87.おんなじ…
87.おんなじ…
佐久間さんには取り付く島が無いな…。結婚相手として考えるなら佐久間康祐ほど理想の男性は居ない。数か月見てきただけなのだけれど、和美にはそれで充分だった。けれど、彼と結ばれることはない。
昼過ぎまで仮眠を取った後、出かける支度をしながら和美はそんなことを考えていた。そして、時計を見た。待ち合わせの時間まではまだ余裕がある。早めに出て、軽く食事でも取ろう。和美はそう思った。
康祐は朝食の後も優介をずっと眺めていた。眺めているうちの眠ってしまった。その間に、博子は掃除や洗濯を済ませた。そして、康祐の横で眠っている優介を抱きあげると、そのまま部屋を出た。
芙美香のところにやって来た博子は優介を芙美香の所の女の子の隣に寝かした。優香が二人の赤ん坊をじっと眺めている。康祐がさっきまでしていたように。
「ねえ、ママ!優里も優介ちゃんもおんなじ顔だよ。お猿さんみたい」
「そうね。赤ちゃんの時はみんなおんなじ様な顔をしているわね。優香も同じだったわよ」
優香が言ったので芙美香はそう答えた。そして、優香が生まれた頃のアルバムを出してきた。
目を覚ました康祐は居間に置かれたメモを見た。そして、博子にメールした。
『僕もお邪魔していいかな?』
待ち合わせ場所の有楽町に早く着いた和美は軽く食事を取るためにファーストフードの店に入った。エビかつバーガーとフライドポテト、ホットコーヒーを注文して席に着いた。着いたその時、後ろから肩に手を置かれた。振り向くと、笑顔を浮かべた達雄が居た。
「こんなことなら、3時に待ち合わせすればよかったわね」
「まあね。でも、今日の仕事がこんなに早く終わるとは思わなくてね」
「それで時間つぶしにここへ入ったの?」
「時間つぶしには違いないけど、ここへ入ったのは君を見かけたからさ」
和美と達雄は4時半からの映画を見る約束をしていた。達雄の仕事の都合もあり、4時に待ち合わせをしていたのだ。仕事が早く終わった達雄は時間を持て余し、駅の界隈をうろついていた。そして、このファーストフード店に入る和美を見かけたのだ。




