63.あなたが考えることなんてみんなお見通しよ
63.あなたが考えることなんてみんなお見通しよ
この日、康祐は朝から現場廻りで事務所に戻ったのが夕方だった。机の上には宅配の品が置かれていた。康祐はそれを手に取って机の下で梱包を解いた。そして、博子に見つからないようにカバンにしまった。
今日は博子の誕生日だ。仕事が終わった後、一緒に食事に行くことになっている。終業のチャイムが鳴ると、康祐は立ち上がって博子の方を見た。
「いつでもいいですよ」
博子の口元がそう動いたのが康祐には判った。
二人がやって来たのはあの定食屋だった。康祐は迷わず、カツカレーの大盛りを頼んだ。
「大丈夫なの?」
博子は心配そうに言う。
「この前は油断していたからなあ。今日は絶対リベンジしてやるさ」
「そう、それは楽しみだわ。ちなみに、社長は同じものをペロッと平らげたわよ」
博子はビーフシチューを頼んだ。これもまた絶品だということを博子は知っていた。博子がシチューを食べ終わるのと同時に康祐もカレーを食べ終えた。
「どんなもんだい!」
「うん!これで康ちゃんも一人前の男ね」
康祐は満足して店を出た。
「さて、これからが本番だ。少しお酒を飲みに行こうか。」
「本番って?」
「いやあ、なんでもない」
二人は大手町のワインバーでグラスを合わせた。
「ハッピーバースデー!」
康祐はそう言って、カバンの中から取り出したものを博子に渡した。
「まあ、判っていたけれど、嬉しいものね」
「えっ?」
「バカねえ、あなたが考えることなんてみんなお見通しよ。それ、ロクシタンのハンドクリームね?」
「ど、どうして…」
「誰が宅配便を受け取ったと思ってるの?」




