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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
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内乱のきざし

せっかく平和が訪れたかと思ったら、元首相が選挙によるレジスタンス支配地域の

リーダー決定を言いだす。諸外国の圧力で渋々承諾した祭童であったが、

元首相は過激な外国排斥論をぶちあげ、国民の人気を取り、選挙で首相になってしまった。しかし、その内情は国内の財産を海外に売り飛ばし私腹を肥やす腐敗しきったものであった。

 講和によって、東京都の治安は守られるものだと思われた。しかし、講和が終ると、元首相、元知事がレジスタンスの支配地域の指導者を民主主義的手続きである選挙によってけっていしようと言い出した。元首相、元知事は傭兵部隊の私兵はもっていたものの、勢力的には圧倒的に祭童が優位だ。しかし、元首相は外国勢力であるアメリカのマスメディアをつかって祭童を非難させ、アメリカ世論を喚起し、アメリカ軍を引き出して無理矢理選挙を行うことを要求してきた。

祭童軍といえども現状でアメリカ軍と戦うだけの戦力はなく、アメリカに経済封鎖されれば破滅しかなかった。

ゆえに、選挙に同意するしかなかった。

 選挙戦では、元首相は過激な主張を繰り返した。

「我々は日本の尊厳と誇りを取り戻します!減税を行い、外国人勢力を国内から排除し、誇り高き日本人の国を作ります!偉大なる祖国の英霊を称え、輝かしい軍隊をもった強国日本を作り、卑劣な隣国を軍事的に恫喝し、服従させます!」

 これを聞いた祭童は激怒した。アメリカも中国も、韓国も、世界中を敵に回して勝てるわけがない。そんな口先だけの誇りのために国を滅ぼして、過去の日本人が喜ぶわけがない。祭童は近隣諸国と戦争するよりも、いまは国内のインフラ整備が大事だと訴えた。そして、国内産業を守るために、関税自主権を堅持すべきであると主張した。それに対して、

元首相側は「あれは土建屋の利権の甘い汁を吸っている!利権屋だ!」と言って非難した。

「過去の栄光、英霊の再評価、近隣諸国を軍事直で恫喝し、服従させる。そういう子気味よい言葉に民衆は熱狂し、

こぞって元首相に投票し、元首相はレジスタンス統治地域の元首となってしまった。

 元首は、その権力の座につくと、電力の発送電分離を宣言し、送電線を欧米のハゲタカファンドに売り飛ばし、

私服を肥やした。労働者の非正規雇用を拡大し、労働組合を徹底的に破壊した。

「労働組合は国民の敵だ!日本民族の敵だ!」叫びながら労働者の非正規雇用化をすすめ、民衆は熱狂のうちに

元首を支持した。そして、元首に逆らうものがなくなると、日本の寺院や神社を破壊して、文化財を次々に

欧米の金持ちに売り払いはじめた。

農民は日本民族の敵だと訴え、農民をつるし上げにしてリンチにし、農作物は安いアメリカからの

前面輸入を決定した。

 ここまで来て、さすがに祭童はこれを止めようとした。処刑されようとする農民の首縄を切り、元首に反逆する姿勢を見せたのだ。しかし、祭童の弟の勝は、祭童が都庁軍との戦争をやめたことをうらんでおり、元首支持に回った。

レジスタンスの財務担当だったサダヒデ・フーバーも元首を支持した。すでに、国の企業の根幹や送電線など

インフラなどのほとんどが欧米の大企業に売却が決まっており、誰の目から見ても、この元首を総理の座につけていては

国が滅びるのは目に見えていた。しかし、日本の誇りを訴える方月勝やサダヒデ・フーバーは、「この元首しかいない!かわりがいない!」と言って、頑として元首を支持しつづけるのであった。


