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73.久しぶりの休日

73.久しぶりの休日


 芙美香は康祐と博子を快く迎えてくれた。生憎、旦那は仕事で留守にしていた。

「ご主人はジェノアの料理人だそうで」

「ええ。昨日、博子さんから聞きました。主人のお店にはよくいらっしゃるんですって?」

 芙美香はお茶をいれながら返した。娘の優香は芙美香の足もとに隠れる様にして康祐たちの様子をうかがっている。

「可愛らしいお嬢さんですね」

 康祐が言うと、芙美香は笑った。

「人見知りが激しくて。そろそろ保育園に入れようと思うんだけど、心配で。佐久間さんのところが生まれたらお姉さんらしくなるといいんだけど」

 芙美香がお茶を運んでくると、優香は芙美香の後ろに隠れて指をくわえている。視線の先にはお茶菓子で出されたクッキーがあった。康祐はそれを一つ取って優香に差し出した。優香は一瞬、手を出したが、すぐにひっこめて母親に伺いを立てる様に芙美香の顔を見た。芙美香が頷くと、嬉しそうに笑みを浮かべて康祐の手からクッキーを受け取った。それが、優香の垣根を取り払ったかのように、優香は康祐のそばへやって来て、膝の上にちょこんと座った。博子が優香の頭をなでると、自分が持っていたクッキーを博子に差し出した。

「まあ!本当に可愛い子ね」

 博子はクッキーを受け取ると、代わりに他のクッキーを優香に与えた。

「この子ったら、どうしてかしら?なぜか男の人が好きなのよ」

「それは、お父さんがやさしいからじゃないかしら?」

「お父さんといる時間はあまりないんだけどね…。」

 芙美香はそう言って、少し寂しそうな表情で優香を見た。康祐は時計を見た。午後5時を回っていた。そこで思いついたように提案した。

「昨日のお礼に今日は僕たちがご馳走しますから、今夜は一緒に近くのファミレスにでも行きませんか?」

「そうしましょうよ。優香ちゃんも喜ぶわよ」

 博子も賛成した。芙美香は最初、遠慮していたが、康祐の膝の上で笑っている優香の顔を見て誘いを受けることにした。


 和美は新宿に来ていた。

 昼過ぎには起きて、軽い食事を取った後、以前から見たかった映画を見に来たのだ。なのに、映画の前半で睡魔に襲われると抵抗できずに眠ってしまった。場内が明るくなって目を覚ました時には既にほかの客は席を立った後だった。

「やっと起きたね」

 眠っていた和美の体を隣で受け止めいていたこの男以外は。







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