31.私のこと好き?
31.私のこと好き?
博子が店の外に出て待っていると、康祐はすぐにやってきた。交差点手前のスーパーマーケットの前で博子の姿を確認してからはコンビニまで走ってやって来た。
「遅くなっちゃった…。ごめん」
康祐は息を切らしながら、博子に頭を下げた。
「お仕事はうまくいったの?」
博子には仕事のことより、気になることがあったのだけれど、面と向かって聞くわけにもいかないからそう尋ねた。
康祐はそう聞かれて少しためらった様子だったが、すぐに、取り繕って、うまくいったと答えた。博子はそんな康祐の様子を見逃さなかった。
参ったなあ…。康祐はどうしたものか迷っていた。若杉の仕事を社長が自分に任せた理由について、正直に言うべきなのだろうが、博子には余計な心配をかけさせたくはない。
「とりあえず、飲み直さないか?」
「もう、遅いよ。明日も仕事だし」
博子の態度がちょっとおかしい。そういえば、昼間、麻美から電話がかかってきてから、そんな感じが見受けられた。やっぱり、きちんと話しておいた方がいいのかもしれない。
「話しておきたいことがあるんだ」
深夜の2時になろうとしているのに、店はけっこう混み合っていた。
康祐と博子はコンビニエンスストアの2階にある居酒屋に来ていた。ほとんどの席が埋まっていて、二人は入り口から一番手前の席に通された。
「若杉さんの仕事のことだけど…」
康祐は若杉の奥さんのこと、社長が自分に指呼の仕事を任せた理由、すべてを博子に話した。
「それで?」
「えっ?」
「どうして私にそんなことを話すの?」
「誤解されたくはないから」
「何を誤解されるというの?誤解されるようなことをするつもりなの?」
「そんなつもりはないさ」
康祐は博子をしっかりと見据えながら話しているのだが、博子は視点が定まっていない。そんな博子が急に康祐を見つめて口を開いた。
「ねえ…。私のこと好き?」




