カーナビよ! 俺を何処に連れて行く気だ⁉
事前に謝罪しておきます。
北関東の方々、申し訳ありません。
カーナビが壊れた。
どうしようかと思ったが、無いと困るので安いカーナビを購入した。
今日は、そのカーナビを試しつつ、友人に会いに行くところだ。
まあ、最悪、ナビが無くとも辿り着けるので、本当にお試しのつもりだった。
そして、今、試しに使用してみて本当に良かったと思っている。
『五百メートル先、魔界の門入口です』
「何処に連れて行く気だよ⁉」
思わず叫んだ。
叫ばずにはいられなかった。
決して俺は悪くないと思う。
『魔界の門を潜ると、北関東自動車道です』
「インターチェンジじゃねぇか!」
インターチェンジを魔界の門扱いはどうかと思う。
と、言うか、北関東自動車道を魔界扱いするんじゃねぇ!
単なる高速道路だよ!
「このナビ、クセが強すぎるだろ……」
思わず口に出た。
何を思って、こんな案内をするようにしたのか開発者を問い詰めたい気分だ。
だが、今更言っていても仕方がないので、とりあえず車を栃木方面に向かわせる。
この際、最低限、目的地に辿り着けるのなら目を瞑るつもりだ。
『一キロメートル先……』
カーナビが何やら話し始める。
今度は何を言い出すつもりなのか?
真面な案内である事を祈るばかりだった。
『姫騎士がオークと戦闘中です』
「群馬で何があった⁉」
本当に何が起きているのか。
聞いた情報からは何も分からない。
と、言うか、この話が事実なのだとしても、高速道路上で戦闘をするな、としか言えない。
『五百メートル先、姫騎士がクッコロ状態です』
「知らねぇよっ!」
本当に知った事ではない。
それを運転手に聞かせて、このカーナビはどうしてほしいのか。
姫騎士を助けろとでもいうつもりなのだろうか?
『この先、オーク村パーキングエリアがあります』
「あってたまるか!」
『休憩しませんか?』
「オーク村で休憩する訳ないだろ! もう少し、真面な休憩の勧め方をしろよ!」
叫びながら、パーキングエリアを通り過ぎる。
パーキングエリア内まで見えた訳ではないが、少なくともオークの姿は確認できない。
と、言うか、当たり前の話だが、オークなど居る訳が無かった。
「群馬を何だと思ってるんだよ!」
このカーナビ、群馬をファンタジー世界か何かと思っているのではないだろうか?
そんな疑問が頭をよぎる。
とりあえず、気にしたら駄目な事は分かるが、無視するにはツッコミどころしかない。
正直、少し苛々する。
だからこそ、意識して心を落ち着かせ、車を走らせ続けた。
暫くは道なりだ。
カーナビの案内も無いだろう。
そう思った時だった。
『ストロベリーキングダムに入国しました』
「栃木をイチゴ王国だと思ってる⁉」
イチゴは栃木の名産だが、別にイチゴに支配された国ではない。
あと、不意打ちで訳の分からない案内をするのは止めてほしい。
『ストロベリーキングダムから、行方不明の姫騎士を探してほしいと緊急ミッションが……』
「さっきのパーキングエリアに居るんじゃない! 知らねぇけどな!」
カーナビに、緊急ミッションまで発令されてたまるか!
高速を逆走でもさせたいのか!
『目的地の再設定が必要です』
思わず舌打ちした。
訳の分からない案内の次は、動作不良かと思った。
『目的地が、北関東の裏切り者になっています』
「茨城は何も裏切っちゃいねぇよ!」
もう何度目になるか分からないが叫ぶ。
何をもって、茨城を裏切り者呼ばわりしているのか。
いくら何でも、茨城県に失礼すぎる。
『茨城には海があります』
「海があるだけで裏切り者になるなら、日本の都道府県の大半が裏切り者だよ!」
『群馬・栃木は茨城と手を切って、埼玉と同盟を組むべきです』
「海なし県で括ろうとすんな! あと、別に北関東の括りは同盟じゃねぇだろ!」
海有り県に親でも殺されたのか?
海有り県に対する当たりが強すぎる。
『また、山梨・長野と手を組んで、東京に攻め込む事を進言いたします』
「何の進言⁉ カーナビが日本に戦乱を起こそうとするんじゃない!」
『茨城には、再同盟をチラつかせ、ネズミの王国に攻め込ませましょう』
「千葉な! ネズミなランドあるだけで、別にネズミの王国じゃねぇから!」
叫びながら、カーナビの画面をチラ見する。
そして、画面を確認した瞬間、思わず突っ伏しそうになった。
運転中なので、かろうじて堪えたが……
「何でカーナビの画面で戦略図を表示してんだよ⁉」
そう、カーナビの画面で戦略シミュレーションが始まっていた。
完全に案内を放棄している。
『カーナビの野望・全国編です』
「何を思って、そんな機能があるんだよ⁉」
『運転中の退屈しのぎです』
「運転中にゲームをしろってか⁉ 事故るわっ!」
開発者の頭の中を覗いてみたい。
そして、運転免許を持っているのか確認したかった。
車の運転経験が無いから、こんな物を開発したのではないだろうか?
それか、開発者は事故を誘発したいのかもしれない。
開発者は車を憎んでいるのかもしれないとさえ思った。
『カーナビの野望・全国編を終了します』
「そうしてくれ!」
叫ぶと、カーナビの画面が暗転する。
訳の分からないゲームが終了したようだ。
だが、ホッとしたのは束の間。
何故か、荘厳な音楽が流れ始める。
『カーナビ・クエストを起動します』
その言葉と共にカーナビの画面に表示されるゲームタイトル。
それを横目で見て……
「RPGを起動するなぁぁぁぁっ!」
俺の力の限りの絶叫が北関東自動車道に響き渡った。
一応ですが、私は北関東の人間ではありません。




