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プロローグ

 深夜1時。

 圭介は寝付けずにいた。

 隣で圭介の子ども、美空と太陽は寝息をたてている。

 圭介は、二人の布団を掛けなおし、そっと寝室を出た。


 キッチンに立ち、ホットミルクを作った。

 温かい牛乳は苦手だが、今日は飲みたい気分のような気がした。


 湯気が立つマグカップを手に、ソファーに腰を下ろした。

 薄暗い部屋で、熱々のミルクを一口。


 圭介は、やっぱり苦手だと思った。


 明日は、子どもたちの遠足だった。

 早朝5時には起きてお弁当を作り始めないと、

 とても朝の準備が間に合いそうにない。

 明日のおかずは、から揚げとタコサンウインナー。

 これは絶対入れてほしいと、美空と太陽から言われていた。


 圭介は、背もたれに体を預けた。

 視線の先には、お仏壇。遺影にはハツラツとした笑顔を見せる女性、

 圭介の妻・翼の姿があった。


「なんだか寝れないんだ。

 君が前に言っていたホットミルクを作ってみたよ。」

 圭介は、翼に話かけた。

 返答はない。


 圭介はあっち上がり、翼にお線香をあげた。

 お仏壇の前には、生前翼が使っていたスマホが置かれていた。

 圭介は、おもむろにそれを掴み、電源を入れた。

 翼が死んでこのスマホを開くのは初めてだった。


「怒られるかな…。今日だけ?いいよね?」

 翼の返事はない。

「いいってことだな。」

 そう呟きながら、圭介はソファーに座り直した。


 カメラロールには、子どもの写真がたくさん入っていた。

 美空の入園式、顔いっぱいにアイスを付けた太陽。


 何気なくスクロールして、写真を眺めていると、ふいに画面が切り替わった。

 起動中アプリが一つ。


 Instagram。


 SNSをしない翼のスマホの中に なぜ?


 圭介は、躊躇なくアプリを開いた。



 そこには、フォロワー0人。投稿数7つのアカウントがあった。

 アカウント名は「私のすべて」。



 圭介は、背筋を伸ばし座り直した。


 一番古い投稿から開いた。

 最初の投稿は、翼がなくなる半年前から始まっていた。





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