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道(タオ)戦略的老子の解釈  作者: 公心健詞
11/84

竹芝ふ頭侵攻戦

祭童が攻めにでる!

 山口ヒルダが体操着とブルマーを着てタレ犬耳と犬尻尾をつけられている、ヒルダは顔を赤らめ、とても恥ずかしそうだ。

「あ、武士殿!」

 ヒルダは武士を見つけると、顔を赤らめて視線をそらした。

「どうしたんだい?」

「こ、これはちがうでありますのんた。電波受信用のレーダーとアンテナなのでありますのんた。武士殿の部隊の

女の子たち数人にコスプレ衣装を着せて、その中に本官が紛れ込むのであります」

「どうしてそんなことするんだい?」

「敵の狙撃を避けるためであります」

「ああ……」

 武士は口ごもった。これから自分が戦いに行くということを再認識した。武士はワナビー師団の連隊長に抜擢された。

 山口師団は山口大高、山口鳴海親子の裏切りにより崩壊したので、山口ヒルダの大隊は武士の連隊に編入されたのだった。元々連隊規模の人員がいたが、先の新橋の戦いで大隊規模に縮小するほど消耗したのだ。

 新しく創設されたワナビー部隊は投稿小説で一度も一次通過をしたことのない人たちの部隊だ。

 読んだ人に悪影響がある人だけが選抜された最強物書き部隊なのである。みんな背中に自慢の原稿を入れたリュックを背負っている。たとえそれが悪影響であっても、人に自分の作品を読んでもらいたい。それが物書きの願いだ。

 人から非難されるのは辛い、否定されるのは苦しい。しかし、一番恐ろしいのは無関心である。

だれからも相手にされない。無視される。それほど恐ろしいことはないのだ。

読んだ人を死に至らしめる最低レベルのもの書き。そのため、書く事を封印され、その書いたものも焼き捨てられた

人たち、その人たちにとって、それがたとえ、戦の道具であろうと、人に見てもらえることが至高の喜びなのであった。

軍は隅田川をゴムボートに乗って下っていった。そして勝どき橋に上陸に、都庁軍と衝突した。前田旅団は新橋に向けて進軍するそぶりをみせ、前田旅団が敵と交戦している間に方月祭童の親衛隊師団と武士の所属するワナビー師団の二個師団が

竹芝ふ頭になだれ込んだ。敵の散発的な抵抗はあるものの、際童の行動の意図をつかみかねてか都庁軍は混乱しているようであった。交通の要である新橋の奪還をレジスタンスが狙っているとの情報はインターネットの匿名掲示板や

SNSでは散々流していた。そのため、都庁軍も新橋の防衛を固めていた。そこへ、レジスタンスが赤坂見付に

奇襲攻撃をしかけた。慌てた都庁軍であったが、新橋を攻撃するための陽動作戦であることを考慮してか

新橋の部隊は動かさず、周辺の部隊を赤坂への援軍に指す向けているようであった。このため、竹芝ふ頭は

がら空きだった。武士たちが竹芝ふ頭になだれ込むと、そこには公園があった。兵士は誰もいない。

赤と白とのストライプのレンガが地面に埋め込まれていた。それはまるで日章旗のように、真ん中が白い円で、そこから放射線状に白い線が外にひごがっている。その奇妙なレンガがしきつめてある向こうに白い筒型のゴミ箱が二つ見えた。

そのゴミ箱の向こうにベンチがある。そこでは頭を丸刈りにして丸メガネをかけ、口ひげを蓄えたスマートな老人がベンチに腰掛けて読書をしていた。その前で小さな女の子がピンクのフリルをのついた洋服を着て赤と青と白と黄色の縞々の

タイツをはいて、黄色いボールを転がして遊んでいた。

「ああ、みるくちゃん、あんまり遠くにいっちゃだめだよ」

 お爺さんが声をかける。

 そこにワナビー軍が駆け寄る。

「おいじいさん、お前、都庁側の住民か」

「はて、なんですかな、ちょっと耳が遠いのでの」

「関係ない一般市民ならどっかいってろ。今からここで戦闘が始まる。危ないぞ、子供をつれて早く退避しろ」

「そりゃ、困りましたな、この本はこれからが面白いところなのに」

「そんなもん、読んでる場合か」

「いや、あんたらのヘタクソな小説を読むより、ずっと有意義ですぞ」

 そう言うと老人はニヤリと笑った。

「なんだ……この野郎……」

 微妙な空気の中、ワナビー隊の兵士は老人から距離をとって後ずさりする。

「何やってんだよ、お前ら、ただのジイイじゃん」

 一人がその老人に近づいて手を伸ばす。

「さあ、さっさとどけよジイサン」

「そんな腐った手で触らんでくれ、文章力D」

 バスッと音がして兵士の腕が破裂する。

「ぎゃああああああああー」

 辺りに血しぶきが飛び散り、兵士が転がりまわる。

「うるさい、だまれ、構成力C」

 バシュっと音がして兵士の頭が踏み潰される。

「こ、こいつ、オタの暗黒卿だぞ!気をつけろ」

「誰が暗黒卿だって?ワシの名は東条貫太郎。某新人賞の下読みじゃ」

 その言葉を聴いたとたん、兵士たちは青ざめて後ろに引いた。

「ば、馬鹿野郎、ひるむな、この世界じゃ、ヘタクソな文章であればあるほど、敵にダメージを与えるんだ!

