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45.メニューは純和風

45.メニューは純和風


 博子が料理は苦手だという事を康祐は承知している。一緒に暮らし始めて、家で食べる食事はいつも康祐が用意していた。

 結婚しても博子は今の仕事を続ける。康祐と同じ職場で働く。とはいえ、残業が多い設計士の康祐に比べたら事務の博子は概ね定時に帰宅することが出来る。博子が夕食の支度をして康祐を待つ。博子としてはそれが理想なのだと思っている。

 料理教室に通い始めたのは、もちろん、康祐との結婚を意識したからだ。今では一般の家庭の食卓に並べられるような料理なら一通り作ることが出来る。自信がないわけではないのだけれど、実際に康祐に食べてもらうものを作るとなると、無意識のうちに緊張する。


 メニューはこんな感じだ。金目鯛の煮つけ、ジャガイモと玉ねぎの味噌汁、厚揚げといんげんの煮物、ナスの一本漬け、冷やしトマト、鳥とごぼうの炊き込みごはん。

「いいなあ。こういうの。僕はどちらかというと、洋食ばかりで和風の煮物なんかは作れないから。派手ではないけれど、とても安心する料理だよ」

 食卓に並んだ博子の料理を眺めながら、康祐はしきりに感心した。

「本当に?なんだか地味な料理ばかりで恥ずかしいんだけど…」

「いただきます!」

 言うが早いか、康祐はすぐに箸を取り、金目鯛の煮つけを一口つまんだ。

「美味い!」

 康祐は大袈裟なくらいの表現で博子の料理を褒めてくれた。

「よかった…」

 博子はホッとして胸を撫で下ろした。


 食事の後片付けをしていると、康祐が何気なく呟いた。

「やっぱり6月がいいのかなあ…」

「何のこと?」

「ジューンブライドって言うだろう?」

「バカねえ!もう式の日取りは決まっているのよ。そりゃあ、憧れるけどね」

 そう、二人の結婚式は7月8日の大安の日に決まっている。既に招待状も発送されているのだ。

「じゃあ、二人だけで教会に行こう。もちろん、君はウエディングドレスを着て」

 何を言っているのやら…。博子はそう思ったが、康祐はことのほか真剣に考えているようだった。




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