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16.距離

16.距離


 博子は明け方まで康祐の部屋で過ごした。康祐の部屋に居るという違和感もなく話が弾んで、気が付くと外が明るくなっていた。

「送るよ」

 康祐がそういうので、博子は甘えることにした。

 康祐は博子の自転車をマンションの駐車場に停めてあるピックアップトラックの荷台に積み込んだ。

「トラックに乗っているんですか?」

「ああ、職業柄、大きな荷物を持ち歩くことも多いのでね。それに、こういうヤツの方が僕には似合っているし」

 そうかもしれない。博子もそう思った。

 康祐は博子を送り届けると、運転席から博子に手を振った。そして、こんなことをつぶやいた。

「急いで弁当を作らなきゃ」

「えっ?自分でお弁当を作るんですか?」

「そうだよ。安月給のバツイチ男だからね」

 そう言って、博子に手を振ると、康祐は車を出した。


 お弁当か…。

 一人暮らしをしてきた割には、博子は料理が苦手だった。

 朝はほとんど食べないし、ランチも夜も外食で済ませて来た。休日は出来合いの惣菜やレトルト食品で間に合わせていた。博子が作れる唯一料理らしいものと言えば、余った白米とあり合わせの具材を合わせたチャーハンくらいのものだった。

 そんなものは恥ずかしくて康祐には振る舞えない。

 ちょっと勉強しなくちゃ。博子は真剣にそう思った。


 博子が会社に着くと、康祐は既に来ていた。

「おはようございます」

 博子が挨拶をすると、康祐は軽く手だけを上げて返した。きっと、今日仕上げる仕事に集中しているのだろう。

 昨夜は康祐の色んなところを見ることが出来たと思う。博子は康祐との距離がグッと近くなったことに、思わず表情が緩むのだった。






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