻んで捨てねばならぬことが必ずある。よく憶えておけ、日頃国のために死ねなどと偉そうな事を言っている奴が、自分が応援していた政治家が悪事を働いたことが分かったとき、義をもってその政治家を敵として攻撃できるか、それとも、私利私欲と保身に走って、詭弁を使い、その政治家を擁護するか。そこで保身と私利私欲のために、その政治家を褒めたり、擁護したりするようであれば、そいつは、いざというとき、仲間を捨てて自分だけ逃げる。だから、そんな奴のいうことは信用できない。自分がいままで積み重ねてきたもの、しかし、それでも義のためにそれを捨てること、それが、武士道であり、死ぬことなのだ」

 武士はレジスタンスの元首、新蔵を必死に擁護していたフーバー兄弟の事が頭にうかんだ。

「わかりました。うけとります」

 武士は祭童から脇差を貰った。

 武士はそこから状況偵察のために御茶ノ水に駐屯する千秋忠子の部隊の後衛に陣取り、双眼鏡と高性能集音機で状況を偵察するよう命令された。そこでは戦闘に参加せず、戦況が悪くなると後退するよう命令されていた。

 甲賀衆からの情報によると、ミマサカ・フーバーの精鋭部隊は東京の防衛線を突破し、神田を抜き、御茶ノ水に迫っていた。千秋忠子の一個師団がミマサカ一の部隊と激突したが、先頭に立つミマサカがオタソードを振る回し、一人で、一個師団の兵力を壊滅してしまった。そこででただ一人生き残った千秋は必死にミマサカの足にしがみついた。

「いかせぬぞ!祭童様のところへは行かせぬ!神社の神主の一族の誇りにかけて!」

「あ?顔見知りだから温情で生かしてやったらこのざまかよ、離れろ!」

 ミマサカは千秋を蹴り飛ばす。

「この卑怯者!オタソードがなければなにもできぬ腰抜けめ!」

「あ?言ってくれんじゃねえか、じゃあ、かかってこいよ、日本刀で勝負してやる」

 ミマサカは日本刀を引き抜く。千秋は日本刀を振りかざして突進する。一合、二合、三合、あわせたところで、千秋の刀がパキンと音を立てて折れる。

「なんだ口ほどにもねえ、剣術でも俺に勝てねえじゃねえか」

「くそーっ!」

 千秋はその場にへたりこみ、空に向かって吼えた。

 武士はそれを見届けて、後方へ馬に乗って撤退した。武士もさすがにこの頃になると馬に乗れるようになっていた。

 武士は御茶ノ水の坂道を下って十字路に出ると、そこから少し東に引いた通路に陣取った。その後方の広場に祭童の部隊とその他のレジスタンスたちがひしめきあっている。広場は、秋葉原駅から数本の道でつながっているが、いずれの通路も狭く、大軍が一気に通ることはできない。狭い通路に敵の大軍をおびきよせ、各個撃破する作戦だ。

 敵軍は何の工夫もなくまっすぐに武士に突っ込んでくる。戦闘には真っ白なフードを目深にかぶったミマサカらしき男が馬に乗って先頭を突っ走ってくる。武士は手からオタソードを出す。

「ふん!」

 勢いよくオタソードを振り下ろすとミマサカらしき男は真っ二つに切れて、道路に落ちた。あっけない最後だった。それでも、敵の軍団はかまわず武士に突進してくる。

「くそっ、恐れを知らないのか!」

 武士は何どもオタソードを振り下ろし、敵を切ってゆく。それでも敵は突進してくる。武士の圧倒的優位。しかし、それでも次々と死地に飛び込んでくる勇猛なミマサカ軍に武士は内心恐怖を覚えた。

「敵軍が後方に回ったぞー!」

 武士の後方で叫び声が聞こえる。

「え?」

 武士はそのままジリジリと後ろに下がり、秋葉原駅が見える場所までさがった。陸橋の下に見える秋葉原駅の出口から敵軍が広場になだれ込んでくる。

「しまった!」

 武士が叫んだその時である。

「ぎゃははははっ!童貞が許されるのは小学校までだよねー!」

 クロードのけたたましい笑い声が響いた。陸橋の階段の上にクロードがいたのだ。クロードの言葉はどす黒い鉄の無数の剣となって敵を襲った。

「ぎゃっ!」「うわあっ!」

 的確に敵軍の心臓につきささり、倒れていく。この攻撃が効くってことは、敵軍も秋葉原の童貞オタク軍だってことだった。武士は唇を噛んだ。

「短小、包茎、早漏、あなたたちに生きている価値なんてあるのかしら」

 クロードの言葉が無数の針となって童貞オタクの敵軍を蹴散らす。

 が!

