魔法の国で日本生活。その2
この話はその2、すなわち2話目です。これの前にその1である無印をお読みください。
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「お前ら何してんだ?」
俺が異世界に来てはやくも1カ月が経とうとしていた。普通に外を散歩していると子供が何やら公園のすみっこに集まっていた。
ここの生活に慣れたわけではないが、人間関係はそれなり。むしろ日本よりいいぐらいだ。普段は勉強やらで家にこもっているのだが、それではいけないからな。
「ん?あー、異世界さん」
「そのあだ名はどうだろう・・・?」
「お兄ちゃん、これ見て」
そこで見せられたのはゲーム機だった。どうやらかなり進化しているらしく、現実の世界にゲームを映し出すものらしい。そのゲームはサッカーゲームで公園が一瞬にしてサッカーのフィールドへと変わった。驚かずにはいられない。
「すげぇな」
「これも魔法なんだ。まだ僕たちは魔法を完全に使えないけど、このゲームの中に入っている強化装置で僕たちの魔法を強めてくれるの」
なんでも魔法の弱いものにしか扱えず、強いものが威力を増し、犯罪に使われないようにしているらしい。よく考えられている。とりあえずそこに気をつかうなら俺の家に防犯のための結界を要求したい。
「これは光魔法の応用なんだ」
「光魔法・・・そのまんまの意味かよ」
光魔法と言うとゲームではよく回復だかに使われている名前ではあるが、ここではそのまんま光を操る魔法らしい。まぁ、この国は平和そのもの。回復やらはあまり必要ないように思える。
「お兄ちゃんもサッカーやる?」
「サッカーか・・・」
実を言うとここにきてからスポーツ観戦をしていない。俺自身まるでスポーツを見ない人間なんだがこちらのスポーツには興味があった。どんなものがあるのか、と。しかしそれは日本と同じらしい。言葉が通じるのはどういう理屈かは分からないが、日本と似ているのかもな。
「よし、いいだろう」
気分転換も兼ねて了承する。やったー!と騒いでいるが何がそんなに嬉しいのか。
「あんまり大人は遊んでくれないから、お兄ちゃんみたいな暇人がいてよかったよ」
「お前それわざと言ってんじゃねぇだろうな・・・」
辛辣すぎる言葉である。
とりあえずここにいるのは俺と子供7人。合わせて8人でちょうど4対4になれる。チーム分けをした後、俺らは位置についた。
「お兄ちゃんと同じか・・・」
「厳しいな・・・」
「足ひっぱんないでね」
子供から次々と言葉をかけられるがどうしても俺をバカにしているとしか思えない。言わせておけばいいか。俺の体育の成績は5。なんでもパーフェクトにするために俺は頑張った。その力をこんなところで見せることになるとはな・・・。
キックオフ。まずは相手ぼー・・・る・・・・・?
「ってお前ら!?」
「ん?どうしたの、急がないと」
いや、何かおかしいと思ったんだ。ここの公園はかなり広い。その広い面積一面にゲームからフィールドが映し出されているため、4対4では広すぎるんじゃ・・・という疑問もあった。
その嫌な予感は的中した。こいつら魔法で空を飛びやがった・・・しかも超はやい。
「お前ら!なんだそれずるいぞ!」
「えぇー、お兄ちゃん飛べないのー?」
「飛べるか!」
これはサッカーどころじゃない。というかなんだこれ。サッカーボールも浮いてるし。アクロバティックな蹴り方でどんどんパスしていく子供たち。
それに比べてぼーっとしている俺。
「このゲームの中では魔法の力が強まるから普段は飛べない私たちでも飛べるようになるんだ」
「そんな・・・説明は・・・いい・・・」
息絶え絶え。頑張ってボールを追ってみたのだが、まるで届かない。無駄な徒競争。
「お前ら一回降りてくれ」
えーと文句を言いつつも素直に降りてくれる。俺はその瞬間ゲームの電源を切った。
「あー!」
「お前ら、外に出てまでゲームをするな。子供らしく遊べ」
俺は大人の威厳たっぷりでいうも納得してくれない。「絶対魔法使えないからだよ」「お兄ちゃん負けず嫌いだから」「大人げないしな」うるせぇ。
「ともかく!お前らに面白い遊びを教えてやろう」
「遊び?」
遊びという単語にくいつき、目を輝かせながらこちらを見る子供。ふん、容易いな。
「鬼ごっこ、というものだ」
「おにごっこ・・・?」
微妙な反応。やはり知らなかったか。
「こういうの?」
肩をポンポンを叩かれて後ろを向くと・・・
