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第71話 猫じゃないもん

新しい朝が来た!


「闇宵シズカさん、今日はその……破廉恥なミニセーラー服じゃないのね」

「ハルナちゃん先生、生徒を破廉恥呼ばわりはどうかと思います」

「あ……ごめんなさい。でも本当に見るに堪えなかったの」

「ひどい」


 今日のシズカさんは、前から持っていた海校のジャージ姿。

 あのコスプレ服は、洗濯したら縮んじゃったのだ。

 実はシズカさんも結構恥ずかしかったあの制服。あれ以上短くなったらもう我慢の限界。おなかは冷えるし。


「でも、そのヨレヨレ感はあんまりじゃないかしら?」


 パツパツの次はヨレヨレ。

 この子、まともな服は持っていないのか?真白ハルナ先生はシズカのことが少し可哀想になった。

 そのジャージは2年前も愛用していた、シズカさんの部屋着。何なら昨夜も着てるが、朝からちゃんと超高速クリーニングマシーンにかけたので、キレイでフカフカでいいニオイ。

 でもハルナはこの香りを知っていた。

 まだ幼い時、両親の記憶と共に思い出す香り。

 シズカが同じ星の人間だとは知っている。けど意外と近くに住んでいたのかもしれない。


「闇宵シズカ、あなた……」


 駄目だ、詮索はしない。

 だから続きを変えた。


「あなた、貧乏なの?」

「ハルナちゃん先生!それも結構失礼!」

「あ、ごめんなさい、そんな、泣かなくても」


「そうなのか?……家賃払ったほうがいい?」


 シズカがまさか泣くほど貧乏だったなんて……。

 押しかけ欠食JKのエムちゃんは驚いた。

 ご飯だけじゃなくて、寝室まで借り始めたエムなので、もしかしたらシズカの負担になっていたりして、と思ったのだ。

 

「要らないわよ!私、小金持ちなのよ!……でも食費は入れて欲しい。実費でいいから」

「銀河くん!それどう言うこと!?」


 当然山田は反応する。

 ことと次第によってはと、ミャウドライバーを握りしめながら。

 他のクラスメートもザワザワしだす。

 シズカさんに憧れている高校生は結構多くて、たまに意味不明な彼女だが、「みんな大好きシズカさん」なのだ。

 

「銀河お前、シズカさんと一緒に住んでるのか?」

「たまにご飯作ってもらってるだけだよ。かなり美味しい。お布団はお日様の匂いだし」


 ニャーン。

 エムの背後でミャウドライバーの動作音がしたような。


「風呂もか?」

「ちょっと男子ぃ〜」 

「それはないな。シズカさん風呂入らんし」

「エム!言い方!」

 

 ザワ……


「言っとくけど、地球……」

「はい皆、その辺にしておきなさい」


 真白ハルナ先生が花咲く雑談を止めにかかった。

 シズカが地球外生命体である事がバレてはならない。

 地球人がシズカ達ケンタウリ人と遭遇するのは史実ではまだかなり先だ。

 なのに自分からバラしてどうする!真白ハルナは心臓が止まりそうだった。歴史改変なんて、うっかりやらかして良いものじゃないぞ!

 ちなみにシズカさんの名誉のために説明しておくが、ケンタウリ人は服ごとマイクロバブル洗浄が一般的だ。

 入浴も不可能ではないが、あまり好まない。

 猫っぽいからではなく、惑星環境へ科学洗剤が及ぼす影響の論争がはるか昔にあったためなのだ。


「銀河は風呂どうしてるんだよ」と背後ではまだ盛り上がっているが、どうでもいいだろう。

 

「じゃあ、今朝のホームルームは終わります」


 朝から騒がしいことこの上ない。これが若さか、と真白ハルナ先生は思った。


「ところで先生」

「何ですか?」

「先生は何の教科を担当してるんですか?」

「はて?教科?」


 真白ハルナちゃんは、なんだそれって顔をした。

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