50.それぞれの想い
50.それぞれの想い
金髪のアフロヘアーは相変わらずだ。
湯川が“天貞”に顔を出すと女将が声をかけた。
「湯川さん、いらっしゃい。待ち合わせ?」
「まあね」
湯川はカウンター席に座ると、生ビールとシメサバを頼んだ。程なく店のドアが開いた。入って来た客を確認すると、女将に告げた。
「連れが来たからテーブルに移るね」
「どうぞ」
テーブル席を指しながら、湯川は自分のグラスを持って席を移動した。理恵は頷いてテーブル席の方へ歩いてきた。
「お久しぶり」
「驚いたよ。理恵さんの方から誘ってくるなんて」
「そう?別にあなたに会いたかったわけではないのだけれど、このお店が気に入ったから」
まあ、そういうことにしておこうか…。湯川は苦笑しながらグラスを持ちあげた。
「今頃、二人でディナーの際中かしら」
新宿のバーで麻美は夫の直彦、それに高田と三人で飲んでいた。
「二人って?」
直彦が聞いた。
「うちのリフォームをしてくださった佐久間さんよ。新婚旅行でグァムなのよ」
「そうだったのか。彼はよくできるようだね」
直彦は高田に告げた。
「いえ、麻美さんが鍛えてくれたおかげですよ」
「高田さん、変なことは言わないで。主人が誤解するじゃない」
「なんだ、お前、佐久間さんを誘惑したのか?」
直彦にそう言われて麻美は吹き出した。昔の麻美なら、言い訳をしたのだろうけれど、今は直彦の冗談を笑って受け止めることが出来る。これも康祐のおかげだ…。改めてそう思った。
「このお肉すごいボリュームね。食べきれるかしら」
運ばれてきたメインのステーキを前に博子は目を丸くしている。そんな博子の顔を康祐は楽しそうに眺めた。




