77.産まれる!
77.産まれる!
峰岸コンツェルンの耐震工事がいよいよ始まる。康祐は設計者としてティーエムアーキテクトを代表して地鎮祭に出席することになった。地鎮祭を控えた前の日に博子がお祝いをしようと言い、自宅で芙美香と優香を誘ってささやかなパーティーをやっていた。博子のお腹も芙美香のお腹もかなり大きくなっていた。
「今度の工事が始まると、康祐さんも忙しくなるんでしょう?そろそろ赤ちゃんも生まれるのに博子さん大変ね」
「芙美香さんだって、ご主人があまり家に居ないのに小さなお子さんを二人も抱えて大変じゃない?」
康祐のお祝いだと言っても、妊婦が二人も居るとこんな話ばかりになってしまうのは仕方がない。康祐はそう思いながら、笑って受け答えをしていた。康祐の膝の上には優香がちょこんと座っている。
「優香ったら、すっかり康祐さんになついちゃったわねえ。これじゃあ、誰が父親だかわからないわね」
芙美香のそんなセリフに康祐は一瞬ドキッとした。そんな康祐のことなどお構いなしに博子は芙美香と話を続ける。
「ちょうどいいわよ。パパの練習が出来て…」
その直後、博子が急に腹を押さえてうずくまった。
「どうした?大丈夫か?」
心配そうに博子の顔を覗き込む康祐。
「あら、大変!始まったんじゃない?」
どうやら陣痛が始まったらしい。狼狽える康祐をよそに、芙美香が産婦人科に電話をして、受け入れのお願いをしている。電話を切ると芙美香がOKの合図をした。
「取り敢えず、体だけ運びましょう。荷物は後からでもなんとかなるから」
康祐はうなずいて博子を抱きかかえるようにして部屋を出た。なにしろ、産婦人科の病院は康祐たちのマンションの目の前だ。芙美香たちも一緒に来てくれた。博子は空いていた二人部屋の病室に入れられた。
「生まれるまでしばらくかかりますから、その間にご主人はもろもろ準備しておいてくださいね」
看護師にそう言われて、康祐は先ず、高田に電話をした。明日の地鎮祭に出られなくなると。そんなことをしていると、今度は横に居た芙美香が急に顔をしかめて腹を押さえた。
「つられてウチのも出てきそうだわ」
「えっ!」




