24.見栄と後悔
24.見栄と後悔
正午を告げるチャイムが鳴った。
「さてと…」
康祐は立ち上がり博子の方を見た。博子も康祐の方を見て手を振っている。康祐は博子の方へ歩いて行った。途中で小田切が康祐に声をかけた。
「今日は弁当じゃないのか?」
「ちょっと寝過ごしてしまって作る時間がなかったものですから」
「そうか。独り者はそういう時に不便だな。早く新しい嫁さんを貰えよ」
小田切はそう言うと康祐の肩をポンとたたいて、娯楽室へ向かった。小田切も弁当持参組なのだ。そして、彼の弁当はもちろん愛妻弁当だ。
博子はいつもの定食屋に康祐を連れて行った。店に入るなり、康祐は目を丸くした。
「いつもこういうところで昼飯を食べているの?」
「安くてボリュウムもあるし、美味しいのよ」
そう言って博子は厨房前のカウンター席に座った。康祐も博子の隣の席に着いた。
「意外だなあ。もっと洒落た店に連れてきてくれるのかと思っていたけど…」
「あら、そういうお店の方がよかったかしら」
「いや、見直したよ。やっぱり君は何かが違う」
「何かって?」
「まあいい。それより何がお奨めなんだい?」
博子は康祐が何を言いたかったのか気にはなったが、お腹の虫が考えることを許してくれなかった。
「そうね…」
博子はミックスフライ定食、康祐はカツカレーの大盛りを頼んだ。
「えっ?大盛りはやめておいた方がいいわよ」
「なんだよ、僕だってけっこう量は食う方なんだぞ」
康祐はそう言ったものの、博子の前で男らしいところを見せようと多少見栄を張ったのだ。5分後にはそのことを後悔した。隣で博子がクスクス笑っている。
康祐の前に出された大盛りのカツカレーには大きなカツが丸々2枚分乗っていて、そして、それらは直径40cmはあろうかという大皿に山盛りで盛られていたのだ。
「だから言ったでしょう!先輩の言うことはちゃんと聞くものよ」




