34.本当の理由
34.本当の理由
博子は昨夜のことを思い返していた。
康祐と出会ってまだ数ヶ月しか経っていないのにプロポーズだなんて…。しかも自分から。焦り過ぎかしら…。いや、そんなことはない。確かに博子は結婚に関して言えば未経験だ。それでも、結婚がどういうものなのか知っている康祐が受け入れてくれたのだから間違ってはいない。
昨夜、手渡された康祐の部屋のカギ。それを眺めながら、自然に表情が緩んだ。
そして、康祐はこう言った。
「若杉さんとのことはちゃんとけじめをつけて来るよ」
博子はどういう風にけじめをつけるのかまでは聞かなかった。康祐がそうすると言うのだから自分が口を出すことではない。自分はただ信じていればいい。そう思った。康祐なら、信じるに値する男だと。
麻美は康祐をベッドに押し倒すと自分も裸になった。そして、康祐の上に重なった。しばらく康祐の顔を見つめていたが、急に笑いだした。
「なんだかつまんないわ」
そう言って体を離すと、おどけたように語りかけた。
「年の割にはきれいでしょう。こんなにきれいな体をしているのに、ウチのダンナときたら、触れてさえくれないのよ…」
康祐は起き上がり、麻美の体を見た。眼を逸らすのはかえって失礼だと思ったからだ。そして、しなやかな麻美の腰の辺りを両手で抱きかかえるように触れた。
「インポテンツなんだそうです」
「えっ?」
麻美は驚いた表情を浮かべ康祐を見た。康祐は話を続けた。
「高田から聞きました。若杉さんは数年前からそうなってしまったらしいです。奥さんをがっかりさせたくないから、浮気をしているように装って、奥さんが他の男と関係を持つことで、慰められるのならと、考えたみたいですよ」
「そんなバカな話、あるわけないじゃない」
「愛しているんですよ」
康祐の話を聞いて、麻美はその場に崩れ落ちた。康祐は麻美を抱きかかえてベッドに横たえると、今度は自分が上になって麻美の髪を撫でた。麻美は康祐の首に手をまわし、唇を重ねた。




