第78話 銀河刑事死す!
朝の通学路をぞろぞろ連れ立って歩く、シズカさんと山田とハルナ。
海沿いの道は、堤防の上に造られていて、少し背伸びしてみれば太平洋が見える。その向こうは水平線まで何もない。
堤防の下には砂浜だったり岩場だったり、特に代わり映えのしない海岸だが、観光客の寄付く浜辺からかなり離れているので、静かで綺麗な海だ。
真冬以外は、子供達の遊び場でもある。
「ハルナちゃんの所は、海があるの?」
山田に聞かれたハルナはチラリとシズカを見る。
未開の異星人に情報を与えて良いのか?シズカが頷いたので構わないのだろう。確かに今更だ。
「ええ、ここみたいに綺麗な海があるわ。気候も、この町みたいに暖かい日が多いの。私はほとんど軌道上で暮らしているから快適だけど、夏はすごく暑いわ。この町もそうなんでしょう?シズカは暑いのに弱いから、気をつけてあげてね」
「自分だって、苦手でしょうに」
海辺高校の正門が見えてきた。
シズカが以前破壊した門扉は修繕されているが、切断された跡が残る。
「え?これ、アンタがやったの?」
「えへへ。ちょっと、楽しくなる剣を持たされてたから、斬っちゃった」
ハルナは昔聞いたことがあった。
銀河文明政府からも独立した、独立時空監察官。その存在すら定かではない彼等はサイボーグもしくはアンドロイドであると。彼等には頑丈な肉体、常人をはるかに超える体力と知力が備わっているのがその証拠とされる。そして最も分かりやすい特徴が、美貌だ。
目の前のシズカにはそれが備わっているではないか。
もしかしたら、彼女は……。
「……違うか。頭悪そうだし」
「何?ハルナちゃん、どうしていきなり貶されてるの、私!」
「シズカって、もしかしてロボットだったり?」
「山田も何言ってるの?」
「だって、頭いいし、頑丈だし、お料理上手だし……き、綺麗だし!」
「山田!結婚しよう!」
ぺち
「馬鹿なこと言ってないで。山田さんも、教室に着くわよ」
「にゃ……」
ハルナにお尻を叩かれ(頭は手が届かなかった)、地味に痛かったシズカは、恨めしそうにハルナを見た。
「山田さん、私達は裏の洞窟に用があるの。また後でね」
「は〜い」
結婚したいのはシズカの本音だったが、山田も冗談としか捉えてくれていない。シズカは悲しい。
とはいえ、今日の目的はプロポーズではない。
スコップだ。
スコップに話がある。
「ハルナちゃん、痛かったよ」
「ごめんごめん」
初対面は警戒し合っていた2人だが、シズカが甘えて見せるくらいには打ち解けたようだった。
黒と白の凸凹ペアは、校舎裏の洞窟群に向けて中庭を歩く。
シズカ達が第24号屈に入るなり、スコップが飛び出してきた!
「シズカさん!大変だ!」
ホント、こういうの似合うよな、スコップ。
シズカもハルナもスコップの職人芸に感心する。
「君に放った怪人が行方不明なんだ!」
話題がおかしい。
「それよ!」
「あいつ、足遅いから……へ?」
「だからそれ!」
「何!?」
シズカがスコップを指差すから、後ろに何かいるのかとスコップは振り返り、自らの尾を追うワンコのようにくるっと回った。
「どうして!なんで!私に怪人をけしかけるのよ、アンタは!」
そうなのだ。
シズカさんは真っ当なクレームをスコップに言いに来たのだ。
毒の実験台をしたり、怪人を放ったり。
ミツルちゃんを悪の幹部呼ばわりする資格は、スコップにはない。
「だ、だって〜あんな連中どうにかできるのって君しか……」
「可愛く言ってもダメ。だいたい、あんなの何処から仕入れてくるのよ」
「送られてくるんだよ。大宇宙の意思「グレートアトラクター」から」
グレートアトラクター。
それは宇宙を構成するのに帰すことのできないシステムだ。
「フッ、言うに事欠いてグレートアトラクターとは。スコップ、言うに事欠いたか!」
「シズカ、訳わかんないわよ」
「単なる超質量体に意思なんかないわ!」
「因みにこの洞窟の大家さんだよ」
「これだから第三理論は!」
結局イチャイチャしだす2人に、置いてけぼりのハルナさんは呆れ顔。
その時、スコップの通信デバイスが「ニャーン」と鳴いた。
「ん?……怪人ねっとに新着ニュースだ。『二郎系ラーメンガメ』、見つかったのかな?」
「オイ待て、何だその怪人は。そんなのを私の家に放ったの!?それに何で着信がニャンコの鳴き声なのよ!」
「そりゃ、不吉だし……」
通信デバイスを操作しながら、ひどい事をつぶやくスコップ。
残念ながら、彼女にとってはカワイイより不吉が先行イメージの猫の鳴き声。
「そこになおれ、駄犬め!弁明は聞かないわ!今日こそは、今までの黒星のツケもまとめて……」
新着ニュースを確認していたスコップの手が止まった。
「……シズカさん、デカ子が」
怒り心頭のシズカが、ミャウドライバーの起動ボタンを押す直前だった。
「エム?あの子なら沖縄旅行中よ!」
「仕事よ」
「デカ子が、死んだ……」




