20.もう一つの人生
20.もう一つの人生
理恵は康祐と離婚した後、独立した。務めていた大手の広告代理店で、担当していたクライアントの営業企画部長が何かと面倒を見てくれた。
「ねえ、たまには奥さんのところに帰らなくてもいいの?」
理恵はベッドの中でタバコに火をつけながら言った。
「何かのCMで言っていたじゃないか。亭主元気で留守がいいって」
何も身に着けずにシャワールームから出てきた高橋義明は冷蔵庫から缶ビールを1本取り出すと、一口すすって理恵の前に立った。
「まあ、もったいない。こんなに美味しそうなものがあるのに興味がないのかしら」
理恵はそう言うと、高橋の立派なものにタバコの煙を吹きかけた。すると、高橋はベッドに腰掛けて言った。
「快楽より名誉がお好みなんだろう」
高橋の妻は娘さんの学校でPTA会長をやっているそうで、何人かの取り巻きたちと一緒に毎夜、打合せだと称してカラオケ三昧なのだとか。
理恵が高橋とこういう関係になったのは独立後、1年ほど経ってからだった。
独立当時は世話にはなったものの、仕事を軌道に乗せることで精いっぱいだった。接待でクライアントと食事をすることも少なくなかったが、それはあくまで仕事としてのこと。
ようやく仕事が軌道に乗ってきた時、理恵は高橋に誘われて一泊旅行に出掛けた。その時以来、理恵は高橋と深い関係を続けている。
高橋に対しては前の広告代理店にいるころから好意を持っていた。しかし、その時、理恵は康祐と結婚していた。
明るくて面倒見のいい理恵の周りには昔から男女の関係なく人が集まった。
理恵が康祐と結婚するといった時には誰もが信じられないというような反応を示した。傍から見れば控え目でおとなしそうな康祐は理恵とは最も合わないタイプのように見られていたのだろう。
しかし、理恵は康祐との結婚生活には満足していた。しようと思えば、今でもベッドを共にすることもできる。
「さて、今日はどうやって責めてやろうか…」
そう言ってベッドに入ってくる高橋を理恵は笑って受け入れた。




