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第74話 インターミッション

「シズカ〜入るよ〜」

「え?そんな勝手に……」

「あら?山田!ハルナちゃんも!」


 ニッコニコの笑顔でハルナをシズカハウスまで引っ張ってきた山田。

 家主の了承も得ず鍵のかかっていない玄関を開ける。不法侵入?いいえ。

 この町では、ひと声かける山田はとてもお行儀がいいのだ。


「いらっしゃ〜い」


 パタパタと、ミニセーラー服でもクタクタのジャージでもなく、動きやすそうな部屋着のシズカが奥からやって来た。

 

「シズカ〜さっきぶり!」

「山田、上機嫌じゃない?何かいいことあった?」


 たっぷり恋バナができて満足な山田と、もう色々根掘り葉掘り聞かれてゲッソリしているハルナ。


「ちょっとハルナちゃんとお話ししながら来たの。ね?」

「お、おう……」

「まさかハルナちゃんにあんなロマンスが、あったなんて!」

「色ボケめ……」


 ハルナは憎々しげに山田を睨むが、山田はそれもハルナの照れ隠しくらいにしか思っていない。


「仲良くなったのね」

 

 教室では大人ぶって頑張っているハルナであるが、恋バナで盛り上がる年相応(・・・)の姿を、シズカは温かく見守るのだった。


「まあ上がってよ。エムとおやつでも食べてて。ご飯までまだ結構あるから」


 本当にただ友好を深めるためだけに呼んだのだろうか。

 それとも、地球人には聞かせられない話があったのだが、急遽切り替えたか。

 ハルナには前者に思える。


 玄関で靴を脱ぎ(!)、家に上がるとリビングでモシャモシャとエムがバナナを食べているのが見える。

 一度は(かたき)と命を狙い、一方的に殺されかけて、挙句は女の子にされちゃって。

 よくまあ因縁の相手の家でこんなに寛いでいられるものだ。


 山田も慣れた足取りで水屋を漁り、おやつを物色する。好みのものがなかったのか、エムの横に座ると、彼女が抱えていたバナナの束をぶん取った。

 ……山田の肘がエムの顎に綺麗に入ったが、2人とも特に何もない。

 

「スコップは?」


 シズカがお茶のお盆を持って現れた。


「知らないよ?……まあ、あとで来るんじゃない」

「はい、どうぞ。熱いお茶だよ。……それが、最近来ないんだよね」


 スコップが来なくなるって、嵐の合図だ。

 戦いの予感。シズカは自分の中の最強が目覚めつつあるのを感じた。

 しかし、当面の問題は。

 

「おかげで、エムの奴が丸々と……」


 スコップの分食べちゃうエム君。

 遊びに来ると約束していないスコップの分もご飯作っちゃうシズカもいけないのだけど。

 

「銀河くん、本当にシズカと住んでるのね」

「住んでねえし」

「住んでるというか、コイツの家がこの家の地下室になっちゃったのよ」


 女の子になってしばらく、恥ずかしくてお買い物にも出かけられなかったエム。本人もだが、腹ペコになっちゃった銀河刑事の移動基地が、シズカハウスの地下にある小型核融合炉が放つエネルギーに惹かれてやって来たのだった。

 以来、エムは気軽にシズカハウスにやって来るのだ。

 

「お風呂は自分の家に戻るのよ?ご飯と宿題はうちでやっていくパターンが多いかな。最近は空き部屋で寝てるのかも」

「コ◯ス」


 山田の怒りが突沸した。

 

「まあそう言ってやらないであげて。あの子、人の「存在」に飢えているのよ。誰かといる事で安心するんだと思う」

「シズカが許してるなら……でも恋はだめなの!」

「それさっきも言ってた!何なの流行ってるの?」



「あ〜あ。どうして僕がこんな連中と……」


 愚痴をこぼすのは、洞窟のスコップだ。

 仮面をつけたスコップの目の前に並ぶ数体の影。

 なお、仮面はガス対応あらゆる毒ガスを20分間吸収してくれるのだ。どうしてそんな物を付けているかと言うと、自分の顔を影たちに見せないため、そして、なんか、その、……イロイロ臭う連中なのだ。


「指示された通り、アンタたちはシズカさんの所に行けばいいの。一人づつよ?全員で行ったら、本当に殺されるわよ」

「でも姐御!見ず知らずの女性に迷惑をかけるのも……」

「デモもストもない!」


 古い!

 

「アンタたち、失敗が何を意味するか分かってるのかい?」


 そう、彼らにはもう帰るところがない。

 一か八かの命を懸けた作戦なのだ。


「確実に……消してくるんだよ」

「はっ!」


 影たちは力強く返事をすると、闇に溶けるように消えた。



 親睦会も終わり、山田たちがテレビを見てくつろいでいる頃。

 シズカは一人縁側で夜風に当たっていた。


「あ〜あ、スコップ、今日も来なかったな」

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