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79.退院

79.退院


 博子の両親は子供の傍を片時も離れない。穴が開くのではないかと心配になるくらい、一日中眺めている。

「それにしても可愛いのお。どっちかちいうと、岩崎の顔じゃな」

「そげなこともなかよ。康祐さんにだっちゃ、よう似とるよ」

 そんな会話を何度も何度も繰り返している。なにしろ、二人にとっては初孫なのだ。このまま福岡に連れて帰るのではないかと思うくらい、夢中になっている。

 康祐も、極力、仕事を早く切り上げて見舞いに来るようにした。念願の我が子なのだ。以前結婚していた理恵に子供は産まないと宣言されてから、半ば諦めていたところに授かった待望の我が子だ。しかし、今は博子の体調の方が心配だ。

「そんなに心配はいらないわよ。先生も順調だと言ってくれているし。週末には退院できるのよ」

 博子はあまりにも康祐が心配をするので、安心させるように報告した。

「まあ、本当に仲良しなのね。羨ましいわ」

 横で見ていた芙美香が言った。山崎は相変わらず仕事が忙しいらしく、生まれた当日以外は一度も病院に顔を出すことは無かった。


 週末、博子と芙美香は揃って退院した。午前中だったので、山崎も何とか都合をつけて付き添った。

マンションのエントランスまで一緒に来ると、1階に住んでいる山崎たちは、康祐たちに頭を下げるとそのまま廊下を進んでいった。山崎の後ろに隠れるようにしていた優香が康祐に向かって手を振った。

「あら、すっかり優香ちゃんになつかれたわね」

 博子は康祐にそう言うと、子供を抱いている康祐に代わって優香に手を振った。優香は恥ずかしそうに微笑むと、妹を抱いている芙美香の元へ駆けて行った。


 和美と達雄は週末になると、ほとんどの時間を一緒に過ごすようになっていた。いつもの様にファーストフード店で待ち合わせをして、映画を見て食事をする。それ馬いつものパターンだった。達雄と一緒に居るのは楽しいのだけれど、いつも少し距離を置かれているようで物足りないと和美は感じ始めていた。

「ねえ、今度は松井さんのお家へ遊びに行きたいなあー」

「ん?まあ、そのうちな」

 和美の問いかけに、どこか上の空で答える達雄の顔を眺めながら和美は感じ取っていた。この人は独身ではないのだと。







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