戦略の階層
ついに祭童が戦略の階層に言及する
レジスタンス管理地区において元首と祭童との軋轢が深まる中、祭童が最初にやったことは秋葉原の
西 にある巨大な神社への参拝であった。そして支配下の兵士たちに熱心に参拝を奨めた。
武士は唖然とした。そんな事をしている場合ではない。それに、学校では宗教は世界を悪くするもので、世界からなくさなければならないものだと先生から習っていた。宗教があるから戦争が起こる。神社に参拝することは悪い事であり、信仰を行うものは頭が悪い程度の低い人間である。この世に神など存在せず、神社は全て破壊することが進歩的考えであるということを常々習っていた。武士の意見を聞いて祭童はニヤリと笑った。
「世界の強国には必ず戦略の階層が存在する」
「話しをそらさないでください」
「そらしてはおらぬ、世界で繁栄した国には必ず戦略の階層が存在する。それが無い国は必ず滅びている。あれだけ精強を誇ったソビエト連邦が崩壊したのも戦略の階層を徹底的に否定したからだ」
「ちょっと意味が分かりません。もっと分かりやすく説明してください」
「よかろう。世界を支配している者が持っているもの。それは世界観つまり信仰や思想、世界観だ、これが支配者階層の頂点に立つ者が持っていなければならないものだ。そして政策、これは合理的になりをすれば経済が発展し、国を守ることができるか把握することだ。その下の階層が大戦略。実際にその政策を実行するための方法、方向性を指し示すことだ。
ここまでが支配者の持っている階層であり陰陽の陽だ。そして、支配される側がもっている価値観。その頂点にあるのが軍事戦略。これは軍事に限らず、上から与えられた材料でいかに戦うか、模索する能力だ。ご主人様から与えられた予算内で、いかに、より優秀なものを作るか。仕える者の発想だ。その下が作戦、これはその与えられた物資をもとに、どこで誰がそれを作るか、行動するか、販売するか、撤収するか、現場の判断だ。その下が戦術だ。これは、どこで売るか、どこで、攻撃するか、の権限すらなく、最前線で戦うとき、相手を倒す技術をいかに磨くか、いかに使役され、よいものを作るか、ご主人様が気に入ったものを作れるのかを考えることだ。そして、もっとも末端なのが技術。
これは、自分で新しいテクニックを開発すらせず、与えられたものをひたすら反復練習して習得する。教えられたものをひたすら練習してコピーする。末端の奴隷に与えられた判断だ。日本人は第二次世界大戦で敗北して以降、徹底的にこの最下層の奴隷の価値観だけを教えられてきた。とにかく努力して反復練習。頭は使わない。教えられたことに疑問を持ってはならない。頭をつかわないで、努力と根性、努力と根性、そして利用されるがまま、何の疑問を持たず、徹底的に利益を搾取されることを喜ぶ。ただ働きでも、お前の作品を世に出してやってるんだから利益なんていらないよね。と言われて、無償や明らかな低賃金にも関わらず、ご主人様ありがとうございます。と揉み手をして感謝をする。自分がいかに騙され、搾取され踏みつけられているかさえ考えることができず、思考停止でただ、服従し、踏みつけられ感謝する。それの繰り返し。それが戦後教育を受けた日本人だ。ただ、ひたすら搾取され続けることだけを求められる。技能者は頭を使わないと、常に虐げられ、むしられ、不等に安い値段で搾取される。そして、それをよろこんでいるのが日本人なのだ。そこから脱却するためには、己の世界観を持たねばならず、その世界観を得るためのツールが信仰なのだ。だから、世界中でアメリカでも大統領の宣誓式で聖書を持ち出し、アーリントン墓地ではキリスト教の十字架がついた墓があるにも関わらず、
日本だけは絶対に神社に参拝してはならない。神社に参拝することは害悪だ。神社を抹殺せよと教えられる。それは、日本人が永遠に奴隷であり続けるために、利用されるづけるために、疑問をもたないために宗教を日本人自身が否定するよう、洗脳されつづけてきたのだ」
「そんなこと、だたの妄想としか思えないんですが」
「戦略の階層は、欧米の地政学、戦略論では必ず教えられる。世界中でこの常識を知らないのは日本人だけだ」
「うーん」
武士は考え込んだ。
「でも、そんな価値観、自分で考えればすむことですよね、そんな古臭い宗教なんてつかわなくても」
「ふふふ、それこそが、日本人が今まで延々と奴隷でありつづけたキーワードなのだよ。新しい価値観はすべて正しい。古い価値観はすべて間違っている。だから改革するためには古いものを全て壊さなければならない。そう子供の頃から常に教育され洗脳されてきた。日本が悪いだとか劣等民族だとかいう教育は二の次だ。一番日本人を奴隷にしつづけてきた、根本はこの新しい価値観はすべて正しい、古い価値観はすべて間違っているという奴隷洗脳教育だ。この教育は、アフリカの黒人、アメリカの黒人、ヒスパニックなどにも徹底的に行われており、よって、黒人はスポーツや芸能で大成功しても、ほとんどの人が同じ黒人の教育のために金を使わない、コミュニティーを作って自分たちの利益を確保しようとしない。バラッバラになって、自分の事しか考えない。それは、同じ洗脳教育をされているからだ。レジナルド カーニーの著書に戦前の日本人がいかにアメリカの黒人は奴隷として搾取され、その事に疑問を持たないことが、愚かで自らを滅ぼす事か教えようとした経緯が書かれている。しかし、戦後、日本人自身がその奴隷のロジスティックスに当てはめられ、洗脳されることになったんだがね。だから、日本人が永遠に洗脳から解けないために、洗脳以外の価値観。日本人が元からもっていた伝統的宗教の価値観を介在させないため、宗教把握だと徹底的に子供の頃から日本人に洗脳教育したのだ」
「答えになっていません。どうして新しい価値観が駄目なんですか」
「それはOODAループだよ」
「は?」
「新しく思いついた凄いアイデアだと自分が思っていることは、たいがいが昔同じことをやった人が、まったく役に立たなかったので放棄されたものがほとんどなのだ。今現在残っている方法論というものは、長い間の取捨選択によって研磨され、より効率がいいから残っている。つまり、新しい発想の大部分は、失敗であり間違いであるわけだ。よって、新しい価値観だけで政策を行使すれば、その組織は高確率で破滅する。それを回避するためには、長い間試行錯誤を繰り返し、何百年、何千年も取捨選択した末に残っている価値観であるほうが優位なのだ。しかも、それはその民族が長い間使用し、親しんできたからこそ、その民族だけに使えるものであり、文化的背景がない者が使っても大きな混乱を起こす。アメリカで仏教系新興宗教が混乱を起こしているのもそのためだ。つまり、神道の価値観は、他国からして、最大の脅威なのだ。よって、日本人が神道を捨て、永遠に外国の奴隷であり続けるために、神社に参拝することが罪悪であると教えられている」
「まったく信じられません」
「まずは、戦略の階層について自分で調べて、自分の頭で考えて理解することだ。はなしはそれからだ」
祭童は笑いながら武士の頭をなでた。
戦後日本人の本質があばかれる