 ガチガチガチン!

 クロードの鉄針の群れをオタソードでなぎ倒すものがあった。

「ミマサカだー!ミマサカがきたー!」

 味方の恐怖の声が響いた。

「なにっ!」

 武士は秋葉原駅の方を二度見した。武士が殺したのはミマサカの影武者だったのだ。

「すぐそっちに行く!」

 武士は慌てて秋葉原駅の方に向かおうとする。

「よそ見をするな!相手はこっちだ!」

 敵の兵士たちが切りかかってくる。

「ちいっ!」

 武士はそれをオタソードで切り倒す。オタソードを使えば勝てる。しかし、相手が持っているのが鉄の刀でも当たればこちらも死ぬことには変わりない。群がる敵に囲まれ、秋葉原駅に近づけない。

「おい、クロード!今からでも遅くない、俺たちの味方になれ!一緒に新蔵閣下の下、世界を征服するんだ!」

「何を馬鹿な事言ってんのよ!あんたこそ、祭童様に味方しなさい!」

 クロードが怒鳴り返す。クロードは右手を天高くかかげて手のひらを上に向けたすると、そこに巨大な真っ黒な鉄球が浮かび上がる。

「これでもくらって、頭ひやしなさいな。シュバルツパンツァー!」

 その巨大な鉄球をミマサカめがけて投げつける。

「効かぬわ!」

 ミマサカはその鉄球を右手の拳で粉砕する。

「これじゃ、いつまでたってもきりがないわ。刀で勝負よ!」

「おうよ!」

 ミマサカは刀を引き抜き、クロードを迎え撃つ。クロードも刀を引き抜きミマサカに突進する。

 ガチン!

 大きな音がして火花が飛び散る。

 ガチン!ガチン!ガチン!

 何ども、何ども刀が合わさる。

 バキン!激しい音とともに火花が散り、クロードの刀が折れる。

「あ!」

 ミマサカが刀を振り下ろす。

 バシュッ!

 音とともに刀を持っていたクロードの手が切り飛ばされる。

「キャッ!」

 クロードがその場に倒れた。クロードはミマサカをにらみ付ける。

「殺せ!」

「今からでも遅くない、降伏しろ。捕虜としてお前を連れて帰る」

「いやだ!殺せ!」

「何いってんだよ、早く降伏しろ」

「いやよ!」

「殺すぞ!」

 ミマサカが刀を振り上げる。

「クロードは殺させないぞ!」

 そこに祭童が飛び出してくる。

「祭童様を守れ!」

 次々と祭童軍の兵たちが祭童に続こうとする。そこに前田軍の佐脇嬢が割ってはいる。

「さがれい!これは大将同士の一騎打ちぞ!だれもこの勝負に邪魔はさせない。邪魔に入ったものは、この佐脇が味方であろうと切る!」

 大声で佐脇嬢が怒鳴った。それまでの喧騒が一瞬にして静まり返る。敵も味方も戦いの刃を下ろして、祭童とミマサカに視線をあつめた。

「こざかしい!」

 ミマサカは祭童に向かって刀を振り下ろす。

ガチン!

 祭童は刀で受け、火花が散る。

ガチン!ガチン!ガチン!

 何ども何ども刀があわさる。そして……

バキン!

 ミマサカの刀が折れた。

「もらったあっ!」

 祭童がミマサカに向かって刀を振り下ろす。

「させるかあ!」

 ミマサカは手からオタソードを出す。

ジュッ!

 短い音がして白煙があがり、周囲に肉の焦げた匂いがただよった。

 クロードが祭童を突き飛ばしてミマサカの前に立ちはだかり、ミマサカのオタソードがクロードの胸を貫いたのだった。クロードは音もなくその場に倒れた。

「クロードーうわあああああああああああああああー!」

 ミマサカは狂ったように叫んだ。棒立ちになったミマサカの首を祭童の刀が貫く。

「うぐっ」

 ミマサカが口から血を吐く。ものすごい形相で祭童をにらみつけ、懐からリボルバーのピストルを取り出し、最後の渾身の力で引き金を引く。

 パン!

 軽い破裂音が響いた。

 祭童は仰向けに倒れた。

 ミマサカはクロードの上に覆いかぶさるように倒れて絶命した。


祭童の運命はどうなってしまうのか!?

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