78.男の子と女の子
78.男の子と女の子
峰岸コンツェルンの耐震工事。新築工事ではないのだけれど、峰岸社長の要望で地鎮祭を執り行うことになった。本社ビルの屋上に祭事の会場が設営された。
刈初の儀で鎌を手にしているのは設計者であるティーエムアーキテクトの社長、高田だった。本来なら康祐の役目だったのだが、急きょ高田に代わってもらった。引き続き、施主の峰岸社長が穿初の儀において砂山に鍬を入れた。
祭事が終了した後の祝宴の席で峰岸が高田のそばにやって来た。
「佐久間君のところは昨日産まれたんだってね。これはめでたいことが重なって、この工事はきっとうまくいくに違いないね」
「もちろんです。佐久間も後で顔を出すと言っておりますので、またその時にでも祝ってやってください」
「ああ!そうするとも」
空いていた二人部屋に一人で入っていた博子。30分もしないうちに、芙美香が入って来たのには驚いた。初産の博子は出産するまでにかなり時間がかかった。ところが、2回目の出産となる芙美香は博子よりも後に産気付いたにもかかわらず、博子とほぼ同時に出産してしまった。博子は男の子を、芙美香はまた女の子をそれぞれ、同じ日の同じ時間に出産したのだ。
康祐が保育室のガラス越しに、二人並べられた赤ちゃんを見ていると、仕事を早めに切り上げた尾崎がやって来た。
「一緒に生まれたなんて、なんか運命的なものを感じますね。ところでどっちがうちの子ですか?」
「右側の女の子ですよ」
康祐がそう教えると、尾崎は頷いた。優香が生まれた時の顔とおんなじだと言って。
翌日になると、朝一番の飛行機で飛んできた博子の両親が病院に到着した。康祐は自宅のマンションを自由に使ってもらって構わないと、スペアキーを渡し、病院を後にした。
峰岸コンツェルンの本社に到着した康祐は既に始まっている祝宴の席に顔を出した。真っ先に気が付いた麻美がすぐに手招きをした。
「おめでとう!後で個人的にお祝いをさせてもらうわ」
麻美は康祐の耳元でそうささやいて、峰岸の元へ行くよう促した。
康祐が峰岸に地鎮祭に主席出来なかったお詫びを兼ねて挨拶に行くと、峰岸は康祐に長男が生まれたことを会場に居る全員の前で話し始めた。会場のいたるところか、おめでとうの声が湧き上がった。




