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37.下心

37.下心


 湯川は博子が座ったカウンター席の向かい側に居た。そこにちょうど湯川が頼んだ食事が運ばれてきた。どうやらメンチカツ定食のようだ。

「よく来るんですか?」

 湯川に聞かれ、博子は店に入るのは初めてだと答えた。

「メンチですか?大きいですね」

 博子が店頭で買って帰るメンチカツに比べて湯川が頼んだ定食のものは2倍くらいある大きなサイズのものだった。

「ここのメンチは絶品ですよ。定食だと、このサイズだから食べごたえがありますよ」

 湯川そう言って博子にも勧めた。博子はがっつり食べたいわけでもなかったが、ここのメンチがおいしいのは知っていたので、同じものを貰うことにした。


 康祐は午後から担当している現場を何件か回って事務所に戻った。7時を少し過ぎていた。既に博子は退社していた。

「おい、こんな時間に戻ってきて大丈夫なのか?早く帰った方がいいんじゃないのか?」

 声をかけてきたのは高田だった。

「ああ、メールの確認だけしておきたかったもので」

 康祐はメールの着信に特に重要な内容のものがないのを確認すると、パソコンの電源を落とした。

「岩崎君と昼飯を食ったよ。よほど嬉しいことでもあったのか今日は1日中そわそわしていたぞ」

「プロポーズしたんです」

「そうか!」

「ハイ、今からこれを渡しに行ってきます」

 そう言って康祐は指輪が入った箱を高田に見せた。高田はうなずきながら微笑んだ。

「おめでとう!それから、麻美さんから電話をもらったよ。いい人を紹介してもらったって」

 そう言うと、高田は手を振って事務所を出て行った。


 湯川はコーヒーを飲みながら博子が食べ終わるのを待っているようだった。

「ねえ、この後“純”に行かない?」

 湯川に誘われた。そう来るだろうと思っていた。博子はOKした。その後、湯川をがっかりさせることになるかもしれないとも思ったが、湯川に変な下心は感じられなかったから。




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