12.“恋”ってなんだろう…
12.“恋”ってなんだろう…
博子が乗った電車を見送ると、康祐は別路線のホームに向かった。電車に乗ると早速、博子にメールした。
『今日は楽しかった。これからもよろしく。気を付けて帰って下さい。おやすみなさい…』
何とも色気のない文章だろう…。康祐は思ったが、他に気の利いた言葉は浮かばなかった。
すぐに博子から返信があった。
『こちらこそありがとうございました。また誘って下さい!』
理恵と付き合っている時は康祐から誘った記憶がない。それが当り前なのだと思っていた。『また誘って下さい』そういう風に言われて康祐は戸惑っている。どういう風に誘えばいいのだろう…。
博子は社内でいちゃいちゃしたくないと言った。理恵は人目を気にせず、話しかけて来た。博子は理恵とあまりにも違い過ぎる。けれど、康祐は感じていた。理恵と居る時には感じられなかった“ドキドキ”するような感覚を。
博子は康祐のことを、今まで付き合って来た男達とは全く違う人種だと感じていた。康祐の前では自分の気持ちをどんどんぶつけることが出来る。
今までは、男に気を使いながら付き合っていた。男も気を使われることで満足しているように思えた。男にとって可愛い女を演じていた。そんな付き合いには疲れた。本当の自分を受け止めてくれる男を見つけないと…。それが博子の結論だった。
まだ恋をしているという実感はない。ただ、康祐なら自分をすべて受け止めてくれるのではないかと感じたのだった。それは、多分、最初に電話の声を聞いた瞬間に。
結婚しなくても恋は出来るわ…。康祐は理恵の言った言葉を思い出した。“恋”ってなんだろう…。自分は理恵に“恋”をしていたのだろうか…。ずっと一緒に居たいと思っていてけれど、結局、簡単に別れてしまった。そう考えると、今まで誰かに“恋”をしたことなどなかったように思えて来た。“好きだ”と思った女の子はいたけれど。
博子の事はまだ実感がない。彼女を好きなのかどうかさえ分からない。ただ、博子の顔が頭から離れない。
「どうして誘ってくれないんですか?」
彼女の声が耳について離れない。




