64.神様からの贈り物
64.神様からの贈り物
康祐はそろそろ子供が欲しいと思っていた。それは博子も同じだった。ところが、なかなか妊娠しない。
「そんなに気にすることはないよ。子供なんて神様からの贈り物なんだから」
「私だって子供は欲しいのよ。そして、私はそんなに悠長に待っていられるほど若くは無いんだから」
そう言って立ち上がった時、博子は吐き気がして洗面所に駆け込んだ。康祐は心配そうに博子の背中をさすった。
「康ちゃん、ゴメン。私、今日は病院に寄ってから出社するわ」
「無理するなよ。社長には僕から言っておくから今日はゆっくり休んだ方がいい」
「大丈夫。病気ではないと思うから」
出社した康祐は高田に博子を休ませると告げた。
「そうか。分かった。それよりちょっと来てくれ」
高田に従って応接室に入った康祐の前には麻美と見知らぬ男が既にソファに座っていた。康祐の顔を見ると麻美が男を紹介した。
「こちら、峰岸コンツェルンの峰岸社長よ」
峰岸コンツェルンと言えば、国内屈指の総合開発会社だ。麻美は峰岸社長とは幼馴染だと言う。この度、本社ビルの耐震工事を計画しているということでティーエムアーキテクトを紹介したのだと言う。
「佐久間さん、主任になったんですって?期待してるわよ」
「佐久間くん、この仕事は峰岸社長が名指しで君を指名してくれたんだ」
高田はそう言って康祐の肩をポンとたたいた。
「いやね、麻美ちゃんがいつも君の話をしているのでどんな男か見てみたくてね」
「そんな…。僕なんかまだまだですよ。精一杯やらせてもらうのでよろしくお願いします」
康祐がそう言うと、峰岸は右手を差し出した。
康祐と高田が二人を見送るためにエレベーターホールまで出ていくと、博子がエレベーターから出てきた。
「あれっ?」
驚いた顔の康祐に、博子はバッグから母子手帳を取り出して見せた。
「おめでとう!益々頑張らないとね」
麻美は康祐にそう言ってから博子を抱きしめて祝福した。




