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71.つかみどころがない

71.つかみどころがない


 康祐は慌てて体を起こした。

「どういうつもり?」

「博子さん、ずいぶんお腹が大きくなりましたね。最近してないんじゃありませんか?」

「何を言うんだ?」

「私ならいつでもお相手をしてあげますよ」

 康祐は返す言葉が出てこなかった。

「なんてね。ごめんなさい。ちょっと主任と博子さんの愛の巣が見てみたかったんです」

「だったら普通にそう言えばいいじゃないか。いつでも歓迎するのに」

「お水を1杯いただけますか?それを飲んだらおいとまします」

「今からじゃ終電に間に合わないだろう」

「タクシーで帰りますから」

 和美はグラスの水を飲み干すと、康祐の頬にキスをして部屋を出て行った。そこへ、博子が寝室から出てきた。

「あら?彼女は?」

「タクシーで帰ると言って出て行った」

「そう…」


 康祐のマンションを出ると、和美は宮下に電話した。宮下の住まいは亀戸。確か、一人暮らしのはずだ。宮下はすぐに電話に出た。

「君か!登録されていない番号だったから出ようかどうしようか迷ったんだけど」

「もう、寝てましたか?」

「いや、地元で飲み直していたところだけど」

「お邪魔してもいいですか?」

「お邪魔って、君は今どこに居るんだ?」

 和美は居場所を告げて電話を切ると、タクシーを拾い亀戸駅へ向かわせた。亀戸駅に着くと駅前で宮下が待っていた。

 そこはカウンターだけのバーだった。客は宮下の他に年輩の男が一人居るだけだった。カウンターの中にはマスターらしい男と女性のバーテンダーが一人。

「なんか落ち着くわね」

「そうだろう!俺の隠れ家と言ったところかな」

「ふーん」

 和美は宮下に体を寄せて頭を宮下の肩に預けた。







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