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6.引き継ぎ

6.引き継ぎ


 35歳、バツイチ。子供なし。佐久間康祐は実際の年齢より落ち着いて見える。悪く言えば老けているのだけれど、年寄りくさいところはない。性格は温厚で、勤勉な印象を受けた。そして、一緒に居る間は常に博子を気遣っているようだった。第一印象は合格だ。博子はそう思った。


 早速、次の日から博子は出社した。制服は無いが、出来ればスーツが好ましいということで紺のスーツで出社した。

 朝礼で高田がみんなに紹介してくれた。みんなといってもこの日、社内に居たのは社長の高田と佐久間の他には、営業の二人、寿退社が決まっている事務の諌山(いさやま)沙織(さおり)と設計士が5人ほどだった。他の社員は現場に直行しているということだった。

 朝礼が済むと、諌山沙織との引き継ぎ業務に入った。引き継ぎといっても、特に難しい仕事は無かった。

 ティーエムアーキテクトでは、それぞれの担当者がいわば小さな会社みたいなもので、物件ごとに決裁権を持っている。それを統括しているのが主任の小田切だ。

 小田切は強面の顔をしているが、人当たりのいい親分肌の男だった。

 博子の仕事は伝票のチェック、支払いや入金の管理、そして、顧客対応が全体の半分を占め、あとは各担当者の雑用だということだった。


 日中は社員の出入りが激しく、入れ替わり立ち替わり、新顔の博子を見にやって来た。そして、諌山沙織にも「寂しくなる」だの、「たまには遊びに来い」だの声を掛けて行った。

 諌山沙織は26歳。ロングヘアで色白の可愛らしい“女の子”といった感じだった。ここに努めて4年目だという。男性社員達の接し方を見ていて、彼女はこの会社のアイドル的存在であることがよくわかった。しかし、博子は自分が彼女と同じようなアイドルに収まろうとは思っていなかった。

 そんななかで、博子は一日社内に居た佐久間の様子をこっそり観察していた。佐久間は新規物件のプレゼンテーションのための資料を作成しているとのことだった。そして、佐久間が手掛けたプランがこの物件を受注する決め手になったのだとも聞いていた。

 夕方は博子の歓迎会をやることになっていたので、ほとんどの社員が戻って来た。残りの社員は店に直接行くということだった。

 そこは昨日、三人で行った寿司屋とはうって変わってモダンな感じのワインバーだった。この店を選んだのは幹事の佐久間だった。

 博子の両側には高田と小田切。幹事を任された佐久間は向かい側の端に座っている。そして、佐久間の横には諌山沙織…。




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