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59.年を取っても女は女

59.年を取っても女は女


 離婚届を差し出したのは房子の方だった。既に印も押してある。小田切はテーブルに置かれたそれを手にとって、房子の顔を見た。

「ごめんなさい。あなたに不満があるわけではないのよ、私も女だったみたい。こんな年になっても恋をするものなのね。あなたとの間に子供が出来なかったことが寂しく思えたこともあるけれど、今にして思えばそれは幸いなことだったのかもしれないわね」

「恋?」

「ええ、そうよ。笑わないでね」

「笑ったりなんかするもんか。仕事柄とはいえ、君にはずいぶん寂しい思いをさせているのは分かっていた。君がそうして新しい生きがいを見つけたのなら、僕は喜んで応援するよ」

 相手はテルさんという人なのだろう。それにしても意外だった。そこまでだったとは。ただのカラオケ友達くらいにしか思っていなかったから。

「あなたも誰かいい人が居るのなら、もう遠慮などしなくてもいいんですよ」

 最後に房子はそう言って小田切の手を握りしめた。やはり、うすうすは感づいていたのだなと小田切は悟った。しかし、そのことが離婚の原因では無いことに安堵した。


 新宿の高層ホテルの一室。この日、理恵は高橋と過ごしていた。既に日付が変わろうとしている。

「ねえ、私のどこがいいの?」

 体を合わせた後、理恵がタバコに火を付けながら言った。高橋からは返事がない。理恵が高橋の方を見ると、いつの間にか寝息を立てている。理恵は苦笑してベッドから出た。

 高橋が理恵を愛してくれていることは理恵にも十分わかっていた。けれど、理恵には物足りなかった。最近になって特にそう感じていた。

「愛されているだけじゃ、ダメなのよね…。私が愛せる人でなければやっぱり面白くないわ」

 理恵は静かに服を着て部屋を出た。


 康祐は昼休みの間中、インターネットのショッピングサイトを眺めていた。そこへ博子が近づいて来た。康祐は慌ててノートパソコンのふたを閉じた。

「あらどうしたの?いやらしいサイトでも見ていたのかしら」

「まあ、そんなところだ」

博子に感づかれてはまずい。もうすぐ博子の誕生日なのだから。








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