85.夢…
85.夢…
康祐はハッとして目を開けた。ほんの一瞬、転寝をしてしまったようだ。和美を寝かせた寝室をそっと覗いてみる。彼女はすやすやと眠ったままだ。康祐はリビングに戻ってソファーに座った。
「妙な夢を見た」
あまりにもリアルな夢だった。キッチンに行って水道の水で顔を洗った。すると、和美が起きてきた。
「主任が送ってくれたんですか?ごめんなさい」
「起きたね。よかった。それじゃあ、僕は帰るから。ちゃんと戸締りして寝ろよ」
「今何時ですか?電車の時間は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だから、気にしないでくれ」
和美は時計に目をやって青ざめた。
「すみません!こんな時間に…」
「大丈夫だから」
康祐はそう言って、和美を振り切るように部屋を出た。出てから「しまった!」と持った。この辺りはタクシーを拾えそうな場所ではないと気が付いたのだ。駅の方に向かおうにも、どっちへ行けばいいのかさえ見当がつかなかった。
和美は服を着替えてリビングでミネラルウォーターを瓶のまま一口飲んだ。
「なんてもったいないことを…」
せっかく、康祐が送ってくれたのにその間の記憶が全くないことに和美はがっかりしてうなだれた。そして、シャワーを浴びようと立ち上がった時、携帯電話が鳴った。
「まだ起きているかい?」
康祐からだった。
「はい。どうかしたんですか?」
「ああ…。駅の方へはどう行けばいいのかな?」
中野駅近くのファミリーレストランで康祐と和美は熱いコーヒーを飲んでいた。
「わざわざ送ってくれなくてもよかったのに」
「落合は近いけれど、何もないし。こっちに来るには道がややこしくて説明できないし。おかげで、主任とモーニングコーヒーが飲めてうれしいですよ」
既に、空はうっすらと明るくなってきた。そろそろ始発電車が走り始める。スウェット姿の和美が両手でカップを抱えて微笑んでいる。




