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30.割り切ること

30.割り切ること


 湯川とは“シメ”のラーメンを食べて別れた。ただ別れた。お互いに電話番号やアドレスの交換もすることはなかった。大島八丁目の交差点まで一緒に行き、その後、湯川は七丁目の方へ歩いて行った。

 博子は横断歩道を渡って、コンビニエンスストアに入った。買いたい物があるわけではないのだけれど、そのまま帰る気になれなかったのは康祐のことが気になっていたからだ。もしかしたら、今頃、一人で“純”に行っているかもしれない。そうだとしたら、ママが私たちのことを康祐に話しただろうか?

 博子は携帯を取り出すと、康祐の番号を押した。


 康祐は曜子に勧められてサザンオールスターズの曲を歌っていた。その時、カウンターに置いていた携帯電話が鳴った。ディスプレイには“高田”と表示されていた。

「ちょっとゴメン」

 康祐はマイクを置いて、店の外に出た。


 康祐の携帯は話し中だった。まだ仕事をしているのだろうか…。時計を見ると11時を回っていた。博子は電話を切ると雑誌に手を伸ばし、うわの空でページをぱらぱらとめくった。


 電話は康祐が勤めている設計事務所ティーエムアーキテクトの高田社長からだった。

「どうだった?」

 高田は今日の打合せがどうだったのか聞いている。本来なら、いくら知り合いの案件だからといってわざわざ聞いてくるようなことではない。それをわざわざ聞いて来たということは麻美のことなのだろう。そう考えた康祐の推測は当たっていた。それを承知で高田は康祐に担当を任せたのだと言った。

「まあ、岩崎君には申し訳ないと思ったが、うまくやってくれ。麻美さんは遊びだから割り切ることだ」

「解りました…」

 言い終わるより先に高田は電話を切った。困ったなあ…。そう思って康祐も電話を切ると、博子から着信が入っていた。康祐はすぐに博子に電話を掛けた。

「もしもし?博子?今どこ?何してる?」

「そんなに一度に聞かれても困る…。でも、今は東大島のコンビニにいるよ」

「分かった。すぐに行くから待ってて」




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