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41.楽しい時間

41.楽しい時間


 週末の連休を利用して博子は福岡に戻っていた。両親に結婚の報告をするためだ。

「本当やったとね」

 そう言ったのは博子の母親だった。以前、博子から恋人がいると聞かされた時には福岡に戻るのが嫌で嘘をついているのだと思っていたからだ。

「式の日取りやらは決まったとね」

「これから考えると。けど、康祐さんはバツ一なき式やらは挙げんかもしれんったい」

「ほんなこつや!そげなこと言うたっちゃ、あんたは初婚やき、ちゃんとせなつまらんばい。母さんはあんたの花嫁衣裳ば着たとこを見たか」

「良かろうもん。今はいちいち式とか挙げんごとあるけん」

 父親は面倒臭そうに、今更、花嫁衣装もなかろう。そう言ってタンスの引き出しから封筒を出した。博子はそれを受け取って中身を見た。博子名義の預金通帳が入っていた。

「式は挙げんでん、色々かかるっちゃろう?」

 預金高は三百万だった。10年以上も前から、毎月、二万円ずつ積み立てられていた。

「生きとううちに孫が見らるるかのう?」

 父はボソッと呟いて冷蔵庫からビールを持ってきた。


 康祐は若杉家の工事が始まって、週末も打合せや現場の監理で休む暇がなかった。麻美からはお祝いだと言ってビンテージもののワインを送られた。ワインの値打ちなどは判らない康祐でも、それがかなり値の張るものだとは想像していた。けれど、まさか10万円以上もするものだとは思っていなくて、ワイン通の高田から値段を聞いて驚いた。

 すでに会社にも報告をしていたので、同僚たちも祝福の言葉や憎まれ口を浴びせかけてきた。


 博子が福岡から戻ると、具体的な話をするようになった。康祐は二度目だけれど、博子が初婚なので、結婚式は普通に挙げることにした。康祐の仕事が忙しくなって来たので、二人そろって打合せに出掛けることはなかなかできなかったけれど、それでも博子はそんな時間が楽しくて仕方なかった。もちろん、仕事は続けることにしていたので、そっちに支障のないように上手くスケジュールを調整した。この頃、博子は既に康祐のマンションに同居していた。


 仕事に行くときは自転車で東大島まで出て、今まで通り都営新宿線で九段下まで通った。

「博子?」

 車内で声を掛けられた。声の主は以前付き合っていた妻子持ちの男だった。







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