俺たちはもう、前の世界みたいな負け犬じゃないんだ!くらえ!」

 兵士がリュックから原稿を取り出し東条に投げつけようとする。

「独りよがり!」

 ボウン!

 兵士の上半身が吹っ飛ぶ。

「ひ、ひるむな!数でかかれ!相手に俺たちの文章を読ませたらそれで終りだ!」

 兵士は必死になって背中に背負ったリュックを下ろして東条に原稿を投げつけようとする。

「そんなにうまくいくかね、ご都合主義!」

 ボボボボボボボウン!

 連続で兵士たちが爆裂する。

「なんがこいつ!至急援軍を!化け物だ、ばけもの……」

 バウン

 通信兵が破裂させられる。

 次々に殺されていくワナビー部隊。武士はただそれを呆然と眺めているだけだった。

 そこへ東条が突進してくる。

「あぶない!」

 ヒルダが武士の前に立ちふさがる。

「何やってんだ!」

 武士はヒルダの首根っこをひっつかんで放り投げる。

 その次の瞬間、東条が武士の真横に立っていた。東条は目を細めて薄ら笑いを浮かべる。

「構成力E」

 ぐはっ!

 武士は血を吐いて吹き飛ばされた。そして立ち上がる。

「なん……だと……」

 東条が息をのむ。しかし、すぐさま武士に走りより頭に手を当てる。

「構成力E」

 ドカッ

 武士は地面に頭を打ち付けられ、額から血がながれる。

「ひとりよがり!」

「ご都合主義!」

「あなたは絶対にプロにはなれません」

 一方的に攻撃を受けまくる武士。

「もうやめて!もうよやめてよー!武士君しんじゃうよー!」

 ヒルダが大声で叫びながら号泣する。

 が、 一方的に攻撃し、絶対優位のはずの東条の顔にあせりの色が浮かび、額から脂汗がならげてくる。

「なぜ、なぜつぶれない、なぜ、心がおれない、なぜ、絶望して自殺しない、なぜ……なぜ……なーぜーだー!」

 武士はよろけながらもたちあがる。

「それは……俺には書くことしかないから、オレにできることは書くことしかないから、俺にはこれしかないからなんだよー!」

「もし、それしか無いのならば、お前はその唯一の能力すら最低以下だ、お前みたいな奴に生きている価値はないのだー!」

 東条は拳を振り上げて武士の右手に向けて振り下ろす。

「や、やめてくれ、右手だけは!」

「文章力D!」

 武士は目を見張る。

「文章力D!構成力E、将来性E、表現力E、独創性E、文章力D!うおおおおおおおおー俺は今、猛烈に感動しているうううううー!」

「なにっ、こいつ、けなされて喜んでやがる、なぜだ!Dなんて最低の最低のクズ以下じゃないか!」

「クズ以下でも、人間以下の評価しかもらえない者からしたら天国の評価なんだよっ!」

「だまれ!異世界モノ、無双、チーレム(チートハーレム)しか

書けない独創性のかけらもないゴミめ!」

 東条の言葉に武士の右手が炎のように燃え上がる。

「異世界モノ、無双、チーレムしか書けないんじゃない……、オレは

書き手であると同時に読者なんだ。そして、読者として一番読みたいものを

書いているんだよおおおおおおおー!」

 武士は東条の胸に拳を打ち込む。

「ぐはっ、なんだこれはっ、うわー、体の中に同じストーリーが増殖していくっ!異世界モノ、無双、チーレム、異世界モノ、無双、チーレム、異世界モノ、無双、チーレムぎゃあああああああーみんなおんなじだー、みわけがつかないー、クローンだー!クローンの逆襲だー!があああああーー!」

バウン!

東条の頭が破裂する。

 そこに、無表情の女の子がゆっくり歩み寄る。

「だ、だめだ、見るんじゃない」

この子は東条の孫娘なのだろうか、もしそうなら、こんなむごいことはない。絶対にこんな死に様見せてはいけないんだ。そう武士は思った。

「ほざくな、小僧!」

 幼児の少女は武士を一喝した。

 武士は唖然とする。

「せめて未熟な部下の死への手向けをする間くらい待つことすらできぬのか。この早漏包茎チンコめ」

「なっ」

 幼児は東条に近づき、開きっぱなしの目を閉じてやった。そして手を合わせて黙祷した。

「もういいぞ、小僧、かかってこい」

「何言ってるんだ、君みたいな幼児相手に戦えるわけないだろ」

「ふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか、これでも私はこの東条より年上なんだがね。ではこちらからいくぞ、フン!」

