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47.ジューンブライド

47.ジューンブライド


 家族も媒酌人も居ない。参列者はここを段取りしてくれたと言う、康祐の知り合いの家族だけだった。康祐よりも少し年配のご主人と同年代の奥さん。それに小学生くらいの女の子にまだ小さな男の子。

 神父がお決まりの文句を口にしている。博子の隣では康祐が恐縮した表情で体をこちこちに固まらせている。博子はそんな康祐の姿が可笑しくて、ずっと康祐の横顔を眺めていた。だから神父の話など博子の耳には届いていなかった。

「…誓いますか?」

 神父が発した言葉に対して、康祐が声を震わせながら答えたときはびっくりした。

「はい!一生懸命誓います」

 更に、一生懸命という言葉に、思わず博子は笑ってしまった。神父にたしなめられて真顔に戻したけれど、当の神父がクスクス笑っている。博子がふくれっ面をすると、神父は咳払いをして博子に向き直った。

「あなたは康祐さんを夫とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しい時も、死が二人を別つまで愛し続けることを誓いますか?」

「はい。誓います」

 博子はサラッと答えて康祐の方をちらっと見た。康祐は博子の顔を見つめていた。涙が溢れんばかりに目を潤ませて。

 康祐は指輪を用意していなかったことを博子に詫びた。けれど、博子はそんなことなど気にはしていなかった。そして、神父に促されるままにキスをした。


 康祐がこんなに緊張するとは驚きだった。これでは本番が思いやられる。けれど、そんな康祐の一面を目の当たりにしたことで博子は益々康祐のことが好きになった。

「なんだかとても腹が減ったよ」

 緊張から解放された康祐が両手で伸びをしながら言った。

「別の人みたいだったわ」

「そりゃあ、初めてだもん。緊張するって」

「あら、結婚は二度目でしょう?」

「そうだけど、式を挙げるのは初めてなんだ」

「えっ!そうなの?」

 博子は康祐の前の妻、理恵のことを思い浮かべて、意外だと感じた。けれど、そんなことはどうでもいい。この人が初めて結婚式を挙げるのが自分なんだと思うと優越感にも似た喜びが込み上げてきた。





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