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48.特別なメニュー

48.特別なメニュー


 康祐は飯を食う前に寄るところがあると言った。そして、車のダッシュボードから取り出した封筒を博子に渡した。中に入っていたのは婚姻届の用紙だった。必要なところは既に記入されている。

「いつの間にこんなもの…」

 博子は驚いた。婚姻届は新婚旅行から帰ってきて時間のある時に出せばいいと思っていた。

「本番の式は来月だけど、今月中にこれを出しておかないと、6月の花嫁にはならないでしょう」

 康祐はそう言うと、運転中なので、ちらっとだけ博子の方を向いてウインクをした。

「でも、印鑑持ってないよ」

「そんなものはどこかで買えばいい」


「おめでとうございます」

区役所の窓口の男性が二人に祝福の言葉を掛けてくれた。二人は感謝の気持ちを口にして区役所を後にした。

「さあ、飯を食いに行こうか!実はこの近くの店を予約してあるんだ」

 そう言うと、康祐は区役所の駐車場に車を置いたまま歩き出した。博子もそれに従った。


 康祐が連れてきたのは、区役所の通りを挟んだほぼ隣“レストランくじらさわ”という店だった。康祐はよくここを仲間内のパーティーなどで利用していて、オーナーとも顔見知りだと言う。今日はお任せで特別のコース料理を頼んだという事だった。

 料理は全部で7種類。概ね美味かったが、博子が一番気に入ったのはビーフシチューだった。出された料理は二人ですべて平らげた。最後にオーナーが自らデザートを持ってやって来た。それを目にした博子は呆気にとられた。ワゴンに乗せられて運ばれて来たのは、まさにウエディングケーキだった。

「私、これでも充分だった。別に結婚式なんか挙げなくても…」

「そうはいかないよ。結婚って、本人同士だけの事ではないんだから」

 そう言う康祐が少し物憂げな表情を浮かべた。もしかしたら、理恵さんとの結婚はみんなに祝福されてのものではなかったのかしら…。一瞬、そんなことが博子の頭をよぎったけれど、満足そうに博子に微笑みかける康祐を見たら、すぐにどこかへ飛んで行ったしまった。





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