 今まで団結してきたレジスタンスが二つに割れた。いままで不平不満があったとしても、決して仲間割れすることがなかったレジスタンスが。

 どんな強固な組織もトップの人間が無茶苦茶な事をしたり軸がぶれると、とたんに無茶苦茶に崩壊するものだ。

 祭童は元首が日本の国を外国に売り渡し、僅かな利益を掴んで老後は海外に逃亡しようとしていると訴え、

レジスタンスをまとめようとしたが、結局、勝やサダヒデ・フーバーは元首側につくことになった。

 武士の元にもサダヒデの弟、ミマサカ・フーバーが味方になるよう説得に来た。

「祭童は売国奴だ。日本を愛する気持があるなら元首を応援すべきだ!元首は今まで日本を侮辱しつづけてきた、隣国を軍事力でやっつけると宣言しておられる。こんな愛国者がほかにいようか!」

「ちょっとまってください、今、日本は内乱状態で、他国を攻める余裕なんてないでしょ。そんな無用の軋轢を生む発言をして、相手方を怒らせたら、結局、こちらが謝罪することになるんじゃないですか?」

「そんなわけないだろ、あのお方は日本でもっと愛国心がある方なんだぞ」

「だったら、どうして日本企業を解体して外国に売り飛ばす政策をとっているんですか。日本の田園風景、郷土を破壊して、そこに外国企業を誘致しているんですか」

「それは、元首の深慮遠謀だ。面従腹背して、負けたふりをして、実はアメリカの寝首をかく準備をしておられるのだ」

「それが本当なら、元首はとっくにアメリカに暗殺されてますよ。最初から奴隷になる気満々だからアメリカも

放置してるんでしょ」

「この売国奴め!」

「売国奴とは国を売る人の事を言うのですよ」

「ちょっといいかしら」

 醒めた女の声がした。それは甲賀長門だった。

「こんな馬鹿ほっといて祭童様のところに来なさい。我々が必ず勝つわ」

「何言ってやがる。レジスタンスも大多数が元首様に味方することになっている。お前らの負けだ!」

 ミマサカは甲賀に罵声を浴びせかける。

「それはまだ、民衆が元首に騙されていることに気づいていないからよ。元首は困りだすと、かならず隣国に土下座して許しを請うて助けを求めるわ。あなたの大嫌いな隣国にね」

「それは絶対にない!」

「絶対にあるわ。あるに1億ジンバブエドルをかけてもいいわ、うふふ」

 甲賀はいじわるそうにわらった。

「ふざけるな!」

「あらあら、あなたの大切な人はあなたより少しは頭がいいみたいだけど」

 甲賀はそういいながら後ろに視線をやる。そこにはきまづそうな顔をしたクロード・ハンペータがたっていた。

「クロード!お前は俺と一緒に来てくれるんじゃないのか!」

「あなたがこっちに着てよ、ミマサカ。私たちはずっと祭童様を支えてきたんじゃない」

「俺がアニキを裏切れるわけないだろ!お前こそ、俺と一緒に来い!俺たちが絶対に勝つから!」

「勝つか負けるかじゃないわ。私はずっと祭童様に忠誠をつくしてきたの。その気持が変わることはないわ!」

「俺より祭童が大事なのかよ!」

「……うううっ」

 クロードはポロポロと涙を流した。

「やめなさい、みっともない、女を泣かせるなんて最低の男ね」

 甲賀がミマサカをにらみつける。

「ちっ、馬鹿野郎!」

 ミマサカは怒って立ち去ってしまった。

「で、あんたはどっちにつくの」

 甲賀が眉をひそめて武士を見る。

「祭童さんの側につきます。第三者の目から見て、今の元首は日本の国を無茶苦茶に破壊して破滅させようとしているように見えます。ほんの僅かな私利私欲を得るために」

「そうね、それが冷静な目というこのよ。あいつらは、愛国心とか言ってるけど、ただの元首ファンクラブなのよ。ごっこ遊びをしてるだけ。愛国心なんてこれっぽっちもないわ。これだけあの元首が売国行為をくりかえしているのに、まだあの元首しかいない!とかいってる。あいつ以外だったら誰でもいいわよ。それほど、あいつは最低のクズだわ」

 甲賀は吐き捨てるようにいった。

「いや……ボクはそこまでは言ってませんけど」

 武士は困惑した。


せっかく団結していたレジスタンスに亀裂のきざしが

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