68.意外な縁
68.意外な縁
芙美子は帰って来るなり、スーパーの紙袋を旦那に預けると、お茶をいれて博子のものへやって来た。
「うちの人ったら何も気が付かなくてすみません」
「いいんですよ。なんだか忙しそうだし」
「ああ見えても、うちの人、コックなんですよ」
「そうなんですか!じゃあ、いつも旦那さんが?」
「それならいいんですけど、普段は仕事なので。今日はたまたま非番なんですよ」
それもそうだ。コックが家で食事の支度をしていたら、いつ働くのだと博子は思った。その貴重な日に呼んでもらえるとは運がいい。どんな料理が出てくるのか楽しみだ。
和美の歓迎会は博子の時と同じワインバーで行われた。会場に入ると、一緒に来た連中からは主役だということで中央の席を進められたが、和美は準備のために一足早く来ていた康祐の隣に座った。
「主役なんだから真ん中の方に座った方がいいんじゃないか?」
「主役なんだから好きなところに座らせてください」
そう言うと、和美は康祐の顔を見てにこっと笑った。
「あーあ、新人の女の子はみんな主任が持っていくなあ」
営業の宮下だ。宮下は以前、博子の歓迎会で博子にアプローチしようとして、けんもほろろに玉砕した。そして、産休に入った博子に代わって配属された和美を見て一目惚れしたのだ。もちろん、宮下は独身。28歳だ。
「あー、そう言ういい方するのって可愛くないですよ」
和美にそう言われて、宮下は「またか」そう思いながら、グラスのワインを一気に飲み干した。
さすがプロの料理人だ。出された料理は味だけでなく、盛り付け方も家庭料理の域をはるかに超えていた。ちょっとしたレストランでもここまでのものは見たことがない。
「旦那さんって、どちらで働いているの?」
「新宿のジェノアっていうイタリアンです」
「えっ?それって、プラザホテルの?」
「ええ、ご存じなんですか?」
知っているもなにも、そこは麻美の行きつけの店だ。博子も何度か招待されたことがある。博子は感心して、旦那の顔を眺めた。




