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第73話 そのかわり私のお店に来て。うんとサービスするから

 あとで話がある。シズカにはそう言われたが、場所も時間も決めていなかったとハルナは割とすぐに気がついた。

 闇宵シズカは颯爽とカッコよく教室を出ていったから、多分それで満足したのだと勝手に思っておくことにした。

 無理やり思い出させたら多分面倒なことになる、そういう感じの子だったから。

 でも、構っても無視しメモどちらも面倒な事になるということを、ハルナは翌日知るのだ。


 ナズェコナカッタンディス!ハルナチャァン!


「うるさい……」


 なんか同じようなことを赴任初日に叫ばれた覚えのあるハルナ。

 シズカの自称ライバルであるスコップさんに拠れば、最近観ている昔のテレビドラマの言いまわしを気に入ったらしいのだ。


「たぶん誰も相手にしてくれないから、ハルナさん相手に使ってるんだと思うよ。彼女なりの距離の取り方さ」


 シズカ(つう)ぶって、スコップさんは語っていたが。

 つまり相手しちゃうと、今みたいにニコニコ顔で職員室にも遊びに来ちゃうのか。文句言っただけなんだけど。


「ここは生徒が遊びに来るところじゃありませんよ?」

「良いのよ、私生徒じゃないし」

「へ?」


 ちょうど通りかかった、教諭。

 シズカの言う事が本当であれば、聞かれては不味いハズだが、彼は困った事だよねとでも言いたげに肩をすくめただけで去っていく。


「ん〜。結構いるみたいなの。偽生徒も」

「そうなの?」

「うん。それでね、今日はちゃんと来てね」

「あ?はぁ……」

「せっかく晩ごはん多めに作ったのに、全部エムに食べられちゃったわ」

「あれ、あなたの家に来いってことだったの?」 



 放課後、ハルナはシズカの家に向かっていた。山田ゆうきが同行者だ。

 あの後、結局3年海星組全ての授業を担当した真白ハルナ先生。運良く今日の科目は理数英だったので何とかなったが、この星独自のことを教える段階が来たら辞退させてもらおう。この子達の大事な学びの時間を無駄にするわけにもいかないのだから。

 そしてこの山田ゆうき。

 学校で得た情報によると、学業の成績は優秀で、対人関係にも問題がない。総合して最優秀だろうとの事だ。

 そして、シズカの元お世話係。

 シズカがこの町に現れてからのおよそ半年、ずっと彼女の面倒をみていたのがこの山田ゆうきだった。

 はい、そこ!失笑しないの!

 

 その最優秀のお世話係が今朝のホームルームが終わってからずっとハルナのことを見てくるのだ。

 闇宵シズカ風に言うと、


 ナズェミテルンディス!ユウキチャァン!


 となるのだろうか。


「ねえ、山田ゆうきさん?どうして先生の後に付いて来るのかな?」

「別に……私の家、こっちだから」


 話しかければ応えは返してくるが、積極的ではない。

 どう見てもハルナに何か言いたげ。

 間が持たなくなったハルナは、いずれ山田ゆうきに聞かなければならないことを繰り上げて聞いてみることにした。


「ねえ、山田ゆうきさん、あなた闇宵シズカさんの事情について、どこまで知っているの?」

「そういう先生は、シズカの何なんですか」


 やっぱり。シズカの事となると返事が早い。

 

「私は、彼女の仕事関係の……」

「時空監察官……」


 今度は最後まで言わせてもらえなかった。

 多分この子は朝からずっと、シズカと私のことを考えていたんだろうな。まともな恋愛なんてする余裕もなかった自分と比べ、ハルナは微笑ましさを感じた。

 早く誤解を解いてやろう。

 

「なるほど。あなたは殆ど全てを知らされているのね。まあホントのこと言うと、私は時空監察官ではないわ。この時代に無理やり連れてこられた、かわいそうな白猫よ」

「連れてこられた?シズカに?」

「違うわ。別の、たぶん秘密なんだろうけど、別の存在よ。私を連れてきたのは」


 ミツルは最初の数日しか会っていない。

 何か目的があって私を連れてきたのか、それも聞けていない。

 あの破廉恥セーラー服の事を話してから、姿を消したのだ。

 ホントに。自分からラスボスになりにいってると言われても仕方ない。

 

「じゃあ」

「闇宵シズカとは、こっち来て初めて会ったわ。生きている元の時代はそう変わらないと思うけど、決して交わらない生活圏の人よ、私たち」

「でも、シズカと同じ目……」

「金眼のケンタウリ人は珍しいけど、いないわけでもないし……」


 地球の猫のように、ケンタウリ人の瞳の色は多種多様だ。

 血縁であれば多少は似てくるが、それも絶対ではない。

 

「シズカがあなたのことをえらく気にしているわ」

「まあ、未開の地で久しぶりの同郷だろつから……」

「でも、恋はだめなの!」


 真剣な山田の声に、ハルナは少し笑ってしまった。

 

「笑ってゴメン。でもそれは心配しないで!第一、私には好きな人がいるもの」


 彼は今どうしているだろうか。

 突然いなくなった自分を、心配して泣いていないだろうか。

 もう大人だと、頬を膨らませる彼は、いくつになってもまだ子供なのだから。

 

「恋バナチャンス!?」


 そう言えば、山田ゆうきのステータスにひとつ分からない所があったのだけど、謎は今解けた。


「確かに、色ボケだ」

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