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15.偉そうな先生とは違う

15.偉そうな先生とは違う


 博子は駅出口の公園に自転車を止めると、改札口まで駆け下りた。下りたところで気が付いた。この駅には改札口が二つ、ホームの両端にある。博子がいるのは西船橋寄りの改札口だ。

「どっちかしら…」

 康祐にメールをしようかとも考えた。だが、そうすれば康祐をビックリさせることが出来ない。会いたい気持ちを優先すれば、メールでどちらの改札を出るのか確認するべきなのだろうが…。

 しかし、博子は待つことにした。必ずこちらの改札に康祐が現れると信じて。

 電車が着いて流れ出てくる人込みを博子は注意深く見た。一本、また一本。康祐は来ない。そして、ついに最終電車がホームに着いた。最後の乗客たちがエスカレーターから浮かび上がって来る…。


 康祐の部屋は駅から徒歩10分の場所にあるマンションの8階だった。

「それにしても驚いたよ」

 そう言いながら、康祐は冷蔵庫から瓶のバドワイザーを取り出した。栓抜きが見当たらなかったので左手で瓶の口付近を持ち、親指を梃子(てこ)代わりにして100円ライターで瓶の蓋を飛ばした。

「すごい!」

 それを見た博子が手を叩いた。

「建築現場ではいちいち栓抜きなんて持ち歩かないだろう?休憩の時よく瓶のコーラを飲んだんだけど、その時に職人さんがやっているのを見て覚えたんだ」

 設計士とは言っても、康祐はただの偉そうな先生とは違うのだと博子は感じた。こういう人間臭いところに博子は益々魅かれた。

「ところで、どうしたの?」

 康祐はどうして博子が駅で待っていたのか尋ねているのだ。

「家が近いと知らなかったし、けれど、知ってしまったら急に会いたくなったの」

「近い?」

「ええ、私は大島(おおじま)なの」

「それで、自転車で?」

「ええ、南砂の駅までなら15分で行けるわ」

「そうか…。ボクも都営線で通うかな。君と一緒に」

 康祐はそう言って瓶のバドをラッパ飲みした。





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