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
マジな鬼がいた。
「アオイ驚きすぎ・・・。相変わらずメンタル弱いよね」
鬼がしゃべった。
「いいかげん気付け」
そう言うとその鬼は杖を一振り。鬼の外見は一瞬にして高校生魔法使いアーシャへと変わった。なんだ、お前かよ。
「これも光魔法の応用なんだけど。ていうか鬼ごっこってなによ」
「鬼ごっことは走る遊びだ。1人、鬼を決めてその鬼が触れた人が今度は鬼になる。鬼が増える増える鬼とか色鬼とか、高高鬼とか地方によっても種類が違うんだけど・・・この人数なら増える鬼でいいよな」
試しに俺が鬼となって開始する。アーシャが小学生に混じるとおかしい感じがするな、と思ったが俺も同じなので何も言わないでおく。
「もちろん、魔法は禁止だからな」
「わかってるー!」
もうすでにかなりの距離を逃げてやがる。この広いフィールドならば、思う存分走り回れるだろう。ちなみに増える鬼は鬼に捕まった人も鬼自身も鬼のままでどんどん鬼の数を増やしていくというものだ。
俺は静かに走り出す。みんなもわー!だのきゃー!だの言って逃げていた。これじゃまるで俺が不審者みたいじゃないか。
なぜか俺はこの国の人全員に認知されている状態となっている。魔法を使えない世界から人がくることはあまりないらしく、周りの人がフォローしろというなんか嬉しいんだか恥ずかしいんだか分からない情報が流されていたらしい。アーシャから聞いた。
「俺はどんなときでも全力、狙うは1番!」
全速力。手加減と言う言葉は俺の辞書にない!
「うわー・・・」
なにやらアーシャが引いていたが気にしない。ものすごいスピードでアーシャに触れた。
「いよっし!」
「なに本気だしてんの・・・あとさらっと体触らないでよ」
「それが嫌なら参加するな。これでお前も鬼な」
ちぇーと言いながらも素直に従う。俺はここで作戦があったのでアーシャに話しかける。
「お前が鬼だということは他のやつらには内緒だ。それで近づいて捕まえろ」
「ほんと容赦ないのね・・・」
とはいいつつも、軽い足取りで子供たちのもとへ。
「あと、お前その制服スカート短いんだからパンツとか気にしろよ」
「うっさい!」
すごいスピードで水魔法が発動した。あっぶねぇ・・・お前生身の人間に魔法使うな・・・。
アーシャは言葉巧みに使い、子供のうち1人を捕まえ、鬼は3人。
「鬼ごっこの楽しさはここからだぜ・・・」
俺はさらにスピードを上げるべく、公園を走り回った。
〇
「もう・・・無理・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
全員が公園の地面に突っ伏す。走り回りすぎた。遊びすぎた。この年になってバカみたいだ。
「お兄ちゃん、体動かすって気持ちいいね・・・」
「無理してしゃべらんでもいい・・・」
喉がからからだ。こんなの小学生以来だ。みんなして公園の水飲み場に集まりゴクゴク水を飲む。ぷはぁ!という音を人間が実際に出すことになるとはな。
あたりも夕焼けで赤くなり、なんだか無性に帰りたくなる。
「よし、帰るか」
「うん、これ晩御飯おいしくなりそう」
アーシャも笑顔で答える。
確かに言われるまで気付かなかったが腹がかなり減っている。
「半熟卵たべたいー」
「お前・・・完全にはまったな」
ニヤニヤ。それを見て杖をこちらに向ける。それピストル並みの圧迫感するからやめろ。
「あんたさ、子供好きなの?嫌いなの?」
「うるさいガキは嫌いだよ。でも、子供はうるさくて元気じゃなきゃいけない」
それを聞くとアーシャはかすかに笑った。俺もそれを見て笑う。風が気持ちいい。これから料理を作ったり勉強をしなければいけないけれど、それでも気分は最高。今すぐにでも寝れそうなこの感じがなんだか懐かしかった。
というわけでなんとなく気にいったので2話目を書いてみました。
主人公が魔法を覚える場合設定などを考えるのが苦手なため、逆にしちゃえ!と思い、書いてみたこの作品。
色々とたくさん話を考えれそうなので長編にしようかな、なんて思っています。その場合更新頻度はどうなるか分かりませんが。
魔法についてとか、主人公が異世界にきたいきさつとかも丁寧に、難しすぎる感じにならないよう書いてみたいので。
もしよろしければだめなところでも構わないので感想をいただけたら嬉しいです。
ではまた別の作品で。