 幼児の拳が武士のわき腹に食い込む。

「ゲボッ!」

 武士はふっとぶ。

「やめろー!」

ヒルダが刀を抜いて幼児に切りかかる。幼児は右足を軸にしな柄すばやく回転し、左足に軸を移して回転して、

突進してくるヒルダの後ろに回りこみ、両足のヒザの関節を後ろから平行にけりあげた。

 ヒルダはひっくり返る。幼児はすばやくマウントポジションを取ると、拳を振り上げる。

「死ねっ!」

「させるかっ!」

 祭童が突っ走ってきて刀をつきこむ。幼児はすばやく避ける。

「この知れ者の朝比奈がっ!」

「おお、久しいの方月の小娘、ようやくおしめがとれたか」

「だまれ、このみるくババア!」

「ぬかしよる」

 朝比奈みるくは薄ら笑いを浮かべた。

「こい、久々にそなたと戦いとうなったわ」

「かかれい!二個師団で一気に朝比奈を叩き潰せ!」

「ふう、無粋な」

 呆れ顔を浮かべる朝比奈。

「死ねっ!」

 兵士が刀を振り下ろす。それを朝比奈はすんでのところで避けて正拳突きで兵士の腕をへし折る。

「ぎゃああー」

 兵士は悲鳴をあげる。

それでも、次から次へ兵士たちは朝比奈に群がっていき、倒されてゆく。

 そのときである。

 ドゴオオオオオオオーン!!!

 巨大な爆発音とともに火花が海側から飛び散ってくる。

「しまった!貨物船がやられたか。チッ、遊びすぎたわ」

 朝比奈は海のほうを恨めしげににらみつけた。

「方月の小娘、今日のところはその命、とらずにおいてやる。また会おうぞ」

 朝比奈はすばやく走り去っていった。

 しばらくして前田と佐脇が祭童の軍に合流した。

「くそっ、朝比奈のババアに背後を衝かれた」

 前田は額から血を流していた。

「くそっ、こんな時に姉貴がいたら」

 吐き捨てるように佐脇嬢が言った。

「あいつの事は言うな」

 前田が大声で怒鳴ると佐脇嬢はシュンとして口をつぐんだ。

「あまりに大きな被害をうけた。撤退する!」

 朝比奈が暴れまわったせいで、前田旅団も壊滅的被害を受けた。

 親衛隊も大勢死に、負傷者も大量にいる。

 結局のところ、祭童は貨物船は破壊して沈めたものの、竹芝ふ頭は放棄して秋葉原に撤退することにした。


 秋葉原には死亡した味方の死体が並べられ、誰が死んだか確認がとられていた。

「お前も死んだか、お前もか」

 祭童は一人ずつ顔を見ながら涙をこぼしていた。

 「祭童様、捕虜の処分はどういたしましょうか。もしお任せいただけるなら全員処分しますが」

 問うてきたのは銀髪のショートヘアーにスレンダーな体の女性だった。

甲賀長門こうかながとか、大勢人が死んだのだ。これ以上殺生はだめだぞ」

 祭童が涙をぬぐいながら言った。

 長門は敵の偵察や破壊工作を行う忍者部隊の棟梁であった。日頃敵中に潜伏しているのでめったに顔を

あわせることは無い。

 祭童が敵の捕虜を検分していると、ボロボロの汚れた服を着た黒人の男が居た。祭童はその男に興味を持ったようだ。

「おまえ、なぜそんなボロボロの服を着ている。臭いぞ、風呂には入らんのか。どこから来た」

「私は南アフリカの大学院で経済学を勉強していましたが、誘拐されて奴隷として売り飛ばされたのです。ずっと

あの貨物船の荷物室に押し込められていました。見張りが逃げ出したので、外に出てきたのです」

「ほう、そなたの名前は何と言う」

「はい、ヤスケ・クルーグマンです」

「経済学の専門家は貴重だ、すぐに経済官僚として登用する」

「お待ちください!」

 大声で白人の中年の男が走りよってきた。ミマサカ・フーバーの兄のサダヒデ・フーバーだった。

「どうした」

 怪訝そうな顔で祭童はサダヒデを見る。

「冷静になってください。客観的データを見ても黒人は白人より東洋人より知能指数が低いのです。このようなものを

経済官僚の中に入れてはいけません」

「低いというのはあくまでも平均値だろう。アフリカの場合は戦乱でまともな教育をうけていない事も原因になっている。ちゃんとした教育をうけ、それを理解できるものであれば問題ない」

「しかし」

「我が陣営で差別はゆるさぬ。人種がどうあろうと適材適所の人材がいれば迷わず使う。そう心得るがよい」

「……」

サダヒデは無言で顔を背けた。


お話の中でひどい小説新人賞の下読みさんが出てきますが、これはネタです。

こんなひどいことを言う小説賞の下読み先生はいません。あくまでもネタです!


あと、都庁軍の守将の東条貫太郎の元ネタは、戦国時代の村木砦主将である

東条松平勘太郎義春です。前に山口教継の赤塚の戦いのオマージュで、今回は

村木砦の戦いのオマージュだと歴史好きの方は分かったと思いますが。

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