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第2章・楽ではない道

 葛西はとても緊張した顔で車を降りた。

 すると、目の前には人だかりができていた。

 社員やマリナーズの幹部達が出迎えにきてくれたのだ。

 しかし、幹部たちの顔を見るとほとんどいや 全員が、

 じいさんばかりだった。これが当然だと思っていた

 葛西だが、なにか心に引っ掛かった。しかし心配を

 よそに、社長秘書の辻井と幹部たちと一緒に

 社長室に向かった。すると幹部たちを代表して副社長が

 挨拶をするというので急いで支度したダンボール6個を

 乱暴に置いて、葛西は椅子に座った。すると、右端の

 見た目は50後半の男が口を開けた。

「私が副社長の砂金です。若き社長と一緒に仕事ができて

 光栄です。隣にいるのが専務の仙石、続いて常務の西條

 取締役の小野田と遠藤。そして監督の湯瀬です。そして

 明星マリナーズの歴史というのは・・・」

 7分もしゃべり倒している。正直言ってここの歴史は

 どうでもいい。どうせ歴史を語られても実績を

 だせなかったらクビだ。葛西はどうにか、クビだけは

 免れたい。いや絶対にすぐに明星グループに戻ってやる。

 明星グループにいた時と考えが変わっていた。

 車でここに来るまでに考えが変わったのだろうか?

「砂金さんありがとうございます。とても素晴らしい歴史

 ですね。大変、勉強になりました。次に聞きたいこと

 なんですが、ここの概要を教えてくれませんか?」

 砂金の話を無理やり中断させた。すると、辻井がファイルを

 カバンからだして、葛西の前に置いた。辻井は、

「社長、そこに詳しくここの概要と現状が載ってあります。それを

 見ながらご説明いたします。わがチームは社長も知っている

 通り明星グループ傘下のラグビージャパンリーグに加盟している

 プロラグビーチームです。明星グループの創設者である、

 松善重義氏の積極的支援のおかげでわがチームは1987年に

 ジャパンリーグの前身であるラグビー実業団リーグ優勝を

 果たしました。その後、2003年・2004年に、

 ラグビージャパンリーグを2連覇しました。そんな名誉ある

 チームですがここ最近は、リーグ5位と実力がだせていません。

 それにファン離れも加速の一途をたどっています。原因は、

 新興企業のインターネット通販で企業成績を伸ばしている

 好天の台頭です。2010年から好天ビッグブルーズが4連覇

 しました。好天は巨額の資金があり選手獲得にとても力を

 入れています。明星を見てみると経済不況の波にうまく乗られず

 わがチームの財源も2割カットされました。選手獲得も好天の

 ようにはいきません。これがわがチームの概要と現状です。」

 葛西は3時間前の自分を恨んだ。なにが社長だ。ただ、潰れるかも

 しれないチームのお飾りになっただけじゃないか!あの時

 ちゃんと断ればよかった。ただの平社員が問題がない会社の

 社長になれるはずがない。2度も言うが、俺はスポーツといえば

 陸上の長距離ぐらいでラグビーなんぞわからない。

 高校にラグビー部はあったがそれぐらいでやり方もルールもわかるはずがない。

「社長、そういうわけです。わがチームは低迷しております。そこをなんとか若き社長のお力で救っていただきたいと思っております。ただ、しっかりと予算内でチームを救ってください。下らん改革など不必要です。」

 砂金副社長は葛西を上から見るような感じで若き社長にくぎを刺した。

 こいつらは自分の保身のために俺がやらなければならないことを邪魔しようとしている・・・

 葛西はすぐにわかった。

「社長、就任式の準備ができました。社員や選手に訓示をお願いします。そのあとは選手の紹介をいたします。」

 辻井は険悪のムードの中、スケジュールを葛西に報告した。

 4階にある社長室から出て葛西や辻井、そして幹部たちはエレベーターに乗った。

 エレベーターの中も終始、険悪なムードだった。

 チンっと2階に着いた音が鳴った。乾いた音だった。それに気付くぐらい静けさが漂った。

 エレベーターから降り、まっすぐで長い廊下を辻井の案内で大ホールを目指した。

 大ホールの入り口に着いたが、入り口には入らず

 舞台袖に案内された。葛西や幹部たちが舞台袖に到着すると辻井にここで待つように言われた。

「ただいまから、明星マリナーズ葛西光彦新代表取締役社長の就任式を執り行いたいと思います。

 それではまず、砂金副社長からお言葉を頂戴いたします。」

 眼鏡をかけた小太りの男が司会進行役を務めている。やはり舞台の上では緊張するのか男は額から汗がでているのがわかった。そう感じていると砂金の話が始まった。砂金は明星マリナーズの歴史を語り始めた。さっきと一緒だ・・・

 葛西はそう思いながら話を聞いていた。

 10分ぐらいたって話は終わった。すると司会進行役の男が、

「それではお待たせいたしました。新しくご就任なさいました。葛西光彦新代表取締役社長からのお言葉を頂戴いたします。」

 葛西は大きな拍手で出迎えられた。拍手の音で耳が痛いくらいの音だった。少し黙っていると拍手がゆっくりと鳴りやんだ。葛西はここに来てから初めて大人数の前でしゃべっている。自分の話をしっかり聞いてくれるだろうか、少し不安はあったが思ったことを言えばいいそう思っていた。

「みなさん。新しく代表取締役社長に就任いたしました、葛西光彦と申します。4年間よろしくお願いいたします。早速なんですがこいつは誰なんだと

 思っている方もいるかもしれません。自分はラグビー経験者でなければ、有名なカリスマ経営者でも

 ありません。先ほどまでただのサラリーマンでした、通勤も電車です、ただの営業部の副部長でした。そんな奴が今日から皆さんの上司、そしてこのチームのトップに就任させていただきました。

 果たしてこんな奴がグループのトップにふさわしいやつなんだろうか?今そう思っている方々いると思います。この4年間は無駄になるだけだ。そう思っている方もいるはず。しかし、本当にこの4年間は無駄の4年間になるのでしょうか?明星グループの田村社長は無駄な4年間を皆さんに与えたのでしょうか?それは、みなさんの見当違いだと思います。

 田村社長はこの4年間で明星マリナーズを大改革で

 立て直してほしい。と、この私に託されました。

 なぜ、この明星マリナーズが大改革を起こさなければならないのか?

 皆さんは今までの明星マリナーズの幹部が隠ぺい体質のせいでわからなかったかもしれませんが、このチームは明星グループの中でも赤字経営が続いている会社の一つでもあります。言えば、普通の独立した会社であればとっくの昔に破産していたんです。」

 目の前にいる社員や選手たちのどよめきがどんどん大きくなっていた。幹部たちも就任あいさつでこのようなことを暴露されるのを予期しておらず完璧にしてやられたと思っていた。それでも葛西は話をつづけた。

「皆さんのそのどよめきは仕方ありません。




 








 

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