95.カモフラージュ
95.カモフラージュ
高田が席を立ったので、康祐も引き上げることにした。博子はゆっくりして来てもいいと言ってくれたのだけれど、少しでも博子の負担を減らしてやりたいと思っていた。
「それじゃあ、僕もそろそろ失礼するよ」
それを見て琴音も席を立った。
「私も、子供を義母さんに預けているので」
今日の主役でもある琴音が帰ると言うので、周囲からは残念そうな声が上がった。
「佐久間主任、人妻の羽田さんまでお持ち帰りですか?」
そう言ったのは宮下だった。もちろん冗談のつもりだった。
「あれっ?二人はいつの間にそんな関係に?」
山岡がからかうように続けた。奈美はその言葉を真に受けてきょとんとしている。
「変な冗談はよしてくれ。吉田さんが本気にしてるじゃないか。それに、羽田さんはご主人一筋だと聞いているよ。たとえ間違っても僕は無いよ」
「そうね。私、やせた男性は好きじゃないの。それじゃあ、お先に」
琴音はそう言って、とっとと帰ってしまった。
「ほら見ろ!最後の最後に怒らせちゃったじゃいか?」
康祐がそう言うと、宮下と山岡は本当に冗談なのにとお互いに顔を見合わせた。
康祐が店の外に出ると琴音が待っていた。
「佐久間さん、さっきはありがとう。おかげで、すんなり出られたわ」
琴音はそう言うと、軽く会釈をしてその場を後にした。
大手町のオフィスビルの地下にあるバー。高田は既にカウンターでカクテルを飲んでいた。琴音はその隣に座ってソフトドリンクを注文した。
「早かったね。主役の君はすぐには抜けられないだろうと思っていてんだけど」
「佐久間さんが席を立ったので、そのタイミングで一緒に出てきました」
「佐久間と?じゃあ、からかわれたりしなかったか?」
「はい、少し」
「だろうな。あいつは意外とモテるから、他の社員からはいつもからかわれている」
「彼なら解かる気がするわ。私の好きなタイプではないけれど」
「ふーん、じゃあ、君はどういう男が好みなんだい?」
「教えてあげない」
琴音はそう言って、高田の腕を取って体を寄せた。




